音楽ナタリー Power Push - @djtomoko n Ucca-Laugh

“カメの歩み”の中で見つけた本当の音と言葉

Uccaの声と和グルーヴと怨念の奇跡の融合

──「銭問題」の民謡とレゲエがハイブリッドした感じも新しいと思ったんですけど。

tomoko これは最初レゲエっぽい曲を作りたいっていうところから始まって、レゲエに持っていくか、和な方向に持っていくか迷っていたんだけど、民謡歌手に英語のフレーズを歌ってもらったらハマって、じゃあこれは完全に和だなと。

──太鼓もズンドコ鳴ってるし。そもそもメロディや歌い方も民謡っぽいし。歌詞はどんなイメージで書いたんですか?

Ucca-Laugh

Ucca これは夜の海で、キャンプファイヤーじゃないけど、火を炊いて、悔しい気持ちを供養してる歌なんで、そのイメージがこういうメロディを呼んだんですよ。

tomoko 実際にこれは友達にあった話が元ネタなんですよ。同棲カップルがお金の問題で別れることになって。

Ucca で、「えいっ、えいっ」「クソ! クソ!」みたいな。「なんだ、あのダメ男! 私の金、返せ!」「いやもういい、私が出てくわ!」みたいな。

tomoko わら人形持ってそうっていう(笑)。

Ucca そういう歌だから、怨念が入ってる感じというか。そしたらああいう歌い方になっちゃった(笑)。

tomoko でも、合うよね、そういう歌い方。

Ucca 新発見でしたね。自分の声とグルーヴに案外合うっていう。

植物はちゃんと応えてくれるじゃないですか

──ラストは「大好きダーリン」なんですけど、なぜ結婚も飛び越えて、妊娠ソングを作ったんですか?

Ucca そういうふうに解釈してもらったら面白いかと思って。本当は制作期間の3カ月くらいの間、私が植物を愛でてたんで、そこから作った曲なんですけどね。ちゃんと応えてくれるじゃないですか、植物は。寒いのに、毎日、水をやると芽を出してくれて。

tomoko 暗い暗い(笑)。本当はマジメどころか暗いんですっていうね。

Ucca で、妊娠したことはないけど、きっと赤ちゃんができたときはこう思うんだろうって。

──そこは妄想を働かせて(笑)。

Ucca そう、妄想(笑)。それは1stの「Loving Proof」でもやってるから。自分が結婚した体で書くっていう。

──音楽が生まれる喜びや音楽への愛情を、出産になぞらえて歌った曲かなと思ってたんだけど……それは深読みで、これは緑の歌なのか(笑)。

Ucca 新芽の歌です。私、「ユッカ」っていう種類の観葉植物を育ててるんですよ。

tomoko で、曲の中では「メデル」って言ってるんだよね。「my baby メデル」とか。

Ucca 名前を付けたんですよ、メデルちゃんって。“愛でる”と“芽出る”をかけて。

──育ててるユッカに、そういう名前を付けた?

Ucca いや、実際には付けてないです(笑)。付けてないんだけど、自分に子供が生まれたら「メデルちゃん」っていう名前もかわいいなとか妄想しながら書いてて(笑)。最初はその「メデル」というワードをタイトルに推してたんだけど、聴いた人は誰もわからないだろうからってtomokoに却下されちゃった(笑)。

押し付けすぎない余白のある音楽を

──最後に、今年で結成5周年を迎えこうしてアルバムをリリースしましたが、今後ともゆかがどんなふうに伝わっていったらいいなと思っていますか?

左から@djtomoko、Ucca-Laugh。

tomoko 私は、タイトルの通り、自分たちがウサギさんじゃないっていうことがわかったので。でもやめないということを伝えたいし、いずれ勝つじゃないですか、カメは。だから、まだこれは中間地点なんだってことを言いたいです。これがゴールじゃないんだって。

──Uccaさんはどう思っていますか?

Ucca 自分たちはけっこうカッコいいことをやってると思ってるんですよ。MPCを使ってるっていうスタイルもそうだし、音楽もちゃんとやってると思ってて。たぶん10年後聴いてもかっこいいと思える音楽を作ってると思ってるんですね。でも、今回ちょっと押し付けをやめたんです。

──押し付け?

Ucca 押し付けが多かったかなと思ってて。「これだぜ!」みたいな。ともゆかの音楽がカッコいいっていうのは昔から思ってるけど、聴いてくれる人に「どうだ!」って無理やり入っていこうと思わなくなったというか。

──押し付けてるような曲ってありました? 過去曲で「押し付けちゃったな」と思う曲を挙げると?

tomoko あ、「Minna Winner」みたいな曲とか? 自分論を語ってるのが押し付けってこと?

Ucca そういう楽曲単体で押し付けてたっていうよりは、自分たちのアプローチの仕方というか、世間に対するアプローチが押し付けだった気がするんですよ。

──ミニアルバムに「これ本音」というタイトルを付けるところとか?(参照:@djtomoko n Ucca-Laugh×AI対談

tomoko あー、確かに。

──打ち出し方として押し付けがましかったんじゃないか? 「これが女子の本音です」ってしたり顔で言うか?みたいな。

Ucca そう。「でも違うし!」ってなる人もいるだろうし、本音かどうかは聴いた人が判断すればいいだろうっていう話で。今までは押し付けちゃってたから、聴く人の余白が少なかったなと思ってて。でも、今回はそのスペースがけっこうある12曲になってると思うし、そういう考え方でこれからはやっていこうかなって。そういう意味でも自分に素直、ナチュラルなんですよね。

ニューアルバム「Turtle Steps」/ 2015年8月5日発売 / 2000円 / tomoucca.com / DQC-1498
「Turtle Steps」
収録曲
  1. Turtle Steps
  2. キスをして
  3. Ray
  4. To do list
  5. ウケる
  6. 銭問題
  7. 付き合ってだけ言えなくて
  8. ありきたり
  9. Let me do me
  10. ALIVE
  11. かくれんぼ
  12. 大好きダーリン
@djtomoko n Ucca-Laugh
(アットディージェイトモコアンドユッカラフ)
 @djtomoko n Ucca-Laugh

シンセサイザーやサンプラーなどの電子楽器の音色をパッドを叩いて制御するMPC(MIDIパッドコントローラー)を駆使するビートメーカー@djtomokoと、ラップもするシンガーUcca-Laughによる1MPC1MC編成のR&Bグループ。2010年のグループ結成直後から、2人の自宅から即興ビートメイキング番組をUstream配信。累計視聴者数4万人を獲得し、さらには米国ヒップホップシーンを代表するトラックメーカー・DJプレミアと共演を果たすなど、瞬く間に注目を集める存在となる。2011年11月に1stアルバム「1 MPD n a MIC」を、2013年3月には配信限定3部作をリリースし、iTunesStoreチャートで最高1位を獲得。1年後となる2014年3月には3部作の1つとなるミニアルバム「これ本音」の収録曲など、既発曲を改めてパッケージしたアルバム「GIRLS BE LIKE -Compiled Album-」をリリース。そして2015年8月、オリジナルフルアルバム「Turtle Steps」を発表した。