武井壮が穴に落とされた思い出も蘇る選曲

──今作の収録曲はTOYOYA ESQUIRE特設サイトで「俺が選ぶ、俺の応援歌」というテーマをもとに行った投票結果を反映した選曲になっているんですよね。

DJ和　そうですね。

──投票結果は1位がTM NETWORKの「Get Wild」ですね。

武井　この曲は若い頃よく聴いたなあ。どこ行っても流れてたし、アニメ「シティーハンター」で使われてたのも印象に残ってますね。このCDに入ってる曲は全部、カラオケで歌詞を見なくても歌えるような曲ばっかりですよ。

──今作の中で青春時代の思い出の曲ってありますか？

武井　いっぱいありますよ！ ZIGGYの「GLORIA」はよく歌ったなあ。この曲が発売された頃ってカラオケボックスが流行り出した時期なんですよね。今のビルまるごとがカラオケの施設って感じじゃなくて、コンテナの中で歌うっていうさ（笑）。THE YELLOW MONKEYもTHE BOOMもとりあえずかわいい子を口説きたいなってときは歌ってましたね、強めに（笑）。

DJ和　たくさんの方に投票いただいたおかげでよい選曲ができてよかったです。

武井　あとね、西城秀樹さんの「YOUNG MAN（Y.M.C.A）」ってこのCDの中だと古め（1979年）の曲ですけど、この曲には俺がテレビに出始めた頃の思い出があるんですよ。「とんねるずのみなさんのおかげでした」に「安すぎて伝わらない素人芸選手権」って企画があって。それに俺は素人時代に出て、「逆立ちしながら『YOUNG MAN』を歌い切ります」っていうネタを用意してったんですけど、速攻で穴に落とされたっていう（笑）。

DJ和　ははは（笑）。それは忘れられないですね。

──DJ和さんはこのCDをかけるならどんなシチュエーションが似合うと思いますか？

DJ和　一番はドライブですかね。やっぱり車とミックスCDとかコンピレーションアルバムって相性がいいよなって。あと音楽って何かを始めたいときとか、モチベーションを上げたいときのきっかけになることがありますよね。「これを聴けばテンションが上がるし、一歩踏み出せそう」ってリスナーに感じてもらえるような選曲しました。今作はいい意味で“暑苦しい”ものにしたいなって。武井さんはどんなシチュエーションでこのCDを聴いてもらいたいですか？

武井　俺はね、何かに失敗しちゃったりとか、女性にフラれたりしたときに部屋でこの赤いジャケットを手にして、「武井壮か……」ってつぶやきながらこのCDをプレイヤーに入れてもらいたいなと。そしてしみじみ、さめざめと聴き始めて、だんだんジャケット写真の俺みたいな強い表情になってくれたらいいなって。あ、だから元気なときは聴かないでほしいです（笑）。

──いやいやいや！（笑）

武井　俺は落ち込んだ人を盛り上げたいって気持ちなのでね（笑）。

DJ和　確かに元気な人が聴けばよりテンションが高くなると思いますけど、落ち込んでるときには特に効力を発揮するCDになってるはずです。なんといっても「俺の応援歌」ですから。ドライブしてるときでもいいし、家で悶々としてるときにもオススメしたいです。

もしもおじいちゃんおばあちゃんだけのフロアがあったなら

──DJ和さんはどんな思いでJ-POP、アニソンを中心としたDJ活動を続けているんですか？

DJ和　DJという存在を広く一般的なものにしたいと考えてまして、例えばおじいちゃんおばあちゃんも音楽を聴きますよね。で、70代のお客さんだけが遊びに来るフロアがあったとしても、その人たちが好きな曲をセレクトできれば、70代に対してもDJの存在価値が生まれるはずだし。現状のクラブは若い人に向けた曲をかけてますが、DJとしての限界値を突破したくて、もっと幅広い世代の人に楽しんでもらえるようなDJになりたいです。

武井　おお、それはなかなか熱いね。

DJ和　僕は日本語の曲しかかけないって決めてもう10年近くDJをやってます。最近はDJ業界の中でも日本語の曲を流すのが一般化してきている風潮があるんですが、僕の活動も少しくらいは影響を与えられているのかなって思うことがあります。僕なんかより長いキャリアがある素晴らしいDJが日本だけじゃなくて世界中にいることも知っていますけど、今ってまだまだDJ文化自体は狭い範囲のものだと思うんで、その文化をもっと広めたい。日本全国、そして世界中どこでもDJが活躍できる場所、音楽を聴ける場所が増えたらいいと思ってます。そうなれば多くの人をもっと元気にできるだろうし、音楽に勇気付けられる人がもっと増えるのかなって。

“日々成長すること“のススメ

──武井さんにとって音楽とはどういうものですか？

武井　俺は今の時点でも音楽がなかったらたぶんタレント業や陸上でこの位置までたどり着けなかっただろうなって思います。人生のターニングポイントとかつらいときは音楽に救われてきたし、今もトレーニングに行く前、モチベーションを上げるために必ずアイドルソングを聴くっていうのがお決まりになってまして。

──試合の本番当日に、音楽を聴いてテンションを上げることは？

武井　本番の日は聴かなくて、普段のトレーニング前にジャージを着るきっかけを作るために音楽を聴くことが多いです。やっぱりこの年齢になって、毎日トレーニングをするのは正直しんどいんですよ。鍛えていても毎日疲れるし、部屋に帰って落ち着いたらすぐにごはん食べて寝たいなって思うんです。でも動物が体を動かす、というか狩りに行くのは空腹を満たすためだし、体をたくさん使うから生きるための力や強さが身に付く。腹が減ってから運動して、メシ食って休むというね。そのサイクルを大事にしてるんで、そのきっかけとして音楽は俺にとって大事なものなんです。

DJ和　ストイックですね。

武井　成長を日々重ねていけば今日の自分より明日の自分のほうが強くなる。トレーニングだけじゃなくて、1時間勉強するっていうのも日課にしてて。昨日まで知らなかったことを1時間調べると今日の俺は昨日より調べたことについて詳しくなれますよね。これって明らかに“成長”じゃないですか。よく「ストイックですね」ってこういう話をすると言われるんですけど、自分ではそんなふうに思ってないんですよ。

DJ和　なるほど、成長するために努力を重ねるっていうのは音楽をやっている人にも同じことが言えますね。

武井　俺はしかもおしゃべりする機会の多いタレント業もやっているから、知ってることが1つでも多ければ知識が武器になるわけで。疲れていてもそれを上回る成長意欲っていうのが自分を支えていて、その成長意欲を掻き立てるきっかけとして、やっぱり音楽の存在は大きいですね。