ナタリー PowerPush - cutman-booche

歌を伝えるニューアルバム完成! その劇的な変化の秘密に迫る

えっ、これがcutman-booche? 高揚感をあおる四つ打ちダンスロックチューン「サイクル」が話題を呼んでいる彼らが、ニューアルバム「my way」をリリースする。これまでのファンには驚きを、そしてこの曲で初めて彼らを知るリスナーにはなんとも新鮮な開放感を与えてくれるこのアルバム。ブルースやヒップホップなどを手当たり次第に積み込んで旅し続けてきた彼らの特異なセンスが、ここにきて明確に、そして具体的な目標を持って楽曲に反映されていると言え るだろう。

さらに、一貫してセルフプロデュースを続けてきたこれまでの作品と異なり、今回は上田禎をプロデュースに迎えて3曲を制作。またCoccoの「強く儚い者たち」をカバーするなど、さまざまな角度から歌へ取り組む姿勢がより顕著になっていることが伺える。

どっしりと根を生やすようなタフな演奏力、そしてホーボーのような彷徨いとコミュニケーションへの渇望をイマジネーション豊かに描写する詞を武器にしてきたcutmanが、今作では実に軽やかに喜びを歌い、愛を綴り、そして希望を宣言している。さて「クソジジイになるまでcutman-boocheをやっていく」(ウリョン)と言ってはばからない3人が、新作で辿り着いた“my way”とは?

取材・文/駒井憲嗣 インタビュー撮影/中西求

ユニコーンの曲をカバーしてポップさを意識した

──アルバム収録曲から最初に「サイクル」を聴かせていただいて、第一印象で「ほんと突き抜けてるなぁ」と感じました。今までのcutman-boocheのオーガニックなサウンドの持ち味はありつつも 、すごく開けている曲になっているという強いインパクトがあったんです。皆さんは、今回のアルバムの仕上がりはどう感じていますか?

インタビュー写真

ウリョン(G,Vo) アルバムを出すごとになにかしらか成長はしてきたと思うんですけれど、今回はもっと歌を聴かせようというのを3人で話し合っていて。もともと自分らではそのつもりだ ったんですけれど、まだイメージ的には渋い音楽をやっていると捉えられているなというのがあって。そうじゃなくて、突き抜けたほうがちゃんと歌が届くのかなって。あまり音楽を知らない一般の人にも、cutman-boocheってこういうメロディでこういう歌を歌っているから聴いてほしいと、もっと広く伝えたかった。そのなかでプロデューサーの上田禎さんにお願いすることを決めたんです。すごい試行錯誤はしたけど、プロデューサーさんにやってもらったというのはでかかった。「サイクル」は 四つ打ちで、実はこれまでの曲でも四つ打ちの曲はあったんだけれど、みんなには印象が薄かった。そこで今回、四つ打ちと歌を使って曲としてどれだけ新しい感じで出せるかということをもう一度考えて。そのおかげで、突き抜けた感じになってるの かな。

林周作(B) 歌という大きな芯を持ってやったら、すごく加速していったんです。曲がひとつにまとまっていった。

小宮山純平(Dr) 去年3月にフルアルバム「Parmanents」をリリースして、そこからツアーを廻ったりフェスに出たりしたんですけど、自分たちでまだ伝え切れていない部分もあった。でも 去年の暮れにユニコーンの「雪が降る町」を配信限定でリリースして、その曲を「COUNTDOWN JAPAN 08/09」のライブで演奏したときに、すごくたくさんお客さんが集まってくれたんですよ。そのときにロックさとかポップさというのを意識したところはあるかなと思うんです。

──昨年のアルバム以降のいろんな活動が今作の成果になっていると。

ウリョン 確かにインディーズの1枚目からある自分らの深いルーツ、もともと英語でラップをやったりブルージーでソウルフルなことをやってきたのは、それがかっこええと思ったからで、 これからも大切にしていくと思うんです。でも「雪が降る町」を歌った経験は大きくて。「これだけ違うか!」と。だったらいっぺん行けるところまでやってみようって。

「もっとかっこつけんと普通に歌ったら?」って言われた

──デビュー以来そうしたルーツミュージックに根ざしたミクスチャー感をテーマに活動されてきて、改めて歌にフォーカスをしようということになると、発想の転換は必要じゃなかったですか?

ウリョン 葛藤はありました。ディスカッションがちょっとした衝突になったりもしたけど、制作にはそれはつきものだと思ってるんですよ。今回上田さんに言われたのは「煮詰めすぎない」ってこと。あかんかったらちょっと休憩(笑)、いったん俯瞰で見ることを絶対しないといけないからって。僕らそれまでずっと根詰めてやるタイプだったんです。それから曲作りでも、ジャムって作る曲もあるんですけれど、上田さんの家に行って パソコンでリズムを入れてクリックを聴きながら歌を入れて、それを1本ずつ聴いて「ここがこうなってるからギターはこういかないといけない」って1個ずつ組み立てていくこともしたし。やりながら感じて作るんじゃなくて、その曲がどういうふうに 出来ていて、どう聴かせたいかっていう理由を確認したんです。上田さんは「なんでこの曲は気持ちいいのか」を勉強させてくれて、理論的な部分でもいろんなことを与えてくれたし、人生とかこれからバンドを続けていくうえでの人との繋がりあいと か、僕だったらコミやんと周ちゃんとどうつきあっていけばいいのかというのも、ひとりずつに教えてくれたという感じがありますね。

──その作業のなかで、上田さんはcutman-boocheのどんなポイントを引き出そうとしていたんでしょう?

ウリョン 「魅力はもともとあるから、普通にやったら出る」って言われたんですよ。上田さんももともとバンドマンだから、バンドのスタンスも大切にしてくれるし。歌詞とメロディとコード進行が上がってきたときに、「ウリョン、なんでメロディこう歌ってるのに、ここの言葉聴こえへんと思う? もっとかっこつけんと普通に歌ったら?」って言ってくれる感覚というか。

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小宮山 印象的だったのは、僕らが今まで作った曲も今回のデモも、「ピッチとかタイム感とか細かいところをもうちょっと整理して詰めていったら、すごくグッと上がるよ」って、最初に言ってくれて。今回「サイクル」「See you letter... [AL Ver]」「少年時代」の3曲をやってもらったんですけど、「See you letter... [AL Ver]」と「少年時代」は原曲とそんなに変わっていないんです。だから俺らの発想とかアイデアとか好みをうまいこと引き出してくれたという感じが強いですね。

──なるほど。

小宮山 バンドはバンドの持ち味があると思うんです。僕らずっと3人で長いことやってきて、例えばスタジオでジャムって作ろうってなったときに、衝動とか感覚とか空気感で反応してどん どん曲になっていったりするんですけれど、上田さんはひとりの音楽家としていろんな法則やノウハウを知っている。そういう知識や経験を借りて、僕らのバンドのちょっとぐちゃっとしたリズムやグルーヴの響きあいを見てもらったときに、「もうち ょっとここを整理すれば見えやすくなるよ」と言ってくれたんです。

ニューアルバム『my way』 / 2009年6月17日発売 / 2500円 / P-Vine Records / PCD-18571

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cutman-booche(かっとまんぶーちぇ)

2002年に大阪で結成。ブルースをベースに、ロックやヒップホップなどさまざまな要素を取り入れたサウンドは“boosoul”と呼ばれる独特なテイストを放つ。2004年にリリースした1stミニアルバム「cutman-booche」がインディーズシーンで話題を呼び、さまざまなイベントに出演。翌2005年には2ndミニアルバム「clisco line」を発表し、2006~2007年には「FUJI ROCK FESTIVAL」にも2年連続で出演を果たした。2008年には初のフルアルバム「Permanents」をリリースし10本以上の野外フェス参加と22公演に及ぶ全国ツアーを敢行。2009年6月に、2ndフルアルバム「my way」を発表し、さらに幅広い音楽性を追求し続けている。