ナタリー PowerPush - Curly Giraffe

自宅スタジオ解説で探るCurly Giraffeの秘密

コード進行が全部一緒

──高桑さんは普段どうやって作曲してるんですか? メロディを元に曲を完成させていくとか、コードを思い付いてそこからメロディを作っていくとか。

僕の場合、鼻歌でメロディを歌ってるときに、コードも一緒に鳴ってるのね。だからメロディを聴いてコードを思い出すスタイルかな。でも最近面白いことを発見して。去年僕、ギターの弾き語りでツアーを回ったんですよ。アコギを持って歌ってたんだけど、カポ(※カポタスト)を使えばわりと簡単に自分の曲が弾き語れるって気が付いて。それでカポを使ってライブしてたんだけど、ほぼ全曲が同じコード進行だったの(笑)。

インタビュー風景

──えー! そうなんですか!?

もう自分でびっくりしちゃって。Curly Giraffeは1曲マスターできれば、カポを使えばだいたいの曲を弾ける。だから自分の好きなコード進行って決まってるんだなって。自分としてはいろんなバリエーションがあったつもりだったんだけど。だから、弾き語りしながら「またこのコードか!」ってツッコミを入れてた(笑)。

──聴いてる分には全然気付かないですけど……。例えばキーがCだと、どういう進行なんですか?

Cで始まって、そのあとAmになって、そのあとAm/Gになったりとか。僕、クリシェ進行(※和音の中でどれか1つの音が半音ずつ、もしくは1音ずつ上昇したり下降したりする進行)がすごく好きで。だから、カポを使えばたいていの曲は弾き語れるんだよね。

──確かにCurly Giraffeの曲って、奇をてらったような難しいコード進行はないですよね。あとオンコード(※別名「分数コード」。メインコードとベース音が独立したタイプのコード。例えばF on Gの場合は、Gのベース音にFコードが乗っている状態を指す)の曲が多い。

そうそう! 自分の中におしゃれなメジャー7thコードみたいな音が鳴ってなくて、曲がシンプルなの。少ないコードでいい曲を書ける人に憧れてて。プリンスとかだいたい3コードで曲が構成されてるんだよね。自分で曲を作ってると感じるんだけど、展開すればするほどつまらなくなってきちゃう。例えば自分の好きなコード進行があると、それをサビにして最後まで続けてもいいんじゃないかって思っちゃうし。無理に展開して盛り上げるための道筋を立てると、あざとく聴こえちゃうし、しらけちゃう。だから展開は少なくするようにしてるんだけど……。

──難しいですよね。シンプルなコードで、しかも1つの展開だけでずっと聴いていられる曲って。

それにとらわれて、最初っから3コードのみって制約付けると、だいたいつまんない曲になる。だからあまり考えすぎないで、自分の好みを優先するほうが大事。狙って作ってロクなことがあった試しがないんだよね。

締め切りがあるとダメ

──自宅でのレコーディングは毎日やってるんですか?

毎日ではないですね。

──例えば、この時間は音楽の時間って決めて曲を作る人もいますけど、普段高桑さんはどんなスタイルで制作を?

僕、締切が決まってるとダメなんです。義務になっちゃうと楽しめなくなっちゃう。プレッシャーに弱いんですよ。この日にやらなきゃいけないとか、こうしなきゃっていう目標を立てるのも嫌いだし。音楽に関して目標を立てるとアイデアが浮かんでこない。

──この日までに1曲仕上げなきゃとか考えると……。

そういうことを考えだすと、締切のことだけで頭がいっぱいになっちゃって、クリエイティブな発想ができなくなる。追い込まれたほうがいいものを作れる人もいるけど、僕の場合は自分にどれだけプレッシャーをかけないかっていうのがテーマで。僕、学生時代に先生に指されたりすると、その瞬間に頭真っ白になっちゃうタイプだったから(笑)。なのでアルバムを作ろうと思って作るんじゃなくて、曲がある程度溜まったらアルバムを出すっていうスタンスでCurly Giraffeをやってますね。

ニューアルバム「FLEHMEN」 / 2012年3月7日発売 / 3045円(税込) / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-63852

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CD収録曲
  1. VEDEM
  2. Rose between two thorns
  3. go now
  4. Rootless wanderer
  5. Enchanted road
  6. Midnight explorers
  7. Baron Nishi and Uranus
  8. Necessary evil
  9. Just barely
  10. a week
  11. seize and howl
Curly Giraffe(かーりーじらふ)

2005年10月にタワーレコード限定EP「Curly Giraffe e.p.」をリリース。翌2006年4月に1stアルバム「CURLY GIRAFFE」を発表し、ノンプロモーションにもかかわらず外資系CDショップやiTunes Storeなどでロングヒットを記録した。2009年4月に3rdアルバム「New Order」をリリース。同年10月にはBONNIE PINK、新居昭乃、平岡恵子、安藤裕子、Chara、LOVE PSYCHEDELICO、Cocco、木村カエラという8組の女性アーティストがCurly Giraffeの楽曲をカバーする企画アルバム「Thank You For Being A Friend」が発売され、大きな話題を集めた。作曲、演奏、録音、アートワークなどを1人でこなし、ライブでは白根賢一、堀江博久、名越由貴夫、奥野真哉といった実力派アーティストとともにセッションを展開。これまで発表された楽曲はすべて英語詞で歌われており、海外でもリリースされている。2012年3月にSPEEDSTAR RECORDSよりアルバム「FLEHMEN」を発表。

澤部渡(さわべわたる)

1987年12月生まれ、東京都出身。14歳より宅録活動をスタートさせる。これまでに、スカート名義でアルバム「エス・オー・エス」「ストーリー」などを発表。また、サポートメンバーとしてyes, mama ok?でベース、川本真琴のバックでサックス、昆虫キッズでパーカッションおよびサックスを担当するなどマルチプレイヤーとしても活躍している。