バンダイナムコエンターテインメントの新作ゲーム「CODE VEIN II」が1月に発売された。
「CODE VEIN」は、「ゴッドイーター」シリーズの制作チームが手がけるドラマティック探索アクションRPG。2019年にシリーズ第1作目が発表されると、高難度のアクションゲームに、吸血鬼をテーマにしたアニメルックのキャラクターや重厚なシナリオを加えた独自の世界観で人気を博した。
「II」は前作の世界観を引き継ぎながらも、シナリオ面では連続性を持たない新たなストーリーを展開。プレイヤーは吸血鬼ハンターとなり、時間を超える能力を持つ少女・ルゥとともに、過去や現在といったさまざまな時間軸を移動して世界の危機に立ち向かっていく。ゲーム内にはボスとして魅力的な英雄たちが多数登場し、彼らとの熱いバトルが楽しめるのも大きな特徴となっている。
本作の音楽制作は、前作に引き続き作曲家の椎名豪が担当。「CODE VEIN」の独自の世界観を、さまざまなアプローチでドラマティックに彩っている。音楽ナタリーでは「CODE VEIN」の“音楽”の魅力を掘り下げるべく、椎名、本作のプロデューサー・飯塚啓太、ディレクターの吉村広に話を聞いた。
※本特集は、「CODE VEIN II」のストーリーに触れる箇所があります。ゲームを未プレイの方はご注意ください。
取材・文 / 杉山仁撮影 / 須田卓馬
「CODE VEIN II」
バンダイナムコエンターテインメントが手がける、ドラマティック探索アクションRPG「CODE VEIN」の最新作。突如現れた“渇望の月”の力によって、吸血鬼が自我を持たない化け物に変貌するなど、世界は滅びの一途をたどっていた。主人公は吸血鬼ハンターとして世界の崩壊を止めるため、時間を越える力を持つ吸血鬼の少女・ルゥとともに100年前の世界へと旅立つ。
プレイヤー自身が物語の中に
──まずは皆さんが考える「CODE VEIN」シリーズの魅力について教えてください。
飯塚啓太 アクションゲームとしてのやり応えはもちろんですが、それをキャラクターやストーリーと合わせて楽しんでいただけることが、このシリーズの魅力だと思っています。ユーザーの皆さんには「物語の続きが知りたい」「キャラクターたちと一緒に目的を達成したい」と思いながらプレイしていただけたらうれしいです。
吉村広 もともと「CODE VEIN」シリーズは、「キャラクターの魅力をユーザーに届けること」を体験構築の中心に据えています。その“キャラクター”を指す範囲が、作品に登場するNPCキャラクターたちだけではなく、主人公としてゲームに参加するプレイヤー自身でもあると考えています。
──難易度の高いアクションゲームでありながら、キャラクターになりきって物語に没入できるRPG的な魅力も用意していると。
吉村 そうですね。プレイヤー自身が物語の中に入ってキャラクターとして活躍する、という部分は「CODE VEIN」シリーズの一番の特徴と言えるかと思います。
椎名豪 音楽に関して言うと、制作中はとにかくエモいゲームにしたいなと考えていました。また、ワールドワイドなプレイヤー層に向けたゲームではありますが、そのことはあまり意識しすぎないようにもしていて。その結果、日本産のゲームの雰囲気を感じてもらえるのではと思います。
──「CODE VEIN II」を制作するうえで、前作から変化を加えた部分はありますか?
飯塚 皆さんが主人公として世界を救うという要素は引き続きありつつも、「II」ではそこに「時代を超えてさまざまな過去に介入していく」「その結果、現実が変わっていく」という要素を加えました。このアイデアは、プレイヤー自身が主人公として物語に介入できる、「CODE VEIN」シリーズならではの体験の魅力を進化させたいと思って生まれたものでした。
吉村 「CODE VEIN」シリーズは我々開発チーム内でもストーリードリヴン型のゲームと定義されていますが、一方で前作の頃は、あくまで「探索を進めた結果、ストーリーがついてくる」というタイプのゲームでした。そこで「CODE VEIN II」では、前作以上に“物語に介入する体験”をしてもらうためにも、プレイヤーの行動によって歴史が書き変わっていくという要素を加えたんです。
喜怒哀楽の“哀”が強く表現された音楽
──歴史を改変する / しない、もしくはどちらも体験してみる、プレイヤーによってさまざまな楽しみ方ができそうですね。音楽面ではどんなことを意識したんでしょうか?
椎名 ゲーム音楽の場合、基本的にはプレイヤーが操作するキャラクターがその場面で何を考えているかを起点に曲を作ることが多いですが、「CODE VEIN II」ではゲームを通して倒すべきボスである英雄たちの内面にも共感するような要素をちりばめています。そのため、できるだけ俯瞰で主人公以外の要素も考えながら曲を作ることを意識しました。探索マップのフィールドBGMも苦労しましたね。探索や戦闘がすぐ終わったとしても、そうでなかったとしても、フィールドBGMはゲームを盛り上げる必要がある。濃い味の曲だとしつこい印象を与えてしまうので、プログラム担当の方に「このフィールドでは、この音は抜きましょう」など細かく音を抜き差ししていただいて、プレイヤーやフィールドの状況ごとに最適な音が鳴るようにしていただきました。
──「CODE VEIN II」ではボスにあたる英雄と戦う前に、その英雄の過去をさかのぼってそれぞれの夢や苦悩、後悔などに触れられるため、ボスを倒してもただ単純に「勝ってハッピー」というものとは違う、複雑な感情になるところが印象的でした。
椎名 そうですね。音楽に関しても、喜怒哀楽の“哀”の感情がおそらくほかのゲームと比べても強く入っていると思います。バトルシーンで曲にその要素を加えるなど、主人公の視点や敵側のイメージを音楽で表現する、ということにトライしています。
吉村 例えば序盤に戦うことになる英雄・ジョゼの楽曲だと、最初の戦闘でベースとなる曲が流れて、過去改変後の戦闘ではまた変化した楽曲が流れます。そして、それに加えてもう1つ、ボスのモードチェンジ後に切り替わる楽曲も用意されています。ジョゼは強いのでユーザーさんはおそらく何度か負けてしまうと思うんですが、その際にジョゼが悲しむんですよ。そこでプレイヤーは心が削られていく。そういった流れの中で、モードチェンジ後に流れる音楽はピアノの物悲しい楽曲に変化します。このあたりは、プレイヤーと敵の心情が寄り添い合うようなものを目指していまして、ユーザーさんも戦いながら感動してくださるんじゃないかと思います。
──なるほど。
吉村 ただ、このピアノの曲はもともとボス戦用に用意したものではありませんでした。椎名さんから「こういう曲も必要なんじゃない?」と提案していただいた楽曲で、それが結果としてジョゼの戦闘体験に非常に寄り添ったものになりました。
椎名 ジョゼの楽曲の制作は、「能の要素を入れた曲が欲しい」というところからスタートしたんですよね。ただ、最初に吉村くんと相談をしたときに、「能の要素が思いっきり出たものにはしないでほしい」とも言われて。
吉村 そうでしたね(笑)。
椎名 なので能の要素をどの程度入れるかは悩みましたね。食べ物に例えるなら抹茶チョコレートのように、日本人が作ったことを強く押し出しそうかと思っていたけど、吉村くんのひと言を受けて、ボスたちの動きをもとにリズムを作っていくことにしました。ボスとして登場する英雄たちは体の作りが特徴的なことが多いので、その個性から連想して拍子を考えていって。それでボスによっては変拍子になったり、独特なリズムになっているんです。
現代と過去、時代感をどう作るか
──せっかくですので、ジョゼ以外の英雄たちの楽曲の制作過程についても教えてもらえますか?
飯塚 ホリーの楽曲は戦闘が始まった瞬間に哀しさが伝わってくるような楽曲になっていますが、これはプレイヤーとしてホリーの過去を垣間見たうえで、ボスとして対峙した瞬間の哀しさが前面に出ているという、まさに先ほど話に出た“哀”の表現が色濃い楽曲になっています。でも、プレイヤーはそのうえで目の前のホリーを倒さなければいけません。その葛藤が強く感じられる楽曲になっています。
吉村 我々の設計上では、ホリーはジョゼ、ライルに続いて3番目に戦うことを想定している英雄なので、この頃になるとユーザーさんも覚悟ができている状態だという考えのもと、哀しい要素がいきなりドーンとくるようにしています。ホリーのボス戦の楽曲(「皆殺しの英雄」「生命の息吹」)はユーザーさんからの人気も高いですね。
椎名 現代と過去を行き来するゲームの世界観なので、英雄との戦闘曲に関しては、時代感をどう作るかを特に意識しました。各キャラクターの楽曲がてんでバラバラにならないよう意識しつつ、その一方で英雄によってバラエティ豊かになるように設計する必要がある。特に電子音の扱い方は気を付けましたね。古臭くならないように、でもあまり「ウェーイ」とはならないように……。いわゆるSci-fi(サイファイ)感のバランスを工夫しました。あまりその要素を入れすぎてしまうと、せっかくのボスたちの重量感を表現できなかったりもしますから。
吉村 前作と比べても、そのSci-fi感は音楽面での特徴になっていますよね。
──1人の英雄の楽曲の中でも、歴史改変されていない場合とされている場合とでコーラスの種類が大きく変わっているなど、さまざまな工夫がされている印象です。
椎名 「CODE VEIN」の音楽はシリーズを通してゴシック感が母体にあるので、その要素がゼロになることはないですけど、そこにさまざまな要素を取り入れてバランスや配分を変えることで、時代ごとに流れる音楽の印象も変えているんです。
──曲によってはグレゴリオ聖歌のようなコーラスがある一方で、日本の民謡とブルガリアンボイスが混ざったようなコーラスが入ったものもありますよね。
椎名 ワールドミュージックを入れて毛色を変えるといいますか。ただ、どの国の音楽の要素を入れたのか具体的にはわからないようにする、ということは大切にしていきました。
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没入感を大切にするためオルゴールも制作


