ナタリー PowerPush - bird

仲間と紡ぐ極上ポップス 4年半ぶりアルバム「NEW BASIC」

グルーヴィな歌声と独創性に満ちた楽曲で、ジャンルを選ばず音楽ファンを魅了するbird。彼女が実に4年半ぶりの新録アルバム「NEW BASIC」を発表した。今作には、2010年に行った新曲録音ライブ「REC LIVE」から生まれた楽曲に、そこから派生したスタジオレコーディング音源を加えた全14曲を収録。ライブ録音ならではのダイナミックさと、スタジオ録音による緻密なサウンドが違和感なく融合された、birdにとっての“NEW BASIC”となる意欲作だ。

ナタリーではbirdにインタビューを行い、今作の魅力や構成意図を訊いた。さらに近年一層朗らかに、マイペースにアーティスト活動を営む彼女に、そのスタンスや信条を語ってもらった。

取材・文/鳴田麻未

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The N.B.3.の魅力

bird

──4年半ぶりのオリジナルアルバム、素晴らしい仕上がりですね。聞くところによると今作は、ライブのレギュラーメンバーであるGentaさん、田中義人さん、金子雄太さんの3人(The N.B.3.)と作ったことが大きなポイントだそうで。まずはそうなった経緯から教えていただけますか?

この編成でライブをし始めたのが、3年ぐらい前になるのかな。ドラムのGentaさんとギターの田中義人さんはデビューからの付き合いなんですけど、3年前、田中さんが「ハモンドオルガンのすごい人がいるから」と金子雄太さんを紹介してくれてこのメンバーが揃いました。で、最初は普通にオリジナルやカバー曲を演奏してたんですけど、今までの曲ばっかりやってても面白くないから新曲やろうよという話になり、1、2曲作ってみたら思った以上に感触が良かったんで、じゃあこのチームでアルバム作ろう! ということになったんです。

──なるほど。このバンドの魅力ってどんなところなんですか?

ソリッドな楽曲からゆるやかな楽曲まで、幅広い曲が演奏できることですね。これ以下だとアコースティックセットになっちゃうんでバンドとしては最小の編成なんですけど、大所帯に負けないパワー感も出せるし、しっとり聴かせることもできる。あと、この人数ゆえにフットワークがものすごく軽くて、臨機応変に活動できるのも楽しいですね。

──そのバンドで制作した新曲が「思った以上に感触が良かった」というのは、具体的にどういうことでしょうか。

何かとても新しいものを感じたんですよね。このバンドだと、曲のバリエーションがすごく豊かな上にセッション性の高いこともできる。かつ、きちっとしたポップスもできる。ということは、この4人で新しい曲をやっていくとすごく面白いんじゃないかなって気がして。

──それは今までのライブやセッションとは違う面白さ、新しさだったんですか?

私は今まで、フルバンドからアコースティックなデュオまでいろんな編成でライブをしてきたんですけど、このチームはすごく軽やかに音楽をやれるっていう感覚があって。やっぱりギターデュオとかだと、まったりした雰囲気の曲はすごく良いけれど、ものすごい攻めたい曲はある程度限界があるんです。逆にフルバンドだと、アレンジやサイズをある程度決め込んでいって成立するという面がある。でもこのバンドは決め込むこともできるし、フリースタイルで伸ばすこともできる。自由度がすごく高くて、その広がりが非常に新鮮だったんですね。

ライブ録音とスタジオ録音

──今作はライブレコーディング音源7曲とスタジオレコーディング音源7曲で構成されていますが、このアイデアの発端は?

アルバムを作るにあたって、ただ普通に作るのも面白くないなって考えたところ、じゃあライブで出会った人たちなんだしライブで新曲を録音しようってアイデアが出て、去年の6月と7月に「REC LIVE」っていうのを6本やったんですね。これで録れた音も非常に良かったんで、別の曲をスタジオで録るのもいいねっていう話になり、スタジオ録音したらより世界観が広がりそうな曲を録りまして。それを全部1枚にまとめました。

──birdさんの考える、ライブ録音とスタジオ録音の違いってどんな点ですか?

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まずライブ録音の特徴は、ステージの4人の音しかないっていうことと、その場にいるお客さんも含めた空気感をパッケージできること。ライブって観る側と演奏する側の相乗効果で、スタジオではできない世界観が生まれると思うんですね。今回「REC LIVE」に来てくれた皆さんも、初めて聴く曲をどう楽しめばいいのか最初は戸惑ったと思うんですけど、すごくいい感じにノってくださって助かりました(笑)。また、私たちも人前に出て演奏してみないとわからないことがいっぱいあるので、1日目が終わって「やっぱり曲順変えたほうが良くない?」とか「アレンジ変えよう」とか、全6公演の中でどんどん調整していったんですね。ライブだと、そういう自由さとコミュニケーションができる良さがあります。

──観客の声や拍手がそのまま作品に入るということは、お客さんもレコーディングメンバーの一員と言えますね。

まさにそうなんですよ。それで今回アルバムのブックレットに、ライブで配ったアンケートに答えてくださった方の名前を全部クレジットしてるんです。

──それはとても素敵な計らいですね。対して、スタジオ録音はどうですか?

スタジオ録音は、お客さんはいないんですけど音を重ねられるという利点があります。例えばギターをダビングしたりとか、パーカッションを入れてみたりとか。それによってライブでは4人だけの世界をさらに広げられるんです。

──より緻密なサウンドになるんですね。

ええ。そういうものに合う曲はスタジオ録音にしようっていう、その差だったかな。演奏する上での姿勢は一緒です。

7thアルバム「NEW BASIC」リリース記念ライブ

「bird "NEW BASIC" LIVE」

2011年6月28日(火)
Billboard Live TOKYO

bird(ばーど)

1975年生まれ、京都出身の女性シンガーソングライター。大沢伸一に認められ、1999年に大沢主宰の音楽レーベル・RealEyesからシングル「SOULS」でデビューを果たす。同年7月にリリースした1stアルバム「bird」は70万枚の売り上げを記録し、日本ゴールドディスク大賞新人賞を受賞した。2002年にRealEyesから独立。以後は、作曲やプロデュースといったクリエイターとしての才能も発揮し、カバーアルバムやオリジナルアルバムの制作を行う。伸びやかな歌声を武器に、ジャンルの垣根を越えて活躍するその姿勢は、ライブも含め高い評価を得ている。