ナタリー PowerPush - BBQ CHICKENS

痛快な悪ノリバンドの神髄に迫る

バンドをなぜやるか、原始的なところでのお手本

──でも今回のアルバムというか、このバンドは本当にそんな感じですよね。「率先して笑うのは大切」を実践しているというか。

Ken あのね、屈託なく楽しめる場所が欲しいんだよ、やっぱり。それが全部出てるんだよね。面白い言葉をいっぱい言って繰り返し使って笑ってっていうさ。それはライブの進め方にしてもそう。「楽しくなきゃやってる意味なくない?」っていうことをやってる。

Andrew だからむしろお手本ですよ、バンドの(笑)。

BBQ CHICKENS(Photo by Teppei Kishida)

Ken そうね。バンドをなぜやるかっていうところの、原始的なところでのお手本(笑)。

Hongolian そうそう、だからこの前ライブやったときに、あるバンドマンがBBQのライブを観て……なんて言ってたんだっけ?

Andrew 「俺たちはこの10数年、今までいったい何をやってたんだろう?」(笑)。

──わかる気がします。努力して苦労してバンドをやってるところに、BBQがどーんと来ると、けっこうショックだと思う。でも続けていく中でいろんなつらさが出てくるのもまたバンドな気がするんですけど。

Andrew 僕はほかにもバンドをやってるんですけど、BBQはそういうのとはちょっと違うというか、モードが違うんです。BBQのドラムだと僕、普段叩けないフレーズが叩けちゃう。

一同 わははは!(笑)

Andrew やるバンドによってタムの数を変えたりするんですけど、もうそういう次元じゃないんですよね。その先へ行っちゃった感じがする(笑)。

I.S.O 超常現象(笑)。

Kenさんのムチャ振りにどんだけ応えられるか

──Kenさんも、その先へ行きましたよね。日本語詞は書かない人なんだと思ってましたけど、今回は初めて書いてるし、しかも下ネタだったという。

Ken うん、Ken BandでもHi-STANDARDでもやるわけにいかないことをやれてる感じはする。「ちんちんぶらぶら」もね、子供たちが喜ぶんじゃないかと思って。

I.S.O 子供がBBQ聴くっていうその前提がおかしい気もするんですけど(笑)。

Ken いや、ウチの長男坊とか聴くから(笑)。オレが「PIZZA OF DEATH’S THEME」(2002年発売のアルバム「GOOD BYE TO YOUR PUNK ROCK」収録曲)のイントロを口ずさんだら走っていっちゃったっていう(笑)。「♪ダダッダーダダ」って。やっぱり子供の触角に触れる何かがあるんじゃないのかな。

──オッサンの触角にも触れてますけどね。

一同 あはははは!(笑)

──今この部屋にはオッサンしかいないですけど、ちんちんって言葉に反応して全員キャッキャ言っちゃってますし。もう大人になったらそういうのないと思ってたんです。

Ken BBQのお客さんもそういう気(け)はあると思うよ。たぶん、あんな暴れ方とか、あんな野次り方、普通のバンドのライブだったらお前してないだろってことをやってるし。

Hongolian 僕、ものすごい野次られるんですよ。絶対お前普段そんなこと言わないだろって人に野次られてます。

──バンドとファンの距離が近すぎ、というかないんですよ距離が。ロックバンドを評するときに使う「ごく普通にそのへんを歩いてそうなアンちゃんが」って表現はホメ言葉だったりするんですけど。

Ken あるね。

──BBQ CHICKENSに関してはただの事実に過ぎないという。

BBQ CHICKENS(Photo by Teppei Kishida)

一同 あはははは!(笑)

──普通のアンちゃんがステージ上からもフロアからもイジり倒されてる、その面白さはありますよね。

I.S.O 僕らも楽しんでるんですよ、ムチャ振りにどんだけ応えられるかっていう。

──Kenさんのムチャ振り(笑)。

I.S.O 1年半の間、ヤン毛(えりあしの長い毛の部分)だけ伸ばさせられたこともありました。

Andrew あれ、すごい広まったね(笑)。

──みんなしてえりあし長くなっちゃってましたね。あれ、なんでそうしたんですか?

Ken そんなの覚えてないよ(笑)。「ヤン毛ヤベエ!」って思ったくらいだよ。

I.S.O なんか「オマエ切っちゃダメな」って言われて。まあやっぱり先輩の言うことは絶対ですから、あははは(笑)。そこもまた楽しんでやってますよね。

──その場の悪ノリを直で楽しむ。Andrewさんもやっぱりそうなんですか?

Ken Andrewにそれを聞いてもわかんないよ。そもそもAndrew自身が悪ノリでできてるから(笑)。

Andrew ヤン毛のときも、誰にも言われるまでもなく、勝手に伸ばしましたからね。

──自主的に(笑)。思いついたら即実行っていう悪ガキノリと、ワンアイデア浮かんだら即座に曲へ、っていうショートチューンバンドのノリが結びついてるんでしょうね。

Ken ショートチューン縛りはね、スリルがあるんだよ。バスケとかアメフトとかでもあるじゃない? 何秒ルールとか、ああいうのと一緒で。もっと言っちゃえばお星様みたいなもんですよ(笑)。「BBQ CHICKENS、それは一瞬で永遠のきらめき」。

一同 あははははは(笑)。

──パッと光ってパッと消える。でもアルバムは今回で5作目で、新作は18曲入り。けっこう多いかな、この流れ星、みたいな感じですよね。

Ken そうそう(笑)。ちょいちょい通りすがる。

「オマエ何ビビってんだよ?」って一言で全部動いちゃう

──最後に皆さんに聞きたいんですけど、BBQ CHICKENSをやるの、疲れたりしないんですか?

Hongolian いや(笑)。やっぱり楽しいです。

──やれないなもう、って思ったことはないんですか? だって仕事も絶対に忙しいだろうし、人間いろいろな事情も抱えているわけじゃないですか。

BBQ CHICKENS(Photo by Teppei Kishida)

Hongolian そういうところで弱音吐けないっすよ。「何ビビってんの?」って言われて終わりなんで(笑)。

Ken 昔っからそう。オマエに関してはそう、「オマエ何ビビってんだよ?」って一言で全部動いちゃうから。

──操縦、簡単ですね。

Ken かれこれ20年くらいそうしてる(笑)。真夜中に呼び出しても来なかったりしたら「オマエ何ビビってんだよ?」って言ったら来ちゃう(笑)。

I.S.O だからもう、辞める辞めないの話をすること自体が本当に野暮なバンドなんですよ。

──なるほど。じゃあインタビューは以上です。

Ken えっ?(笑) これで大丈夫なんですか?

──わかんないです。僕もこんなインタビュー初めてですし。

一同 あはははは!(笑)

Ken でもナタリーさんにはこれで、ハイスタとKen Band、BBQ CHICKENSと3つインタビューが揃うことになるんですよね。俺、インタビューごとに完全に別人になっちゃってない?

──でもそれが最高じゃないですか。

Ken そっか。まあそれならいいか(笑)。

ニューアルバム「Broken Bubbles」 / 2013年10月9日発売 / 1947円 / PIZZA OF DEATH RECORDS / PZCA-62
ニューアルバム「Broken Bubbles」
収録曲
  1. Red
  2. Blue Blood In Your Heart
  3. Nippon
  4. Quicksand
  5. Broken Bubbles
  6. Pride VS Pride
  7. Thrash Till You Crash
  8. Maya
  9. Japanese Sunday Evening
  10. Right Here, Right Now
  11. Shibuya PM5, Tonight
  12. Dough Song
  13. Ace Of Spades
  14. Sick Boy
  15. Rise Above
  16. Shakedown
  17. Ken's Theme
  18. Good Night
BBQ CHICKENS(ばーべきゅーちきんず)

2000年、Ken(G)を中心に東京・杉並区高井戸で結成されたハードコアパンクバンド。神出鬼没なライブ活動を展開しつつ、2001年8月に1stアルバム「INDIE ROCK STRIKES BACK」をリリース。1曲数秒から1分半というショートチューンのみで構成されたこのアルバムは、ハードコアパンクバンドとしては異例の8万5000枚ものセールスを記録した。その後も2002年10月に2ndアルバム「GOOD BYE TO YOUR PUNK ROCK」、2003年10月に3rdアルバム「FINE SONGS,PLAYING SUCKS」を発表。以後8年間、コンピレーションアルバムへの楽曲提供や自主企画ライブの開催などはあったものの、表立った活動を行わなかった。しかし2011年10月、Ken、Hongolian(Vo)、I.S.O(B)に新ドラマーAndrew(Dr)という編成で4thアルバム「Crossover And Over」を発売。これまで以上にメタル色を強めたサウンドで、多くのファンから歓迎された。そして2013年10月、通算5枚目のアルバム「Broken Bubbles」をリリースした。