Baby Kiy|1日に寄り添い、誰かを思い浮かべる音楽を

“誰か”を思い浮かべる「All About You」

──そしてこのたび初のフルアルバム「All About You」が完成しました。今までの日々の積み重ねがこのアルバムに表現されていると思うのですが、テーマやコンセプトはありますか?

今作の収録曲はすべて“誰か(You)”に向けて作られたものなんです。リスナーの皆さんに、それぞれ恋人や友人、家族など特定の“誰か”を思い浮かべて聴いていただけるような作品にしたくて、このタイトルにしました。それから私と同世代の人に共感していただける作品にしようと思いましたね。

──アルバムは2019年に配信リリースした楽曲、書き下ろしの新曲に加え、インディーズ時代の楽曲のアコースティックセッション版が収録されています。

朝から夜まで、1日の流れを感じていただけるような構成にしようと心がけたんです。そのためにインタールードを入れてみたり。毎日を心地よく過ごせる、BGMのような役割を果たせたらうれしいです。

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──いろんな時間を過ごせる作品になっていますよね。

これまでの作品は夏にリリースされることがほとんどだったし、私自身1年中ビーチに行って、ずっと小麦色の肌でいるような生活を続けていたから、自然と開放感のあるキラキラした楽曲が多かったんです。でも今回は秋のリリースになったので、今までとは異なるイメージのものを作ろうとして。そこで“夏の終わりのせつない季節”というテーマで「Hummingbird ~キセツハズレノハナビ~」という新曲を完成させました。ずっとバラード曲を作ってみたかったんですけど、今回のような機会じゃないとなかなか発表できないかなと思ったし。

──この曲の歌詞は昔の恋を思い返す内容となっています。

成長した自分が遠い夏の日の思い出や恋を思い出す、みたいな感じですね。体験してすぐのタイミングだと、ただ切なさだけが残ってしまうけど、時間がある程度経過すると温かい気持ちも生まれてくる。そういう部分を表現したかったんです。あまり切なくなり過ぎないように心がけて制作しました。

──確かに、ストレートに心境をつづっているわけではないですよね。

「君に会いたい」みたいなストレートな表現を使わず、どうやってこの思いを伝えるかこだわりました。

──この曲を作り上げるのは苦労しましたか?

それがけっこう早く完成したんですよ。いきなりポンとフレーズが思い浮かびました(笑)。共作してくださった作詞家さんが、聴いてくれる人により伝わりやすいよう、歌詞の配列を調節してくれて、より心に届く楽曲になったと思います。

──これは同世代だけでなく、いろんな人に伝わる部分があると思いますよ。

現在は幸せな暮らしをしている方も、この曲をきっかけにふと昔の思い出をよみがえらせてくれたらうれしいですね。

──「Hummingbird ~キセツハズレノハナビ~」はミュージックビデオも印象的です。

素敵な仕上がりになったと思います! 過去のMVすべてを手がけてくれたスタッフさんと制作したんですけど、私が提案したアイデアをイメージ以上に表現してくれました。撮影は大変で、当日はとても肌寒くて震えていました(笑)。しかも途中からびしょ濡れで撮影をしないといけなかったので、失敗は許されなくて。でも最終的には楽しい撮影になりました。

これが日本語だと気まずくなるじゃないですか

──「GIRL FRIEND」も書き下ろしの新曲ですね。

これは、大好きな人の彼女になりたいという思いをストレートに伝えてみたくて作った曲です。日本語の歌詞だとどうしても周りくどい言い方になってしまうので、英語で普段照れくさいと感じてしまうことを書きつづりました。特に女性に聴いていただきたい。男性はちょっと圧倒されちゃいそうですね(笑)。

──ライブでも盛り上がりそうなナンバーですよね。

実は何度か披露しているんですけど、音源化されていないこともあってか、皆さんまだじっくり耳を傾けている感じでした。アルバムがリリースされたあと、盛り上がる楽曲になるのかなって思っています。

──ところでBaby Kiyさんの楽曲は英語と日本語をミックスさせた歌詞が多いですが、その部分のバランスは意識していますか?

歌詞を考えているときは特に気にしていないです。聴き心地のよさを大切にして、フレーズに合う言葉を選んでいる感じですかね。

──英語の発音もキレイですよね。

ありがとうございます! 小さい頃から海外へ連れて行ってもらったおかげかなと思います。

──ボーカルに関しては、英語と日本語を柔軟に取り入れながらも、ナチュラルな印象を与える声が魅力的ですよね。

レコーディングのとき、声色は気を付けています。特にシンプルなアコースティック調の曲ほど感情的になってしまうので、できるだけブレスを多めに入れて歌うとか。

──「この感情を表すときは英語」とか、使い分けることはありますか?

思いを強めに伝えたいときは英語にすることが多いかな。例えば「君は私のことをほしくなるよ」って、日本語だと言いづらいというか……ストレートすぎて気まずくなるじゃないですか(笑)。そこは英語にすることで和らぐかなって思います。

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ずっと歌い続けたい、人生で初めて作った曲

──アルバムの後半ではインディーズ時代に発表した楽曲をアコースティックでセルフカバーしていますが、いかがでしたか?

これらの楽曲はライブで何度も披露しているので、ライブのような生の自由な雰囲気で歌いました。バンドメンバーと一緒に一発録りのセッションで完成させたんですけど、その瞬間のテンションを素直に歌声に表しました。

──最後に収められている「Rainbow」は、ギター1本のシンプルなアレンジから徐々にバンドサウンドへと変化していく、その展開がドラマチックでした。

私、この楽曲大好きなんです! 「Rainbow」は人生で初めて作った曲なんです。今の時代に合うキャッチーな要素はないかもしれないですけど、私にとってはいつまでも歌い続けたいと思えるもので。年齢や経験を重ねていくことによって、表情が変わっていきそうな気がするんです。このアルバムでも、今だからこそ表現できる「Rainbow」が歌えたと思います。60歳を過ぎても歌い続けたいな。

──アルバム全体からは、Baby Kiyさんのナチュラルでピースな人柄が伝わってきました。

やった! うれしい(笑)。バンドメンバーからも私だからこそ歌えるもの、表現できるものが込められていると言われたんです。このアルバムではそういう部分を感じてもらいたいですね。今後はどんなタイプの楽曲でも、私が歌うことによって独自のカラーを生み出していきたいです。

──本作ではハッピーでダンサブルな楽曲から、胸を締めつけるようなバラード、さらにはシンプルなアコースティック曲まで、さまざまなタイプのサウンドが取り入れられています。制作を通して、今後やってみたい音楽性やビジョンは見えてきましたか?

「All About You」は次のステップに進むため、あえていろんなタイプの楽曲に挑戦したんです。打ち込みも積極的に取り入れつつ、私のベースであるアコースティックタッチの楽曲もあったり。今後どんなサウンドで制作しても、聴いていただいた皆さんが素直に受け入れてくれたり、楽しんでもらえるようになれたらいいなと思います。私自身、次はどんな楽曲ができあがるかわからないけど、今後もいろんなことに挑戦できそうです。ライブも来年以降は海外含め、いろんな場所でやってみたいです!

──そのためにもぜひ、このアルバムを多くの方に届けたいですよね。アートワークも素敵な雰囲気ですし。

アートワークは本当にこだわり過ぎて、朝までデザイナーさんとやりとりする日々が続きました。アートワークとかは信頼している、デビュー時からお世話になっている方にお願いして、隅々まで私のこだわりを反映していただきました。自信を持っていいものができたと思います!

──ビジュアルに関しても徹底的にこだわるんですね。

そこも私の魅力だと思っています。私は歌唱力が売りでも、モデルさんのようなルックスもないけど(笑)、サウンドやビジュアル、デザインなど、すべてひっくるめてこだわっているので、そういう自分らしさをこれからも音楽を通して発信していきたいです。

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