音楽ナタリー PowerPush - 剛力彩芽
いしわたり淳治による“大事な人三部作”で描かれた本心
イタコとしての苦労
──いしわたりさんが歌詞を書くときも、剛力さんの歌声をイメージしてるんですか?
いしわたり はい、もちろん。当たり前にやっていることなので、意識はしてないんですけど。僕が10何歳も下の女の子が歌う歌詞を書くなんて、冷静に考えると気持ち悪いんですよ、当然。
剛力 ははははは!(笑)
いしわたり だけれどそこは乗り越えて、「本人になった」くらいのところまで持っていくんです、頭の中で。歌詞はだいたい3時間くらいで書いてしまうんですけど、その間はイタコ状態ですね。
剛力 すごい!
いしわたり ただ、書き始めるまでにすごく時間がかかるんですよ。そこはもう役作りですよね。その人の情報をガンガン入れて、憑依させなくちゃいけないので。どんな人でも1曲目が大変なんです。剛力さんの場合は「友達より大事な人」の歌詞を書くときが一番時間がかかりました。2回目からは「あの感じを呼び出せばいい」と思えるので少しラクなんですよね。そこにさらに新しい要素を足しながら歌詞を書くっていう。
──剛力さんになりきる精度もさらに上がってきた?
いしわたり そうだとうれしいですけどね。同時に気持ちが悪いですけど(笑)。
剛力 (笑)。アルバムに入っている「ワガママは大事な人」もいしわたりさんが歌詞を書いてくださったんですけど、まさに私の言葉遣いだなって。すんなり入っていけましたね。
“大事な人三部作”の最終章「我がママ」
──「ワガママは大事な人」はお母さんに対する気持ちがテーマになってるんですね。
いしわたり レコード会社の方から「お母さんを題材にした曲にしたい」というお話があったんです。そのときにこちらから「剛力さんと家族の距離感がわかるエピソードをできるだけたくさんください」というお願いをして。
剛力 スタッフの方が質問を考えてくれたんですよね。答えはお母さんと一緒に考えたんですけどね(笑)。私のつたない文章をすごくうまく歌詞に反映してもらったんですけど、途中からどんどん歌いたいことが増えてしまって。
いしわたり 餃子のエピソードも入れたかったんだけどね。
剛力 うち、餃子を家族みんなそろったときにだけ作るんです。
いしわたり その話は入れられなかったんだけど、「美味しい店」という歌詞は自分の中で“餃子のおいしい店”というイメージなんです。
──「美味しい店見つけたら 今度連れて来たくて」ですね。
剛力 それも必ず思うんです、私。お仕事でおいしいゴハン屋さんに行ったときは「今度、お母さんを連れて来よう」って。いつも母親に対して思っていることをそのまま書いてもらってますね、ホントに。
──「ワガママは大事な人」というタイトルに関しては?
いしわたり タイトルはコレでいきたいって、最初から決めてました。「ワガママ」と「我がママ」でダブルミーニングになるので。問題は「ワガママ」の部分をどうやって歌詞の中に溶け込ませるか、ということだったんです。剛力さんからもらったアンケートの答えを凝視しながら、着地点を探した感じですね。
剛力 「ワガママ」って、大事な人だからこそ言えることでもあるんだなって。それだけでも「すごくいいな」と思ってたんですけど、タイトルの意味に気付いたときは鳥肌が立ちましたね。
セルフタイトルアルバムの理由
──「ワガママは大事な人」の歌詞は剛力さん自身の思いが軸になっていますが、それを多くの人が共感できる歌にするための工夫もしているんですか?
いしわたり 歌詞って、最大公約数にしすぎると個性がなくなっていくんですよね。だから「誰にでも当てはまるように」という書き方はなるべくしないようにしています。たぶん、今ヒットしている曲って、もっとコアなことを歌っているからこそリスナーに反応されてると思うんですよ。やっぱり、自分にとって特別な歌が欲しいじゃないですか。「これは私の歌だ」と思えるテイストが入っていないと、ほかと区別してもらえないんじゃないかなと。
──そういう意味では、アーティスト自身のプライベートな感情を伝えることも重要ですよね。
いしわたり それもあると思うし、あとはキャラクターですよね。その人が言うからこそ、真実味が出るっていう。剛力さんのキャラクターもすごくいいと思うんですよ。こんなに真正面を向いてる人はいないから、歌の中でも、それをそのまま出すのが一番いいんじゃないかなって。
剛力 ありがとうございます。
いしわたり 前向きな言葉をまっすぐ届けるのが一番ですよね。剛力さんが下を向いているのは似合わないし、そうする必要もないというか。日本のアーティストはどちらかと言うと、暗いことを歌うのが得意なんですよ。幸せ、喜びを歌で表現するのが苦手というか。それをちゃんとできる剛力さんは、とっても貴重だと思います。
剛力 フフフフフフ(笑)。
──剛力さんとしても、アーティスト活動を通して、自分の気持ちをまっすぐ表現できるのはすごくいいことですよね。
剛力 そうですね。私自身が思っていること、私のそのままの言葉を伝えられるのは、アーティスト活動のときだけなので。飾るのが好きじゃないんですよね。こういう取材の場でも「本当に世間のイメージそのままなんですね」って言われることが多いし。
──アルバムのタイトルが「剛力彩芽」なのも納得ですね。
いしわたり そうですね。素晴らしいと思います。
剛力 最初は英語のカッコいいタイトルにしようかと思ったんですけど、途中で「やっぱり日本語、漢字がいいな」と思って。「剛力彩芽」って四字熟語っぽいじゃないですか。
いしわたり そうかも(笑)。
剛力 「剛」は自分の中で「GO」のイメージで、「力」強いところもあって。アルバムには「彩」りもあるし、成長していく「芽」も感じられて。まさに私のいろんな要素が含まれたアルバムだと思うんですよね。自分の名前も大好きだし。
──まさに「名は体を表す」ですね。では、いしわたりさんが今後「アーティスト・剛力彩芽」に望むことは?
いしわたり バリバリ踊ったほうがいいんじゃないですか?
剛力 踊りたいです! こうやって好きなことを仕事にさせてもらえるのは本当に幸せなので、ダンスも歌ももっともっと練習しないと。アルバムのレコーディングでもいろんな曲を歌わせてもらったんですけど、もっと幅を広げていきたいなって。
いしわたり うん。
剛力 せっかくこういう活動をさせてもらえる環境にいる以上は欲張っていきたいです。これからも精一杯がんばります!
- 1stアルバム「剛力彩芽」 / 2015年4月8日発売 / Sony Music Records
- 初回限定盤A [CD+DVD] / 3700円 / SRCL-8771~2
- 初回限定盤B [CD] / 3200円 / SRCL-8773
- 通常盤 [CD] / 3200円 / SRCL-8774
CD収録曲(共通仕様)
- 友達より大事な人
- くやしいけど大事な人
- ワガママは大事な人
- ナナイロ7days
- Tic-Tac
- ひとつだけ
- GO! GIRLS!! GO!
- キミイロ
- アサガオ
- Rainbow
- あなたの100の嫌いなところ
初回限定盤A DVD収録内容
- “友達より大事な人”Music Video
- “あなたの100の嫌いなところ”Music Video
- “くやしいけど大事な人”Music Video
- “ワガママは大事な人”Music Video
- “剛力彩芽”Off Shot Movie
剛力彩芽(ゴウリキアヤメ)
1992年8月27日生まれ、神奈川県出身の女優、歌手。多数のドラマ、映画、CMで活躍し、現在はフジテレビ系「奇跡体験!アンビリバボー」テレビ朝日系「GO!オスカル!X21」にMCとしてレギュラー出演中。2015年4月スタートのテレビ朝日系金曜ナイトドラマ「天使と悪魔~未解決匿名交渉課~」では主役を務める。アーティストとしては2013年7月にシングル「友達より大事な人」でデビュー。さらに2014年2月に主演ドラマ「私の嫌いな探偵」の主題歌「あなたの100の嫌いなところ」、10月に「くやしいけど大事な人」をシングルリリースし、2015年4月には1stアルバム「剛力彩芽」を発売する。
いしわたり淳治(イシワタリジュンジ)
1977年8月21日生まれ、青森県出身の作詞家 / プロデューサー。1997年にロックバンドSUPERCARのメンバーとしてデビューし、2005年のバンド解散までに5枚のオリジナルフルアルバムを発表。バンドの全楽曲で作詞とギターを担当した。SUPERCAR解散後以降に作詞家、音楽プロデューサーとしての活動を本格化させる。Superfly「愛をこめて花束を」、少女時代「PAPARAZZI」、SMAP「Mistake!」、剛力彩芽の“大事な人三部作”こと「友達より大事な人」「くやしいけど大事な人」「ワガママは大事な人」など多数の楽曲で作詞を手がける。プロデューサーとしてはチャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、ねごとの楽曲のほか、2014年公開の映画「日々ロック」の音楽を監修。著書に小説「うれしい悲鳴をあげてくれ」がある。