有安杏果インタビュー|本格的ジャズへの挑戦──充実の2023年を経て開く新たな扉 (2/2)

本格的ジャズへの挑戦、まずは英語学習

──「有安杏果 Jazz Note 2024」ではその名の通りジャズに挑戦するとのことですが、有安さんの作品には「愛されたくて」や「遠吠え」(ともに2017年10月発売の1stフルアルバム「ココロノオト」収録)のようにジャズのテイストを感じる楽曲もありますし、ライブでジャズっぽくアレンジして歌う場面もありましたよね。

はい。「愛されたくて」は今年の弾き語りライブでもやってるんですよ。左手がウォーキングベースで大変ですけど(笑)。もともとはそういう「ジャズテイスト」「ジャズっぽい曲」みたいな……前にライブでカバーしたEGO-WRAPPIN'さんの「くちばしにチェリー」みたいな曲が聴くのも歌うのも好きだったので、ソロでもそういう曲をいくつか作ってもらったんです。ジャズテイストの曲はライブで歌うとお客さんの反応もいいし、ライブを重ねていくにつれて“育っていく”感じがあるんですね。それで手応えを感じて「もう少しそこを追求してみたいな」と思ったのが「Jazz Note」のきっかけです。

──なるほど。では、有安さんが現時点で思うジャズ観はいったいどんなものですか? 有安杏果が考えるジャズとは。

なんだろう、ジャズとは……めちゃめちゃ難しい! 自分がライブでやってきたことで言うと、やっぱりアドリブ性。ソロ回しだったりとか、その日だけにしか生まれない何かがあるのは、ジャズならではだなと思います。J-POP、ポップスが作り込まれたストーリー性のあるものだとすると、ジャズはもっと自由で、即興の部分が大きくて、そもそも楽譜がない。そのとき感じたこと、情熱がぶつかり合うことが重要なのかなって。

有安杏果

──そこにもっと踏み込んでいきたいと考えたわけですね。あと、ジャズと謳うからにはスタンダードナンバーなども歌うのかな?と思っていたのですが……最近は本格的に英語を学んでいるんだとか。それはジャズのために?

そうです、そうです。アメリカ発祥の音楽だから、まずは英語だなって。英語で歌うとなると発音はすごく大事で、1つの大きな壁だと思うんですよ。中学の教科書レベルの英単語を覚え直すところから始めて、それだけじゃだめだと思ってオンライン英会話を習い始めたのがコロナ禍に入った頃。オンライン英会話を始めてみたら、文法のこととか全然わかってないなと。そこから真剣に英語学習も始めました。

──すごいですね。まずは英語から。

歌詞の意味とか曲の世界観も理解したうえで歌いたくて。ネイティブの人が聴いても楽しめる音楽が作りたいんです。私はBoAさんが子供の頃からの憧れなんですけど、BoAさんは韓国から日本に来てデビューして、日本語でも歌うし話すし、オリジナル曲のイングリッシュバージョンも発表しているんですよ。英語を勉強して初めて、その努力の跡がよく見えるというか。改めて尊敬の気持ちが強くなりましたし、私もちゃんと勉強しなくちゃ!と思いました。

──ジャズを歌ううえでは、どういう人を参考にしているのでしょう。好きなジャズシンガーは?

エラ・フィッツジェラルドさんとか、最近の方だとニッキ・ヤノフスキーさんが私は大好きで。

──スタンダードだとこのあたりを歌いたい、という選曲も考えている?

もちろんあります。有名どころとマイナーなもののバランスをどうするか、大林さんと一緒に相談しながら選曲中です。

──誰もが耳にしたことがある曲をどう表現するかもジャズライブの醍醐味だと思いますし、マニアックな選曲の妙も楽しみの1つかもしれませんね。

そうですね。今の段階ではまだ詳しくは言えませんけど、もしかしたら皆さんが思ってる以上に「しっかりとジャズをやる」ライブになると思います。

有安杏果
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ソロでやりたかった3つの柱がそろった

──現段階(取材は11月下旬に実施)でのライブの仕上がりは何%ぐらいですか?

えー、どうなんだろう? 本当に奥が深い世界で、知れば知るほど手強いというか……毎晩エラさんを聴いては凹んでます(笑)。ただ、英語で歌うことに関しては、しっかり勉強した分、あまり高いハードルは感じていなくて。それよりも、ひさしぶりに楽器を持たずにステージに立って、歌だけで勝負することへの楽しみとプレッシャーが大きいです。

──当面はジャズへの挑戦が続きそう?

はい。でもこれでバンド、弾き語り、ジャズという自分がソロでやりたかった3つの柱がそろった感じがあって。これを1つひとつ、どれがメインとかじゃなくて、それぞれのスタイルで続けていけたらいいなと思っています。

──そのままジャズに傾倒するのではなく、ポップスもやるし、ライブではバンドスタイルも弾き語りもやると。

ずっとそういう形でやっていきたいなと思っていたんですけど……まさかこんな早いタイミングで全部そろうとは考えてなかった(笑)。弾き語りももっと先だと思っていたし、ジャズなんて全然先のことだろうなって。コロナ禍で楽器や英語の練習をする時間ができた分ちょっと早まっちゃいましたし、むしろバンドのほうがメンバーみんな忙しいからなかなかスケジュールが合わなくて思ったよりもできてないんですけど(笑)。

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──ジャズに挑戦するタイミングで、有安さんはまもなく30代という年齢的な節目を迎えます。音楽活動に限らず、「30代はこう生きたい」とか「30までにこれをやっておきたい」など考えたりしますか?

今自分が何歳かもよくわからなくなるくらい鈍感なので(笑)、年齢についてはあんまり気にしてないですね。

──30代、40代、さらにもっと先と、自分の将来の姿は想像できます?

あー、あんまり考えたことがないですね。常に目の前のことで精一杯というか(笑)。英語の勉強を始めてから視力がちょっと心配で……よく歳上のミュージシャンの方たちが「楽譜がよく見えねえよ!」とか言ってますけど(笑)、いつか自分にもそんな日が来るのかなあと最近思うようになりました。

2024年は……

──いろいろとお話しいただいたうえで改めて、2023年を総括するならばどうなるでしょう? 「今年の漢字」のようにひと言で簡潔に表すならば。

ひと言かー! 裏では着々とジャズに向けて準備を進めていましたけど、表ではやっぱり弾き語りツアーが中心で。ひさしぶりに細かくいろんなところを回れたし、お客さんの声を聞くのもひさしぶりでしたし……ツアーでは100人キャパくらいの、本当にお客さんとの距離が近い会場もあったので、1人ひとりに直接歌を届けて、ダイレクトに反応が返ってくる、それはライブでしか味わえないことだなと実感しました。2023年を振り返ったときに浮かぶのはやっぱり、目の前にお客さんがいるライブハウスの光景だと思うんですね。

──なるほど。1文字で表すならば「生」とかになるかもしれないですね。勝手に考えちゃいましたけど……。

それですね。助かります(笑)。

──(笑)。ではそれを踏まえて、2024年はどんな1年になると予想しますか?

「実」かもしれないです。ようやく実る、実践に移すみたいな。もしかしたら、本当に実るのは再来年くらいになるのかなあ。弾き語りも2年くらいをかけてようやく形になってきたけど、それでもまだまだだなと思うので、そう考えると来年はずっとあたふたして、ライブをやるたびに凹んで……みたいな1年になるんじゃないかな(笑)。ジャズだけじゃなく、ひさびさにバンドのライブもやりたいですし、アルバムも出したい。アルバムは温めすぎて煮込まれちゃってるくらいなので(笑)。活発な1年になることは間違いないです。

有安杏果

公演情報

有安杏果 Jazz Note 2024

  • 2024年2月13日(火)神奈川県 Billboard Live YOKOHAMA
    [1stステージ]OPEN 16:30 / START 17:30
    [2ndステージ]OPEN 19:30 / START 20:30
  • 2024年2月14日(水)東京都 Billboard Live TOKYO
    [1stステージ]OPEN 16:30 / START 17:30
    [2ndステージ]OPEN 19:30 / START 20:30
  • 2024年2月16日(金)大阪府 Billboard Live OSAKA
    [1stステージ]OPEN 16:30 / START 17:30
    [2ndステージ]OPEN 19:30 / START 20:30

<出演者>
有安杏果(Vo)/ 大林武司(Pf)/ 小川晋平(B)/ アロン・ベンジャミニ(Dr)

一般予約受付:2023年12月13日(水)12:00~

プロフィール

有安杏果(アリヤスモモカ)

1995年3月15日生まれ、埼玉・富士見市出身。子供タレントやキッズダンサーとして活動したあと、スターダストプロモーションのダンスボーカルグループ・Power Ageを経て2009年7月にももいろクローバーに加入した。ソロとしては2016年7月に神奈川・横浜アリーナにて初のソロコンサート「ココロノセンリツ ~Feel a heartbeat~ Vol.0』」を開催。2017年3月に4年間通った日本大学芸術学部写真学科を卒業した。10月11日に1stソロアルバム「ココロノオト」をリリースし、20日に東京・日本武道館でソロコンサートを開催。2018年1月にももいろクローバーZを卒業し、2019年にアーティスト活動を再開させた。2020年には「サクラトーン」「虹む涙」「Runaway」「ナツオモイ」と4曲を配信リリース。2021年からはギターもしくはピアノの弾き語りスタイルでのライブにも積極的に取り組んでいる。2023年3月に配信シングル「夢の途中」を発表。7月に東名阪を回る弾き語りツアー「A Little Harmony Live」を開催し、10~12月にはその第2弾として全国11会場で弾き語りライブを行った。2024年2月には3都市のBillboard Liveでジャズライブ「有安杏果 Jazz Note 2024」を行う。