アニメ「TIGER & BUNNY」のおかげで新しい表現の仕方を見つけられた

──「タイバニ」という熱烈なファンの多いアニメシリーズの続編に曲を作るということに、プレッシャーのようなものはありましたか？

いや、「いい曲を作らないとな」という気持ちはあったけど、プレッシャーはまったく感じてないですね。ただただ、初めての挑戦をするのがとても楽しみでした。

──あのさんはもともと「タイバニ」のことは知っていたんですか？

知らなかったから、まず今までのを全部観て、「こんなアニメがあったんだ」って思いました。想像してた感じと違ったっていうか。普通にヒーローものだと思って観たら、本当にある会社のスポンサーロゴが体にめっちゃ書いてあって「なんだこれ」って。キャラクターもみんな個性的で、すごく面白かったです。

──好きなキャラクターはいましたか？

ドラゴンキッドが好きです。ボクっ娘だし、ショートカットで女の子らしいことが苦手だし、自分にも当てはまることがいっぱいあって、勝手に親近感が湧いてしまいました。衣装も中華風の拳法具みたいな、昔から自分が好きで着てるのに近い感じだし、ネズミみたいなデカい耳がかわいいし、キャラクターデザインも好き。あともちろん主人公の虎徹とバーナビーも好きです。2人のキャラの対比がいいです。

──「AIDA」の歌詞を書くときに、具体的に「タイバニ」のこんな部分をイメージしていたというのはありますか？

アニメを観てて、すれ違う瞬間がすごく多いなって感じたんですよね。そういう人と人の“間”に何があるんだろうと思って。ちょうど私生活でも、いろんな人と会話していくうえですれ違いがあってモヤモヤしていて、「TIGER & BUNNY」を観ているときに自分の気持ちと重なったので「これを曲にしよう」と決めました。

──「AIDA」という曲名は“間”と“愛だ”のダブルミーニングですが、歌詞を考えるうえで先にあった言葉は“愛”ではなく“間”だったんですね。

そうです。この“間”って、僕にとっては孤独とか苛立ちがパンパンに詰まったものなんです。それこそ僕が普段曲にしてるような。でもそこにある孤独とか苛立ちって、愛があるからこそ生まれる感情だと思うんですよ。

──僕はこの曲を聴いたときにすごく新鮮に感じたんです。というのも今おっしゃっていたように、これまであのさんが書いたソロ曲は、曲調はいろいろありつつもどれも孤独や苛立ちがテーマになっていましたが、この曲はどこかポジティブな印象を受けたんですよ。言葉選びや言い回しはあのさんっぽいんですけど、今までであれば「まだ何にでもなれるよ」とは歌っていなかったような気がするんです。

確かに（笑）。いつも通り自分だけに向き合ってたら出てこない言葉だったなって思います。そういう意味でも「TIGER & BUNNY」を観てよかったです。今までの曲を聴いていて、この曲にびっくりする人もいるんですかね。どうなんだろう？

──びっくりというより、新しい一面が見れてうれしいんじゃないですかね。ファンの人は。

僕はこの「TIGER & BUNNY」のおかげで新しい表現の仕方を見つけられた感じです。

──先ほど「言いたいけどなかなか言いづらいことも、歌にすれば言える」と言っていたように、あのさんにとって作詞とは、実際に胸の内にしまっていた思いを外に吐き出す手段であって、こうやって何かのために歌詞を書くという経験は今までなかったのでは？

そうですね。でも「TIGER & BUNNY」を観たことで、自分の中にあるモヤモヤに対して向き合って、それが歌詞を書くきっかけになったので、そう考えると自分が言いたいことを言っているのは一緒だと思います。

──「AIDA」は愛についての歌ですが、いわゆる男女のラブソングという感じはしなかったんです。まあ、「タイバニ」のテーマ曲ということに引っ張られてそう感じた部分もあるかもしれませんが。

恋愛の歌としては書いてないです。

──あ、ハッキリとそうなんですね。

どうだろう……愛って別に「恋愛のことだ」とか「友情のことだ」とか狭い範囲を指す言葉じゃないし。特定したつもりはなかったから、逆に恋愛だと感じたならそう捉えてもらってもいいですし、それぞれの愛でいいんです。

僕は面白そうであればなんでもやりたいタイプ

──「AIDA」の作編曲は、初のソロ曲「デリート」以来あのさんの作品をいくつも手がけているTAKU INOUEさんです。TAKUさんと曲を作るときはいつも、どういう流れで作業をしているんですか？

今回はあっちがメロディを上げてきて、僕がそれに歌詞を書きました。

──メロディを初めて聴いたときの印象は？

「バラードか……！」って感じでした。

──TAKUさんとは実際に会って意見を交わしたりしているんですか？

最初に会って話して「どんな雰囲気の曲にしよう？」という大まかなイメージを固めました。それから送られてきた曲に歌詞を付けて戻して、「もう少しこうしよう」みたいなのを文面でやり取りしながら一緒に進めました。

──あのさんから見て、TAKUさんはどんなアーティストですか？

どんな曲でも作れる人。曲調の幅が広いのがすごい。僕はドープなサウンドが好みなんですけど、そういう曲をポッと仕上げてくれるのもすごいなって思います。

──今回初めてアニメ作品に曲を書き下ろしましたが、アニメに限らず「今後こんな作品に曲を書いてみたい」というのは何かありますか？

僕は面白そうであればなんでもやりたいタイプです。

──どんな作品が面白そうですか？

みんなの中で「こういう作品だ」っていうイメージが強いもののほうが、やりがいがありそうだなって思います。その世界観に合わせるのか、それともぶち壊すのかって考えるのが楽しそう。どっちのよさもあると思うんですよ。

──ソロ活動を始めてから順調にオリジナル曲が増えていて、ano名義のものだけで今回の「AIDA」で7曲目になります。そろそろソロアルバムの発売や、それに伴うリリースツアーの開催も期待できるのかな？と思ったんですが、いかがでしょうか？

わかんないですけど、CDをまだ1枚も出してないので、出せればなって思ってます。