Am Amp インタビュー|4人組ジャンルレスバンドの成り立ちと目指す場所 (2/2)

4人に共通する「Am Ampらしさ」は“華”

──須賀さんの中では「Am Ampというバンドでこんな音楽をやりたい、こんなことを表現したい」という思いよりも、もっとシンプルに「バンドをやりたい、バンドで仲間とつながりたい」という気持ちが強かった?

須賀 まさにおっしゃるとおりで。先ほどThe Beatlesが好きと話しましたけど、それは彼らの音楽のみならずドラマ的な部分にも惹かれたからなんです。なので、僕らもライブをやったりSNSで発信したりしていくにつれて、そういったところでのドラマが音楽の信憑性に重みを与えていくんじゃないかと信じていて。おっしゃっていただいた「バンドで仲間とつながりたい」というのは、まさにそのドラマ的な部分に関係してくるのかなと思っています。

──となると、この4人でやりたい音楽に関しては、あとからついてきたものだったんですか?

須賀 もちろん、始めた頃から青写真はありましたよ。それが3人と出会ったことでひっくり返ることもなかったですし。ただ……またThe Beatlesの話になって恐縮なんですけど、彼らは初期 / 中期 / 後期という形でマニアや評論家の方から語られることが多いじゃないですか。僕はこのAm Ampを「人生最後のバンド」と呼んでいるんですけど、ここから長く続けていく中で、例えば僕が1人で始めたところからこの4人になって、いろんな形で曲作りを進めていったり、今回JOHNが初めて作曲してくれた曲(「うらぎり」)をリリースしたりという、変化のタイミングをこれからも何度も迎えると思うんです。そういう新たな発見や驚きが増えていくことで、Am Ampもバンドとして初期 / 中期 / 後期みたいな捉え方ができるようになるのが理想です。

須賀京介(Vo)

須賀京介(Vo)

──これまでの楽曲を聴かせていただいて感じたことですが、ジャンルにこだわらず純粋に“いい曲”を生み出すことに注力していることが伝わります。あと、この4人になってからの音源はバンドらしさがどんどん増していて、その積み重ねがAm Ampの個性を確立することに反映されているようにも感じられました。

須賀 めちゃくちゃうれしいです! The Beatlesが好きな人って、オタクになればなるほどハード面にもこだわり始めるじゃないですか。そこで言うと、僕はサウンドはもちろんですけど、むしろ精神性から強く影響を受けているので、この令和6年現在においてどこまで挑戦的な音作り、曲作りができるのかはこだわっていきたいと思っています。

──実際、皆さんの中で“Am Ampらしさ”は見つけることができていますか?

JOHN 自分はずっとギターロックシーンで活動してきたんですけど、4人それぞれが異なるエンタメ界出身なので、ただバンドだけをやってきた世界じゃたどり着けなかった人の魅了のさせ方、そういうものをいろいろと発見できたことは、強みというかこのバンドらしい部分なんじゃないかと感じます。

JOHN(G)

JOHN(G)

矢沢 自分はヴィジュアル系でしかバンドをやってこなかったので、Am Ampに入ってから携わった楽曲の系統がそれまでと違っていたり、対バン相手がすっぴんだったり……ってそもそも化粧してる前提がおかしいんですけど(笑)、そういうことを再認識することが多くて。逆に今はそういう違和感に楽しさを覚えて、いろんな刺激をいただきながら自由を楽しんでいるところです。

宮城 僕はほかの3人に比べて、バンドに対するイメージに多少なりとも違いがあったんじゃないかと思います。ただ、それでも共通して言えるのは……自分で言っちゃうのもなんですけど、華ですかね。……うん、華です。

須賀 2回言うんだ(笑)。

矢沢JOHN (笑)。

宮城 特に僕は、俳優人生においてイケメンと言われる人間を500人以上は見ている自信があって、誰がどう見ても「ジュノンボーイ最終グランプリ出身です」みたいなルックスの人たちとばかり一緒に仕事してきたわけですけど、そういう人たちにも負けないほどの華がこのバンドにはあると思うんです。それはちょっとしたときに垣間見えるミステリアスさだったり奇抜さだったり、この見た目でこれをやるんだという面白さだったり、予想を裏切る刺激だったり、いろんなものが組み合わさったうえで華になっているんじゃないかな。

宮城紘大(Dr)

宮城紘大(Dr)

──実際、Am Ampのミュージックビデオやライブ映像を拝見すると、バックグラウンドが異なる4人が交わることで生まれる化学反応といいますか、それがいい作用を起こして華につながっている印象が強いです。

須賀 そう言ってもらえるのは、めちゃめちゃうれしいですね。4人ともタイプは違うかもしれないけど、みんなそれぞれの界隈で主役を張っていてもおかしくない存在なので、そういう意味でも期せずしてThe Beatles的なドラマを作れているのかな。

初のCDシングル「ミス」でトライしたこと

──12月3日には初のCDシングル「ミス」がリリースされました。全体的にロック色が濃厚になっており、今年7月にリリースされたミニアルバム「Catch me if you can?」ともまた違った色が出ているように思います。

須賀 この4人で初めて制作したのが「罪綴り」(2023年6月リリースのEP「where (Am) we?」収録曲)で、そこから「PZA」「A Hard Day's Nite」「チャイラッテ」といった曲を出していったんですけど、今回は原点回帰といいますか……楽曲の雰囲気やメロディをちょっとずつオマージュしつつ、この4人で作り始めた1年前の世界観を今の精神性で表現したらどうなるのか、ということにトライしてみたかったんです。

──表題曲の「ミス」は2020年代的というよりは、1990年代のJ-POPにあったラグジュアリー感がちりばめられた、ちょっと懐かしいテイストです。

須賀 おっしゃるように、世紀末感だったり、90年代末あたりのサウンドメイクは意識しました。

──それでいてドラムのリズム感やベースのフレーズ、ギターの歪み感などにフックが織り交ぜられていて、決して古臭いとは感じない。メロディに関しても普遍性の強さが感じられる一方で、譜割りにヒップホップなどの影響が見られ、しっかり現代的なアレンジになっていますよね。

須賀 メロディに関しては手癖的なところも大いにあるとは思うんですけど、アレンジにおいては単純にやりたいことを全部やっちゃって、正直入れすぎた感もあるんですよね。

JOHN 自分はギターのレコーディングにおいて、フレージングや音作りであまり年代とか考えたことはなかったんですけど、「こういう曲調なら、これやっちゃおう」みたいな感覚でプレイしたら、たまたまこうなったっていう感じですかね。

須賀 ぶっちゃけこのタイプの曲って書こうと思えばいくらでも書けるんですけど、令和6年にこういう曲をやること、そしてこの1年一緒にバンドをしてきた意味のほうを強く意識したのかも。確かに歌メロだけ聴いたら懐かしい感じがするのかもしれないですが、その中で先ほどおっしゃっていただいたフックがやりすぎなくらい入ることで、逆に今っぽさにつながったのかもしれないですね。

──ドラムに関しては、かなり難易度が高そうですが。

宮城 そうですね。でも、1年前に4人で初めて制作した「罪綴り」からして、初心者が叩くようなタイプの曲ではなかったので(笑)。

一同 (笑)。

矢沢 「最初にこの曲から始めましょう」っていう、教本に載るような曲ではない(笑)。

宮城 7段階ぐらい飛ばしてスタートしているので、最初はドラムの先生に「これを1曲目にやります」と伝えたら「いやいや、おかしいんじゃない?」と言われました(笑)。その頃と比べたら上達もしたと思いますけど、「ミス」を聴いたら「罪綴り」が懐かしく感じるところもあるんじゃないかなと。そもそもAm Ampが人生初めてのバンドなんだから、どんな楽曲が来たとしても得意とか不得意とかまだ言える段階ではないですし、この4人の中では一番練習しなきゃいけないという自負はずっと持っています。

──矢沢さんのベースラインもめちゃくちゃカッコいいですね。

矢沢 ありがとうございます。こういうタイプの曲調だったら本来はこう弾くべき、みたいなセオリーがあると思うんですけど、もともと活動していたジャンルがいかに主張して全員で音をぶつけ合うかみたいな世界でもあったので、本来はもっとしっとり弾くべきところもかなり攻撃的にプレイしていて。そう考えると、この曲はわりと手癖が出ているかもしれないです。

矢沢もとはる(B)

矢沢もとはる(B)

目標は「武道館に立ってステージ上で米を食う」

──歌詞においては10代や20代前半のミュージシャンからはなかなか出てこないであろう、艶やかな表現が随所に見られます。

須賀 ティーンエイジャーではない我々の今の年齢ならではの恋愛観を題材に、濃厚さや艶っぽさ、熱さというものをこのバンドとして表現したらどうなるんだろうと。そこに挑戦してみたかったんですが、しっかりと信憑性がある形でやれているんじゃないかなと思います。10代、20代前半の人が歌ったら「なんのこっちゃ」となるような歌詞かもしれないですね。この歌詞をこの音で伝えるからこそのセクシーさといいますか、説得力は確実にあると思います。あと、切なさや侘び寂び、喜怒哀楽でいうところの「哀」が強い歌詞に感じるかもしれませんが、僕にとってはこの曲は完全に「怒」なんです。

──なるほど。今の発言を受けて曲を聴き返すと、印象がだいぶ変わりそうです。このほかの収録曲も、ヴィジュアル系以降のJ-ROCK的な側面の強い「Karma's Grip」、大きなグルーヴ感を持つ「貴方の屍になりたい」、ストレートなロックチューン「うらぎり」と、ロックテイストをベースにしながらもいろいろバリエーションを付けていますね。

須賀 まだ活動を始めて間もないバンドなので、サブスクリプションサービスを通じてどこをどう切り取られて、どう評価されるかわからない。そういう意味では、どこを切り取っても異なる印象を持つようなバラエティの豊かさが必要なのかなと思うんです。言ってしまえば、ロックバンドだからこういう色じゃなくちゃいけないとか、こういうことをやり続けなきゃいけないみたいな固定観念って必要ないんじゃないかなと。Am Ampはそういう意思のもと活動してきました。このシングルに関しては、1曲目の「ミス」からラストの「うらぎり」までのトーンに近いものがありつつ、曲のタイプとしてはしっかりバリエーションが付けられているという、今までで一番コンセプチュアルでバランスに気を付けた作品集かもしれません。

Am Amp

Am Amp

──ラストナンバー「うらぎり」では、初めてJOHNさんが作曲を手がけていますね。

須賀 JOHNは歴戦のバンドマンではあるんですけど、今まで所属していたバンドでは自分が書いた曲がリリースされたことはなかったみたいで。

JOHN ちょっとだけ作詞したことはあったんですけど、自分でイチから曲を作って、それが音源になるのは初めてだったので、すごく不思議な気持ちでした。

宮城 実はこの曲を聴いたとき、ドラム的に「うん、これこれ!」って初めて思ったんですよ。

JOHN よかった(笑)。別に「いつも大変そうだから、簡単なドラムパターンにしよう」という忖度は一切ないんですけど、自分が今までやってきたジャンルを踏まえてどういう曲を作りたいかを考えたとき、好きなドラムパターンがこれだったというだけで。最初にドラムで始まって、そこにギターが乗っかって、すぐに歌が入ってくるみたいな導入で、ギターロック的にはポピュラーな作りかもしれないです。

──「ミス」や「うらぎり」しかり、ほかの2曲もしかりですが、それぞれのプレイヤーとしての主張の強さが伝わってくるのに、まったく歌の邪魔をしていないから、メロディがしっかり耳に残る。それこそが、この1年で4人が導き出した“Am Ampらしさ”の1つであり、そういうバンドの姿を投影したのが今回のシングルなのかなと感じました。

一同 ありがとうございます!

須賀 そう言ってもらえるのが一番うれしいですね。

──こういう結果を1つ打ち出すと、ライブ含め今後の活動が非常に楽しみになります。現在思い描いている、Am Ampとしての未来予想図は?

須賀 話がめちゃくちゃ飛躍するんですけど……僕が音楽、もっと広く捉えてしまえばエンタテインメント業界に足を踏み込むことを決めたのは大学生のときで、一寸先は闇じゃないですけど、自分が一番好きなものを我慢するぐらいの決意をしなきゃやっていけない世界だなと思ったんですね。なので……僕は2017年の春に大学を卒業したんですけど、その年の1月1日から白米を絶ったんです。

──願掛けのように?

須賀 そう。日本でバンド活動をする際、日本武道館に立つことが1つのわかりやすいゴールになると思うんですけど、僕はこの4人で武道館に立って、ステージ上で米を食うまでを目標として掲げています。

──なるほど(笑)。武道館のステージで炊飯して、ホクホクのご飯を食べるとか?

須賀 いいですね。何曲目かでご飯が炊けたら食べる、みたいな(笑)。

──好きなものを絶ってまで夢を実現させたいという覚悟が伝わりました。バンドとは異なる道で生きてきた宮城さんにとっても、ロックバンドにおける武道館の価値は理解できるわけですよね?

宮城 もちろん。でも……僕みたいなひよっこのバンドマンが言うのもなんですが、僕はこのバンドでさらに大きな会場に立ちたいと思っているんです。僕は俳優活動を通して、作品に関連したイベントでアリーナ会場に何度か立っているんですが、そこで体感した低音がまるで地鳴りのようで。あれを僕のドラムともとはるさんのベースで再現して、天変地異を起こすことが僕の目標です。

矢沢 アリーナを揺らそう(笑)。

宮城 華のあるバンドだから、大きいステージは絶対に似合うと思うんですよ。

須賀 今日、めちゃめちゃ“華”を推すよね(笑)。まあ、みんな身長的にもデカいからステージ映えもするだろうし。こういう夢って大人になるとなかなか口に出しにくくなりがちですけど、このバンドではどんどん公言して叶えていきたいと思っています。

Am Amp

Am Amp

プロフィール

Am Amp(アムアンプ)

舞台俳優にヴィジュアル系バンド、インフルエンサーなど異色の経歴を持つメンバーで構成された4人組ロックバンド。数々のアーティストの楽曲を手がけてきた須賀京介(Vo, G)が“都内・一人組バンド”と銘打って活動を始め、2023年6月に宮城紘大(Dr)、矢沢もとはる(B)、JOHN(G)が加わり現在の4人体制となった。2024年12月に初のCDシングル「ミス」をリリースした。