ナタリー PowerPush - 相沢舞
人気声優がアーティストに成長する
去年の「ミクパ」は「歌手・相沢舞」の転機になった
──そして昨年3月、buzzGさんのアルバム「Symphony」で初めてアニメソング以外の曲「かくれんぼ」を歌い、Zepp Tokyoで行われたイベント「初音ミク ライブパーティ 2011『ミクパ』39's LIVE IN TOKYO」では同曲のライブパフォーマンスも披露しました。
Zepp Tokyoのときはオープニングアクトとしての出演で、私自身畑違いだと思ったし、ボーカリストで生身の人間が私だけで(笑)。周りのスタッフさんからも「アウェイだと思うしお客さんの反応が悪いかもしれないけど、覚悟しておいてね」って言われてたんですけど、私はそんなに構えてなかったんです。
──なぜ構えずにステージに臨むことができたんですか?
「ライブに来るお客さんは、ライブを楽しみに来てる人たちだから信用して大丈夫」と、漠然と考えていて。それに、ニコ動界隈の人たちはいい人たちだと思っていたし。実際、ステージに出ていったらお客さんも本当に楽しそうな顔をしていたし、私もひたすら楽しかったです。
──純粋に歌手としてbuzzGさんのアルバムに参加したりZepp Tokyoのステージに立ったりしたことは、今回の「キミニトドケ」の制作において大きな糧になったのではないかと思います。
そうですね、あれは「歌手・相沢舞」にとってひとつの転機になったと思います。
歌の中では演じ手として、ちゃんとその曲の主人公を演じたい
──「かくれんぼ」(アルバム「Symphony」収録曲)がきっかけとなって歌手デビューが決まり、あれから1年を経ていよいよ「キミニトドケ」がリリースされます。
最初はいつデビューするということも聞かされていなかったので、ちょっと不安でした。最初にデモテープをレコーディングしたときは全然思うように歌えなくて、現場の空気が北極みたいに凍り付いてしまって(笑)。でも、私以上に曲を作ってくれたfu_mouさんや、制作に関わっている人たちが「どうしよう?」って思ったはずなんです。そこから本格的に歌のレッスンが始まったんですけど……。
──レッスンの成果かもしれませんが、1年前に発表した「かくれんぼ」よりも「キミニトドケ」で聴ける歌声のほうが伸びやかで力強く響くし、何よりも歌詞に合った歌い方をしているなと思いました。
でもレコーディングの初期には「ちゃんと歌詞を読んで歌ってる?」とか、そういう初歩的なことをたくさん指摘されて(笑)。ずっと「どうやったらうまく歌えるんだろう?」ってことばかり考えてたんですけど、デモテープ制作のあとに「歌の中では演じ手として、ちゃんとその曲の主人公を演じたい」と思い直して。とはいえキャラクターソングのようにはしたくなかったので、今回の「キミニトドケ」を歌うときは大袈裟になりすぎず、歌詞に出てくる女の子の気持ちを自然に表現しようと心がけました。
──今まで歌ってきたアニメのキャラクターソングのレコーディングとも大きく違ったと思いますが。
キャラクターソングだとそれまで演じてきたベースがあるから、そのキャラクターがどんなシチュエーションで、誰と、どんな気持ちで歌ってるかが自然と浮かんでくるんです。キャラクターの背景が自分の中にしっかりできているから、何も考えずにやれるのもあるし。でも、「キミニトドケ」の場合は歌詞と曲をもらって、この曲の主人公がどういう子で、どんな相手に対して歌っているのか、その相手とどの程度の関係なのか、そういったシナリオがなくて。自分で考えて、自分の中にあるものを表現して歌わなきゃいけないってことがすごく大変でした。
──キャラクターソングはそれだけ事前に素材が揃っていたけど、今回のオリジナル曲はゼロから始めなきゃいけなかったと。
だから、キャラクターソングのときはレコーディングの前々日に歌詞をいただいても、その歌詞をどう表現すべきかがスッと出てきてたんですよ。聴く前からある程度のイメージが固まっているキャラクターソングと違って、「キミニトドケ」はまっさらな状態から歌だけで勝負しなきゃいけないし、歌で新しいイメージを作っていかなくちゃいけない。そういう意味で、根本的に違うものなんだって改めて思いました。
昔から応援してくれてる人たちへ感謝の気持ちを伝えたい
──シングルのジャケットには「日常」の原作者、あらゐけいいちさんのイラストが使用されています。
あらゐ先生ってTwitterに描き下ろしのイラストをたくさん公開してるんですけど、そのイラストも使っている画材やタッチが毎回違っていて、かなりスタイリッシュなんです。なので、今回お願いするときは曲を聴いてイメージしたものを描いてもらおうとお任せしたんですね。そうしたら、「いや、わかんないです! 何を描いたらいいか言ってください!」って言われて(笑)。なので、「春なので、ポップな色使いで」と漠然と伝えて。
──かなり漠然としてますが(笑)。
春っぽく、いろんな色があるといいなと思って(笑)。あとは、今回は配信シングルだからイラストがあまり大きく表示されないと思うので、人物を大きめに描いてほしいと伝えたらちゃんとそういう感じに仕上がってました。素敵なイラストを描いていただけて、本当にうれしいですね。
──ちなみに「キミニトドケ」のタイトルって、相沢さんのブログ「君に届け→」と一緒ですよね。
声優デビューして少し経ってからブログを始めたんですけど、当時から応援してくれてる人たちへ感謝の気持ちを伝えたくて、デビュー曲のタイトルに使ってもらったんです。「君に届け→」はアニメ「マクロス7」の中で使われていた、私の好きな曲のタイトルで。そもそも好きなアニメの曲のタイトルを自分のブログのタイトルにして、それを自分のデビュー曲のタイトルにするのもどうかと思うんですけど(笑)、ずっとそうしたいなって考えてたんです。でも、曲に合うタイトルで本当に良かったと思います(笑)。
収録曲
- キミニトドケ
相沢舞(あいざわまい)
東京都出身、8月21日生まれの声優、歌手。テレビアニメを中心に活躍し、「らき☆すた」の峰岸あやの役、「日常」の長野原みお役、「未来日記」の雨流みねね(9th)役などで人気を博す。また、近年は女優として「流星」「yesterday~それがあっての今日~」といった舞台にも出演。歌手としても数々のアニメのキャラクターソングや、2011年3月にリリースされたbuzzGのアルバム「Symphony」の収録曲「かくれんぼ」で歌声を披露してきた。2012年5月、配信限定曲「キミニトドケ」で本格的歌手デビューを果たす。