足立佳奈「Seeker」インタビュー|デビュー5周年の節目を迎え、“探求者”として目覚めるまで (2/2)

気持ちが変化する=“探究者”

──そんな足立さんの5周年の集大成が今回リリースされたニューアルバム「Seeker」です。連続配信された9曲に加え、新たな楽曲も3曲収められています。オープニングを飾るのは表題曲となる「Seeker」。力強いロックテイストが斬新なインパクトを与えてくれますね。

私の5年間を全部知ってくださっている中村さんがこういうロックな曲を作ってくださったのがすごくうれしくて。自分としても「新しいなー!」と思います(笑)。

──アルバムタイトルにもなっている“Seeker”というワードにはどんな思いが込められているんですか?

さっきも言ったんですけど、人間って毎日のように気持ちが変化するものじゃないですか。それが楽しくもあるけど、ときにはそれで迷ってしまうこともあって。でも、気持ちが変化するっていうことは、何かを求めている“探究者”だからなんだと気付いたときに気持ちがスッと楽になったというか。今回のアルバムには、そんな日々変化していく私の思いが詰め込まれているので、タイトルにその言葉を使うことにしました。

足立佳奈

──なるほど。

それに加えて、楽曲の「Seeker」に関しては、自分のすごく近い場所にいてくれる憧れの人への思いを書いてもいるんです。何に対しても楽しむことがとっても上手で、常に輝いた存在であるその子のことを私はこの曲で“Seeker”と呼んでいて。「いつかあなたのような“Seeker”に私もなりたい」という気持ちを歌詞には込めました。この曲が聴いてくださる方にとって、何かがんばるきっかけになってくれたらうれしいですね。

──11曲目の「今が一番ここちいい」では、足立さんが詞曲に加え、アレンジまで手がけられていますね。

すごくシンプルなサウンドなので、アレンジというほどのものではないんですけど(笑)。この曲は1対1の空間で大切な人に向けて歌っているイメージがあったので、ピアノと弦の音だけで構成しました。弦に関しては細かいルールみたいなものはわからないので、タイトル通り、自分が一番心地いいと思える流れを大事にしました。

──ボーカルに関してもリラックスしたナチュラルな表情が出ていますよね。

ボーカルだけスタジオで録ったんですけど、私の思うように、自由に歌わせてもらった感じですね。“目の前にあなたがいる”という思いだけを持って。結果として、すごく温かく、ただただ幸せだなと思う瞬間を詰め込んだラブソングになりました。恋をしているときって、相手のイヤなところがたくさん見えてきたりもしちゃうものだけど、この曲を聴くことで大切な人のいいところを改めて見つめ直してほしいです。

足立佳奈

──アルバムのラストを飾るのは足立さんが作詞・作曲された「カンパイ」。エンディングを元気で明るい曲で迎えるのが足立さんらしいなと思いました。

あははは。確かにそうかもしれないですね。この曲はもう実体験というか。去年の10月15日の夜の話なんですよ(笑)。

──10月15日は足立さんの地元・岐阜県で凱旋ライブが開催された日ですよね。

そうです、そうです。その前日は私の誕生日でもあったので、ライブのあとには地元のみんな、野球部時代の友達と集まったんですよ。それがもうとにかく楽しすぎたので、そのまんま曲にしたいと思って。10月15日の思い出の曲なので、その日のライブで一緒だったバンドメンバーにアレンジと演奏をお願いして完成させました。

──足立さんはこの5年間でグッと深みのある歌詞を書かれるようになってきたと思うんですけど、この曲の歌詞はある意味、デビュー当時の足立さんを想起させる雰囲気ですよね。

うんうん、そうですね。その日あったことをただそのまんま書いただけなので(笑)。地元に戻ると、どうしても昔の自分に戻っちゃうんですよね(笑)。でも、それもまた私らしさでもあると思うので、デビュー5周年の集大成となる大切なアルバムの最後にこういう曲を入れることができたのはよかったなと思いました。いろいろあったけど、また1回戻ってきちゃったな、みたいな(笑)。

足立佳奈
足立佳奈

ラブソングを歌うようになった理由は

──アルバムの完全生産限定盤には、足立さんの代表曲をまとめた「5周年スペシャルアルバム」が付属します。これを聴くとこの5年間での変化を鮮明に感じることができますね。

デビュー曲の「笑顔の作り方~キムチ~」とかを聴くとね、「この人、底なしに元気だな」って思いますよね(笑)。年齢を重ねていく中でどんどん落ち着いてきてるな、みたいな感覚になる。物事をより冷静に見られるようになったところもあると思うし。そう考えると、いろんな喜怒哀楽が詰まった、めちゃくちゃ心が動きまくる5年間を過ごせてきたんだと思います。ただ、音楽的なところで言うと、表現の仕方に変化はありながらも、ストレートな言葉選びをし続けているところは変わらないなという発見もあって。あと、音楽が自分の真ん中にずっとあり続けているところもまったく変わってないなと思います。

──デビュー当時の足立さんは聴き手を笑顔に、元気にすることを大きな使命にされていましたよね。それがいつしかラブソングをたくさん歌うようになって。デビュー当時は「ラブソングは歌わない」っておっしゃってたんですけどね(笑)。

そうでしたよね。ちゃんと覚えてます(笑)。でも、ラブソングを歌うようになったのもすごく自然な流れだったんですよね。自分の発言とか思いに矛盾が生じてしまう音に対して、自分なりに戸惑ったことももちろんあります。でも、今はそれでよかったってすごく思うんですよ。気持ちが変化するのは当然なことなんだなって。

──それはつまり……。

“Seeker”だからですね(笑)。この言葉を見つけていろいろ腑に落ちたところはありますね。ここ数年はラブソングをメインに歌ってきているし、自分としてもラブソングが似合うと感じているところもあるんですよ。でも、「Life Goes On」を配信リリースしたときに、「やっぱり佳奈ちゃんは応援ソングだよね」って言ってくださるファンの方もたくさんいらっしゃって。足立佳奈のそういう部分を今も求めてくださっている方がいるのは本当にありがたいことだと思うんです。

足立佳奈

──今回のアルバムにはラブソングのみならず、“ライフ”を歌った曲も多いですし、表現の柱がどんどん増えてきた5年でもあったということですよね。

そうですね。選べるものが増えてきたんだなって実感します。そういった私が歩んできた軌跡みたいなものを感じてもらうために、ファンの皆様にはぜひ「5周年スペシャルアルバム」をまず聴いていただき、そのうえで「Seeker」を聴いてもらいたいですね。で、また「5周年アルバム」に戻っていただいてもいいと思いますし。「どんだけ聴くんや」ってくらい繰り返し聴いてほしいです(笑)。

──3月2日には全7公演のツアーもスタートしますね。

はい! 「カンパイ」を一緒に作ってくれたバンドメンバーと全国を回れるのが個人的にはエモいなと思っているところで(笑)。今回のアルバムの曲がメインになるとは思うんですけど、音源通りにやるのか、それともバンドアレンジにするのか、みたいな部分でライブならではの楽しみをお届けできたらいいなと思います。なので、とにかくアルバムをたくさん聴き込んだうえで遊びに来てほしいですね。5年経ってもあまり変わらない足立のMCも楽しんでください(笑)。

──今回5周年にまつわるお話をたっぷり聞きましたけど、気付けばあと半年で6周年になるんですよね。

そうなんですよ。いつまでも5周年って言ってられないですよね(笑)。アルバム制作を経て、この先にやりたいことはまだまだたくさんあるんですけど、具体的な自分の姿としてはまだまだ見えてない部分もあって。なので、ここからもいろんなものを“Seeker”としてしっかり探していきたいなって思います!

足立佳奈

ライブ情報

ADACHI KANA LIVE TOUR 2023 -Seeker-

  • 2023年3月2日(木)大阪府 Shangri-La
  • 2023年3月3日(金)愛知県 ElectricLadyLand
  • 2023年3月19日(日)北海道 PLANT
  • 2023年3月25日(土)広島県 Live space Reed
  • 2023年3月26日(日)福岡県 DRUM Be-1
  • 2023年4月2日(日)宮城県 仙台MACANA
  • 2023年4月16日(日)東京都 Spotify O-WEST

プロフィール

足立佳奈(アダチカナ)

岐阜県海津市出身のシンガーソングライター。各SNSのフォロワーが計130万を超えるなど若者から幅広い支持を得ている。2014年にLINE×SONY MUSICオーディションで12万5094人の中からグランプリを獲得し、2017年8月にシングル「笑顔の作り方~キムチ~ / ココロハレテ」でメジャーデビュー。2018年10月に1stアルバム「Yeah!Yeah!」、2020年2月に2ndアルバム「I」、2021年11月に3rdアルバム「あなたがいて」とコンスタントにリリースを重ねる。2022年4月よりデビュー5周年に向けて、9カ月連続配信企画を展開した。2023年2月に4thアルバム「Seeker」を発表した。