TBSラジオ「ACTION」|20代のヒップホップDJが夕方のラジオの顔に? DJ 松永(Creepy Nuts)の初回放送に密着

DJ 松永 インタビュー

「なめんな」と思いながら読んでました

──まずは1回目の放送、お疲れさまでした。他局で深夜の番組もやっているとはいえ、1回目とは思えないほどの堂々としたトークでしたね。

ホントですか? そんなこと言っていただけてうれしいです。ありがとうございます。

──放送を終えた感想は?

DJ 松永

わかっていたとはいえ、やっぱり夕方と深夜ではずいぶんやり方が違うんだなと。ニッポン放送でやってる「オールナイトニッポン0」も1時間半あるんですけど、こんなに細かく段取りが区切られてないんで、もう少しゆっくり話しながら、都度、落としどころを見つける感じです。でもこの時間の番組は細かくいろんな話題を入れていかないといけないし、その話題が盛り上がってきても時間枠内でパッと終わらせないといけないんです。ラジオショッピングとか交通情報を飛ばすわけにはいかないので。今日は何カ所か「まとめきれずに結論を言わないまま終わっちゃった」って場面があって、それは難しいなと思いましたね。

──リスナーにとっては生活の中でリラックスしながら聴く時間帯の番組だと思いますが、それに反して収録スタジオはほかの番組と比べてもかなり慌ただしい気がしました。

めっちゃ慌ただしいと思いますよ。だから“台本迷子”にならないかが超心配で。コーナーが多いので台本も分厚いし、「今やってるの、どこのページなんだろう」ってなるのが怖いです。

──番組のパーソナリティが発表されたときに、おそらく深夜番組のリスナーであろうファンの人たちがTwitterで「DJ 松永が時事ネタを話したり、交通情報やラジオショッピングにつなぐのは不安しかない」みたいなツイートを一斉にしていて(笑)。

めちゃめちゃ言われてましたよ。ファンであればあるほど本気でそこを気にしてますね。「なめんな、俺のすべてを知った気になってんじゃねえ」と思いながら読んでましたけど(笑)。

──TBSからパーソナリティのオファーがあったとき、どう感じました?

単純にめちゃくちゃうれしかったです。夕方の2時間の生放送って、普通に音楽活動をしててもできない枠ですし、自分の知らない世界に飛び込めるから今後の活動にとっても非常に糧になると思うので、本当にありがたいですね。24年間続いた「荒川強啓デイ・キャッチ!」が終わった次の番組だから、誰がやるのかはすごく大事なことだと思うんですけど、そこで任せていただいたのは本当に光栄です。

「夕方のワイド番組」と「20代のヒップホップDJ」の水と油感

──人気番組の終了後の枠ということで、プレッシャーもあったのでは?

話をもらった瞬間はそういうことはまったく感じなかったんですけど、冷静に考えてみたら「あの歴史のある番組が終わるってことか……」って、時間差で実感しました。まあ、始まりと終わりは常にセットなので仕方ないとは思うんですが、この改編でものすごくガッカリしている人もいるはずで。俺だって、自分が一番好きな番組が終わってまったく違うテイストの番組が始まったら、やっぱり「そうか……」ってなりますもん。ラジオに支えられて生活している人間はたくさんいますから、前の番組が好きだった人たちが怒るのも無理はない。別に俺が番組を潰したわけじゃないですけど(笑)、やっぱ「すみません」って気持ちになりますよ。

──まあ、そうかもしれませんね。

DJ 松永

俺は自分がどういう理由で抜擢されたのか実は把握してないんですけど、たぶん「なんか面白そうだから」ってことに尽きるんだろうなと思うんですよ。単に「ゴリゴリの深夜ラジオをやっている人間が夕方のワイド番組をやったらどうなるんだろう?」っていう興味。ワイド番組の実績がまったくない人を選んだってことは「今までにない、新しい番組を作りたい」と考えているはずなので、一から勉強させていただきつつも、そのつもりでがんばらせていただきたいですね。

──「ゴリゴリの深夜ラジオをやっている人間が夕方のワイド番組をやったらどうなるんだろう?」といえば、2016年に「大沢悠里のゆうゆうワイド」が終わって「伊集院光とらじおと」が始まったときも、もしかしたら同じだったのかもしれませんね。深夜ラジオのイメージだった伊集院光さんが朝のワイド番組をやるって、当時は意外でしたし。

ああ、なるほど。そうですね。それも踏まえて、パーソナリティにトリッキーな人もキャスティングしてみようってことになったのかな?

──まあ、全員トリッキーな気もしますけどね(笑)。

でも俺以外、みんな言葉を扱う職業なんですよ。宮藤さんは脚本や歌詞を書くし、尾崎さんも作詞をすれば小説も書く。羽田さんは小説家で、武田さんはライターなので、言葉を扱ってないのは俺だけなんですよ。年齢も一番下ですしね。「夕方のワイド番組」と「20代のヒップホップDJ」って、イメージ的に水と油感がすごいじゃないですか(笑)。そんな意外な肩書きの人間が、これから時間をかけてだんだん夕方になじんでいったら、楽しいかもしれないなと。

──放送を終えてみて、深夜と夕方で何か違いを感じましたか?

深夜ラジオって聴くのにカロリーが必要というか、聴きたいと思う人じゃないとたどり着けないような時間帯に放送してるじゃないですか。だから基本的にはパーソナリティや番組の性質を理解した人が集まる場所だと思うんですけど、夕方にラジオを聴いてる人って、仕事中とかに流し聴きしていたり生活習慣の一部になっている人が多いと思うんです。「このパーソナリティが好きだから聴く」というより「この時間帯のラジオを聴く」という感じで。だから深夜と夕方ではやり方を変える必要があると感じましたね。もちろん、俺が任されているんだからちゃんと自分らしさも出していかないといけないし、今後も続けていきながらいい塩梅を探っていかなきゃなと思います。