1mmも想像してなかったメジャーデビュー

そしてこの春、9Lanaはついにメジャーデビューを果たす。言うまでもなく彼女のキャリアにとって極めて大きな出来事だが、本人は「まさか自分がメジャーデビューさせていただける日がくるなんて、1mmも想像してなかったです」と明かす。

「人前に立ったり、目立ったりすることがあんまり得意じゃないので、あきらめていました。顔を出さなくても活動できる歌い手の文化は素晴らしいなと思うし、今はこれからどんな活動ができるのか楽しみです。リスナーの皆様から温かい言葉をたくさんいただけたのもうれしかったですね」

メジャーデビュー曲「Let me battle」は、テレビアニメ「ポケットモンスター」のエンディングテーマだ。楽曲プロデュースはAdoのヒット曲「踊」「唱」の制作を手がけたことで知られるGiga ＆ TeddyLoid、作詞をTOPHAMHAT-KYO（FAKE TYPE.）が担当。ド派手なエレクトロ系トラック、エキゾチックな音像が1つになったアッパーチューンに仕上がっている。

「Gigaさん、TeddyLoidさんの楽曲は以前からたくさん聴かせていただいていて。『絶対すごい楽曲が来るはず』と身構えていたんですが、想像の遥か上を行くような楽曲を作っていただきました。歌詞も本当に素敵で……。『ポケモン』にはいろいろ思い出があります。クリスマスにサンタさんからもらった初めてのゲームが『ポケモン』だったんです。すごく面白くて、やめどきがわからず1日に何時間もやって。友達の家に集まって『ポケモン』の映画を観たこともいい思い出ですね。アニメ『ポケットモンスター』のエンディングテーマを担当させていただけたこと、Gigaさん、TeddyLoidさん、TOPHAMHAT-KYOさんといった憧れの方々が手がけた楽曲を歌えたことは本当に光栄です」

もちろんボーカルの表現も極めて魅力的だ。エッジーな声、キュートな声、がなり声、解放感にあふれた声など、9Lanaの特長であるカラフルな歌声をダイレクトに堪能できる。

「リズムに乗って歌うことだったり、早口のパートを滑らかに歌うことだったり、歌の表現についてもかなり試行錯誤しました。制作中は時間さえあれば聴き返して、自分の部屋で録音して。50テイクくらい送ったんですが、すごくカッコよく、素敵に仕上げてくださってうれしかったです」

タイトルに含まれている「Let」が「ポケモン」の最新ゲームタイトル「スカーレット・バイオレット」と重なっているほか、「太陽と雨を浴びて 芽吹き出す種」という歌詞が、“ほのお、みず、くさ”のタイプを想起させるなど、そのほかにもたくさんのポケモンの世界観を反映した「Let me battle」。人生という冒険の中で出会う新しい自分に「Nice to meet you」する──この曲に込められたメッセージは、9Lana自身にもポジティブなパワーを与えているようだ。

「歌う前は『大丈夫かな？』と思っていたんです。でも、実際に歌ってみたら不安はなくなりました。明るくてカッコいい楽曲なので、自分自身も“楽しい”という気持ちに引っ張ってもらえたというか。歌詞にもすごく勇気付けられました」

いつかリスナーの前に立つことを夢見て

「今もあまり目立ちたくないし、どちらかというと内気な性格なんですが、音楽を聴くと気持ちと体が動いて、ノリノリになるんです。無音よりも曲がかかっているほうが落ち着くし、音楽を聴かない日、音楽のことを考えない日はないですね」と話す9Lana。音楽に対する純粋でまっすぐな思い、そしてボーカリストとしての類まれな才能に貫かれた彼女の歌はここからさらに多くのリスナーを魅了することになるだろう。

「今までもそうだったんですが、音楽を楽しみながら活動を続けていけたらいいなと思っています。ライブに関しては……今すぐって言われると困りますけど、もう少し自信が付いたら。いつも私の歌を聴いてくれるリスナーの皆さんに直接届けて、『ありがとう』と言いたい気持ちはすごくあるので。私はたぶん、誰も聴いてくれなかったとしても、1人で歌ってると思うんです。だけど聴いてくださる方の反応が見えるとすごくうれしくなるんですよね。私の歌を聴いて、何かしらプラスの感情を持ってくれたらいいなと思っています」