「あー、生きてんな」と初めて思えた
──なぜ自分は音楽をやるんだと思いますか?
なぜ音楽だったのか、かあ……確かになあ。(少し考えて)一番気持ちよかったから、ですかね。たぶんこの先どんな経験をしても、曲を書いて歌って作り上げたときの快感に勝るものは絶対にないから。「あー、生きてんな」と初めて思えた、みたいな。
──そうやってあくまで自分のためだけに作っていたはずのものが、「誰かに届いた」と感じられた瞬間はありました?
15歳とかそれくらいの年齢の子から「救われました」みたいなDMが来たことがあって。その子は今でもずっと俺の曲を追ってくれてるんですけど、自分が一番苦しんでいた年頃くらいの子たちに届くっていうのはすごくうれしかったですね。
──なんなら「俺にもあのとき6LUEがいてほしかった」みたいな。
いや、俺にはそんときピープがいたんで(笑)。
──ですよね(笑)。いずれにせよ、実体のない不特定多数に向けるのではなく、あくまで“あのときの自分”という明確すぎる対象に向けて歌ったからこそ、届くべきところに深く刺さったということだと思います。
そうすね。それはすごく大事にしてるっていうか、そういうふうにしかやれないんで。
流行りに流されず……「エモラップをやっていく」
──もうちょっと細かい話をすると、音楽のスタイルは最初から今の感じだったんですか?
最初は本当に“ザ・エモラップ”って感じで、ギターのループと簡単な打ち込みドラムで組んだビートに乗せて淡々とラップしてたんですけど、ちょっとずつ叫ぶようになっていった感じっす。だんだんロック調になっていって、ロック、グランジ、エモラップの融合みたいな。ただ、自分の中ではスタイルはあくまでエモラップだと思ってるんで、誰に何を言われようともジャンルはエモラップでありたいっすね。
──「ジャンルでくくられたくない」という思いはそんなにない?
見当違いなジャンルとかを言われたら嫌ですけど、俺は逆にエモラップとしてくくってほしいっすね。エモラップって、今まったく人気ないんすよ(笑)。マジで誰も聴かねえよ、みたいな。でもそれを廃れさせたくないし、残していきたいんですよね。自分が好きな音楽は一生残っててほしいし、仮に俺1人になってもやっていく覚悟でいるんで。
──むしろそこにプライドがあるんだと。
そうです。エモラップの伝道師でありたいですね。
──その意識の表れなのか、トラックの傾向がかなり限定的な印象を受けました。若いアーティストの場合は特に幅を見せたがる人が多いので、「いろいろやりすぎて逆に何がしたいのかよくわからん」というふうになりがちですけど、6LUEさんの音楽はその真逆というか。
ビートとかトラックで魅せるんじゃなくて、声とリリックで勝負したい思いがあって。それもエモラップリスペクトですね。エモラップが出てきた当初って、ビートとかすげえ陳腐だったり(笑)、今聴くとグチャグチャじゃんみたいな曲も多いんすけど、それでも声と歌だけで全部持ってっちゃうみたいな、そういうのが好きなんで。今のヒップホップの「ビートがなんちゃら」みたいなのはそんなに好きではないですね。「ビートやべえじゃん」とか言うけど、「お前それビートいいだけやん」みたいな。
──要は、ビートやトラックでごまかしたくないということですよね。
そうっすね。
──そうなってくると、逆にどうやって音を作っているのかが気になります。作り方としては、まず歌いたいことがあって始まるんだと思いますが……。
そうです。普段感じたことを書き留めているメモ帳があって、そこから刹那の感情を抜き出してメッセージを決めるところから始まるんですけど、音に関してはマジで「もの悲しいギター」くらいのこだわりしかないですね。最近だったらシューゲイズのタイプビートとかを漁ってるんで、そういうのを歌詞の気持ちに合わせてハメていく。
──“詩人”のやり方ですね。
そうですね(笑)。
──ちなみにギターは好きなんですか?
ギターの音は好きですね。自分では弾けないけど家にあって……それこそ今回のアルバムに入ってる「28」って曲があるんですけど……。
──「彼の28の誕生日に 桜模様のギターを拾った」。
そう。地元の上板橋ってとこに友達とよく屋上で遊んでたビルがあって、そこの屋上へ続く階段が、不法投棄のゴミだらけになってたんすよ。ある日ベロベロに酔っ払ってその屋上へ行ったときに、ゴミ溜めの中にピンク色のエレキギターが落ちてて。その日はちょうどピープの誕生日で、しかもピープがピンク色が好きだったのを知ってたから、「マジか」みたいな。壊れてるかなんかでちゃんと鳴らないんですけど、今でも家に飾ってあります。その出来事も、今思えばすごく映画を感じましたね。どんな偶然だよって。
──なんか、“大いなる意思”みたいなものを感じさせるエピソードが多いですね。
そうなんですよね、別にスピってるわけじゃないんですけど(笑)。
あの頃の自分を少しは受け入れられたかなって
──アルバムを作ることになったのは、どういう経緯で?
最初はアルバムを作る気はなかったんですよ。単発でSoundCloudに2、3曲出していってたら、なんかある日「まとめたいな」という気持ちになって。そのときに出してた「Pedal」と「yodaka」には何か通ずるものがあるなと思って、そこに以前作った「俺たちがまだ死ねないのは」も加えたら、当時感じていた気持ちを全部ぶつけた作品としてまとまるんじゃないかと。
──それぞれの曲で断片として歌ってきたものが、まとまることでまた違った意味を持ちそうだぞと。
そうですね。それで題名が「For 21st century broken boys」っていう、ちょっと壮大っぽいですけど、ただただ10代の頃の自分を……供養っていうよりかは、「お前は間違ってなかったよ」と肯定してあげられる作品になった。これを作ったことで、10代の前半から18ぐらいにかけてのあの頃の自分を少しは受け入れられたかな、って思いますね。だからといって別に「あの日死ななくてよかった」とは言わないですけど、将来的にも自分にとってすごく大事な作品になりそうです。聴き直す年齢によっても、意味合いがいろいろ変わってくるんじゃないかなと思うし。
──ご自身にとってもそうでしょうし、世の中にとっても意味のある作品だと思います。特に手応えのある楽曲を挙げるとすると?
まずは「High school」ですかね。これは当時の感情をちゃんと書けたなと思います。俺は別に母ちゃんのことが大嫌いってわけではないんですけど、俺が一番助けを必要としているときに突き放した人間ではあって、あの瞬間からいろいろ変わったんで……ちょっと話が変わるんすけど、そういう10代の痛みを世のエンタメはすぐ“失恋”に集約させて片付けるじゃないですか。それがものすごく気に食わなかった。そうじゃない痛みもたくさんあるのに「青春だよねー」みたいなすり替えをするのは絶対に違うっしょ、という思いがあるんで、今回のアルバムには失恋系の歌はまったくないんです。
──それも違和感の話ですよね。「普通こうだから」をそのままなぞっても体重の乗った表現にはならない、みたいな。
そうすね。「Hood depression」もそうで、ヒップホップって地元のことを歌うじゃないですか。「俺の地元は殺人鬼とギャングだらけだぜ」みたいな。上板橋にはそんなのないんで、それっぽいことを俺が言ったら嘘になる。自分では「川崎じゃない俺の地元では 他人よりも自分に殺される」ってラインがすごく気に入ってるんすけど、“それっぽいこと”じゃなくて、ちゃんと感じてることを歌にできたなと思ってます。
──そこは完全にパンチラインだと思いました。語りだけで構成される「For 21st century broken boys」なんかも、その姿勢の象徴のような感じがします。
このアルバムで言ってることは、あの30秒に全部集約されてますね。あと“語り”の話でいうと、2曲目の「Pedal」の冒頭に入ってる叫びは、俺が泥酔して叫んでるのを友達が録音してたやつなんすよ。自分ではほぼ覚えてないんですけど(笑)、あの言葉はすごく好きですね。本当に心から出ている言葉なんで。
──確かに、仮にあのセリフを机で書いて読みあげたとしたら、たぶんああはならないですよね。
そうですよね。あれ本当は2分ぐらいあって、途中マジで意味わかんないこと言ってるところもあったりして(笑)。その一部を切り取って使った感じです。
──それも含めて、僕はこのアルバムにすごく“希望”を感じたんです。それはもちろん取って付けたような希望ということではなくて、「希望があるから絶望がある」ということをちゃんと知ってる人の作品だなという感じがして。たぶん、「絶望の面だけを恣意的に切り取ったら嘘になる」という意識があるんじゃないかと思ったんですが……。
そこまで意識的にではないですけど、“絶望の中に鈍く光る何か”みたいなものは取り入れようとしていたと思います。それでいうと、逆の意味っすけどボーナストラックとして収録した「Good end」がまさにそうで。「新しい俺を見つけるんだよ」と街を出て行くんすけど、最後は電車に轢かれていなくなっちゃうみたいな……まあバッドエンドっすよね。実際、バッドエンドのアルバムにしようと思ってたんで。生きてるうちにそんないい終わり方することなんて、ほぼないじゃないですか。
──“終わり”をどこに設定するかにもよりますしね。そこに「Good end」というタイトルをつけているのもまた皮肉が利いているというか、「グッドかバッドかはどこで決まるのか」という問いかけにもなっている。
しかもこれ、ホントは9曲目に入れる予定だったんです。「yumenohakaba」をボーナストラックにして最後に置こうかと思ってたんすけど、あの明るめの曲で希望に向かって終わるのはつまんないなと思っちゃって。
──その判断も新人離れしていますよね。なんでその若さでそんなに世の中が見えているんだろう?と不思議になるくらいです。
何も考えてないですよ。普通のことを言ってるだけだし、それが俺に見えている世界だったってだけで。「これこれこういう意図があってこのアルバムができました」というよりかは、本当に漠然と自分の環境とか感情とかをとりあえず全部書いていったらこうなった、みたいな。
──今のエンタメの主流とは真逆のやり方ってことですよね。戦略性ゼロだし(笑)。
確かに(笑)。
──おそらく、「こういうことを書いたらこの層に刺さるだろう」みたいな作り方を絶対にしたくない人ってことですよね。
ヘタに作戦立ててっていうよりかは本当に、“刹那の詰め合わせ”みたいなのがいいかなって感じっす。
プロフィール
6LUE(ブルー)
2004年生まれ、22歳のラッパー兼ソングライター。リル・ピープから大きな影響を受け、エモーショナルで痛みを伴うサウンドを自身の表現としている。14歳の頃から躁鬱病を抱え、18歳の夏に自殺未遂を経験。その出来事をきっかけに、本格的に楽曲制作を開始した。鬱、孤独、寂しさ、自己否定など心の奥底に溜まった暗い感情を、叫ぶようなリリックとメロディに乗せて吐き出し、生きづらさの中でもがくさまをエモラップに昇華させている。2025年10月に1stシングル「俺たちがまだ死ねないのは」、12月に2ndシングル「kuroyuri」、2026年1月に3rdシングル「yodaka」をそれぞれ配信。4月に1stアルバム「For 21st century broken boys」を配信リリースした。


