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omeme tenten「POLARIS」ジャケ写

omeme tenten POLARIS

女性ボーカルの3人組ロックバンド、1stフルアルバムのリード曲で歌う「信じること」と「距離」

文 / 天野史彬

2022年に結成された、東京を拠点に活動する3ピースバンドomeme tenten。そのエネルギッシュなバンドサウンドは、ギターボーカルの灯(アカリ)が影響を受けてきたというandymoriやスーパーカー(の特に初期)などを例に出して書けば伝わりやすいのかもしれない。しかし、それだけで終わらせたくないと思わせるのは、「この人にしか歌えない」と感じる歌の素晴らしさがこのomeme tentenというバンドにはあり、そしてその歌の素晴らしさを信じて奏でていることが強く伝わってくるバンドのアンサンブルが、これまた頼もしくて、清々しくて、魅力的だからだ。灯の歌には「おーい! 私はここにいます!」と遠くに向かって手を振っているようなまっすぐさと、おおらかさと、存在の強さがある。「今、自分はここにいる」と宣言するのはどこか寂しくて滑稽な行為かもしれないが、やはりすごく尊いことなのだ。灯の歌には、そう思っている人が全身全霊で歌っているんだ、と感じさせる力がある。

この「POLARIS」はバンドにとって初の全国流通盤となる1stフルアルバム「omeme tenten」のリード曲。歌詞の中には「」(かぎかっこ)でくくられて表現されている部分もあり、もしこの曲に主人公がいるのなら、その人は胸の中でとても大切な対話をしているのだろう。この曲は「信じること」と「距離」について歌っている。それは人と人との距離感がおかしくなってしまったり、流されるように何かを盲信してしまうことの恐ろしさが垣間見えたりする今の時代を生きる私たちにとって、重要なテーマに思える。信じることと支配されることは違う。信じることと利用されることは違う。本当に何か信じることは、もっともっと孤独なことだ。「POLARIS」は、本当に何かを信じている人の姿、あるいは、信じたもののことを思い出そうとしている人の姿を歌っている。だからこの曲は孤独だけど守られている。1人で大切なものを抱き締めながら生きている人に、「大丈夫だよ」と伝える力を持っている。

omeme tenten「POLARIS」Music Video

omeme tenten「POLARIS」
2025年9月24日(水)配信開始 / murffin discs
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作詞・作曲:灯
編曲:omeme tenten

omeme tenten(オメメテンテン)

2022年4月、東京にて結成された女性ボーカルの3人組ロックバンド。2024年4月に1stミニアルバム「The Gourd Ailand」をmurffin discsから配信と店舗限定CDでリリースし、デビューを果たした。同年4月に野外フェス「JAPAN JAM 2024」に出演。その後、東京・shibuya eggmanや東京・WWWでツアーファイナルとして単独公演を成功させた。2025年9月に初のフルアルバム「omeme tenten」をリリース。本作を携えて11月に全国ツアー「omeme tenten 1st Full Album『omeme tenten』リリースツアー “431光年”」を開催する。