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小山雄大「道南恋しや」ジャケ写

小山雄大 道南恋しや

21歳の新人歌手が放つ“マジックボイス”、王道の演歌サウンドがもたらす特有の喜び

文 / ナカニシキュウ

“全国民の孫”のキャッチフレーズを掲げて今年4月にキングレコードからデビューした21歳の新人歌手・小山雄大。デビュー曲「道南恋しや」は、そんな彼の生まれ育った北海道の雄大な自然を鮮やかに描き出しながら、繊細な郷愁を朗らかな歌謡サウンドに乗せて朗々と歌いあげる王道ド真ん中の演歌ナンバーだ。ミュージックビデオがYouTubeで公開されてから約半年で60万回再生を突破するなど、演歌としては異例のバズを叩き出している。

楽曲の聴きどころは、言うまでもなく“マジックボイス”とも称される小山のイノセントかつスキルフルな歌声だ。歌い出しの「風が」のロングトーンは特に出色で、ここだけで彼のボーカリストとしてのポテンシャルを余すところなく味わい尽くしてしまえると言っても過言ではないだろう。繊細かつ抑制の利いたコブシ表現の精密なコントロールはもちろんのこと、歌い出しとしてはかなり高い音程にもかかわらず難なくピッチを安定させてのける確かな力量、遠く離れた故郷へと思いを馳せるスケール感の表現など、たった3音とは思えないほどの情報量が歌声に詰まっている。

また、イントロからして演歌 / 歌謡曲カテゴリーでしか味わうことのできない特有の喜びに満ちあふれていることも特記しておきたい。冒頭で誇らしげに打ち鳴らされるビブラスラップと歯切れのいいストリングスに導かれ、ドラム、ベース、マンドリン、フルート、クラリネットなど大量の生楽器が次々に容赦なく投入されていく。そんなレガシーサウンドの濁流に否応なく飲まれていくような感覚は、シンセ中心のDTMサウンドやソリッドなギターサウンドに偏重しがちな人も多いと思われる音楽ナタリーの読者諸氏にとってはくらくらするほど異次元の体験となるはずだ。ぜひ一度、冒頭の30秒間だけでも真剣に耳を傾けてみてほしい。きっと新たな扉が開かれることだろう。

小山雄大「道南恋しや」Music Video(Full Ver.)

小山雄大「道南恋しや」
2024年4月10日(水)配信開始 / KING RECORDS
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作詞:さわだすずこ
作曲:弦哲也
編曲:猪股義周

小山雄大「道南恋しや」
2024年4月10日(水)発売 / キングレコード
[CD] 税込1500円 / KICM-31134

小山雄大(コヤマユウダイ)

小山雄大

北海道札幌市出身。2003年3月5日生まれの21歳。2歳の頃より、テレビで流れる氷川きよしの曲を聴いて歌い始める。4歳から本格的に民謡を習い、小学2年生のときに三味線も弾き始めた。道南口説節全国大会や全大阪みんようジュニアフェスティバル全国大会にて第二部、第三部で優勝するなど、子供の頃からさまざまな賞を受賞。2016年にNHK「NHKのど自慢」チャンピオン大会で氷川きよし「獅子」を歌ってグランドチャンピオンに輝く。2018年に上京し作曲家・弦哲也のもとでレッスンを開始。2024年にキングレコードより「道南恋しや」でデビューを果たした。芸名の由来は「事務所先輩の三山ひろしと比べて、今は小さな山だがいつか故郷の北海道のように雄大で大きな山になってほしい」という思いから。