2015年「終物語」、2016年「暦物語」「傷物語」
“CV:花澤香菜”の絶対正義感
──2015年の「終物語」は忍野扇と老倉育がメインのストーリーで、徐々に暦の高校生活にも終わりが見え始めます。そして2016年にはアプリで配信されたショートアニメ「暦物語」に加え、映画「傷物語」もいよいよ公開となりました。
喜多村 「暦物語」では、兄ちゃんと妹での何気ない会話を、とつとつと長めに演じるシーンがあって。いつもの勢いある演技とはちょっと違って、ゆかちもいなかったから、ちょっと不安になっちゃったりして(笑)。ここでもやっぱり「火憐だぜ」って1回言ってから臨んだりしてました。「傷物語」は、役者さんたちのクリエイティブな演技が、すごく勉強になりましたね。やっぱり(キスショット役の)坂本真綾さんすごいな……って。
井口 圧倒的だよね。
喜多村 圧倒的な安定感と、西尾維新先生の言葉を正当化する……。
井口 説得力がすごいよね。
──さらに2016年には「歌物語 -〈物語〉シリーズ主題歌集-」というキャラクターソングアルバムもリリースされ、オリコン週間アルバムランキングで1位を獲得しました。シリーズを彩ってきたいろんな楽曲の中で、おふたりが一番好きな曲を挙げるとすれば?
井口 私はやっぱり自分の曲「白金ディスコ」が好き。
喜多村 撫子、撫子、撫子。
井口 (笑)。
喜多村 私は撫子の「恋愛サーキュレーション」です。花澤香菜ちゃん大好きなので(笑)。自分のキャラクターとは反対のタイプで、オシャレなのに、〈物語〉シリーズとしての精度が高い曲というか。
井口 みんな初めて聴いたとき、腰抜けただろうな。「かかか、かわいいー!!」って(笑)。
喜多村 “CV:花澤香菜”の絶対正義感。「白金ディスコ」も好きだよ!
井口 でも本当にどの曲も素敵なので、そりゃオリコン1位も獲るよね!って思います。
──そして2017年、「終物語」完結編でついに暦が高校を卒業し、物語にひとつの区切りがつきました。
喜多村 先生、終わらせようとしてたんですね。
井口 「終わらせようとしてたけど、終わりませんでした」って言ってた(笑)。あと「周りが終わらせてくれない」って。
喜多村 打ち上げのとき、「死ぬまで書け」っていう圧がすごかったよね(笑)。
井口 その中でのひとまずの完結編ということで、ファイヤーシスターズも解散したり、ずっと高校生ではいない、ずっとここにいるわけじゃないっていうのが〈物語〉シリーズらしいなと思いました。
──現場でも特に「終わるね」っていうムードはなかったんですか?
井口 なかったよね。
喜多村 先生は終わらせるつもりだったけど、「いやいや終わらせるわけないでしょ、このいっぱいいる人たち(スタッフ)が」って(笑)。“短冊芸”って呼ばれている、毎年七夕に秋葉原に笹を設置して、〈物語〉シリーズのキャラクターや私たちキャスト、ファンの方が短冊を飾るという企画があるんですけど、そこでも「続いてほしい」ってたくさんの人が書いてくれたり、色あせない活気、皆さんからもらえる真摯な思いを、スタッフさんもみんな感じていて。「先生、書ける能力持ってるんだから書こうよ!」って思っちゃうんですよね(笑)。
「〈物語〉だよ! 全員集合!」が実現したら
──というわけで、ここまで簡単にですが〈物語〉シリーズを振り返ってきました。こうやって見ると、約10年かけて、作中の時間ってだいたい1年しか経ってないんですよね。これだけの長い時間、同じキャラクターを演じていく苦労はなかったのでしょうか?
井口 もうそんなにないよね。
喜多村 アフレコがちょっと空くときはありましたけど、「終物語」の後編あたりはもう、なんの迷いもなくできた気がする。
──もう自分に染みついている?
喜多村 というよりは、最近もアプリの「〈物語〉シリーズ ぷくぷく」ができたり、なにかしら演じ続ける機会があったので。いろんなところでコラボをさせていただいたりもしましたし。
井口 たぶん、自分が今の年齢でオーディションを受けたら、月火はやれないだろうと思います。なのでそういうキャラクターを今も演じられるというのは、すごくうれしいことですね。
──これからまたさらに10年演じる可能性もありますからね。ちなみに、一番印象に残った出来事を何かあげるとしたら?
井口 最初にお話ししたニコファーレのイベントですね。当時も今も、メインキャストが全員揃ったことってアフレコでもなかったので。すごい面々が揃って、「こんな戦士たちと一緒にアフレコできてるんだ」って改めてゾクゾクしたのが、ニコファーレの発表会でした。そこからキャストも増えているので、今のメンバーが全員揃って、「〈物語〉だよ! 全員集合!」みたいなことをやったら、みんな腰抜かしちゃうだろうなって思います。私もちゃんと立ってられるかなって思うぐらい。あと、ニコファーレのイベントに堀江(由衣)さんが翼に合わせて三つ編みで来たら、「偽物語」発表のタイミングで(堀江が演じる)翼が髪を切っていて「あああ」ってなってたのも印象的です(笑)。
喜多村 私は最近なんですけど、アプリ「〈物語〉シリーズ ぷくぷく」のテーマソングを、歴代のヒロイン全員で歌っているんですよ。
井口 ついに全員で歌ったね。しかも暦に対する思いを。
喜多村 そうそう、全員思いを向ける相手が一緒。レコーディングはそれぞれで録ったんですけど、やっぱり個々のキャラクターにそれぞれの色があって、さらにそれをまとめられる楽曲を作れるってこともすごいし、そうやってまだまだいろんなとこで、ボーナスをもらっている感じがうれしいですね。
──では最後に、間もなく公開になる「続・終物語」について、ファイヤーシスターズ的にはどんな作品になっているでしょうか。
喜多村 面白いことになってます。ネタバレになっちゃうから説明が難しくて……。
井口 難しい! 新しい切り口でファイヤーシスターズを楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。もちろん「続・終物語」から観ても贅沢な楽しみ方ができると思うんですけど、ここまで観続けてくれた人にとっては、本当にスペシャルボーナスみたいな感じです。
喜多村 「うわあ、きたきたきた!」みたいな感覚になってくれるんじゃないかな、と想像してます。お楽しみに。
井口 劇場で観るのがふさわしい作品だと思うし、「続・終物語」ということで、ひと区切りの作品ではありますから、最後まで心おきなく楽しんでいただければ。
- 「続・終物語」
- 全国劇場にてイベント上映中
- あらすじ
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高校生でも大学生でもない、そんな時期に阿良々木暦が体験した、終わりの、続きの物語。
高校の卒業式の翌朝、顔を洗おうと洗面台の鏡に向かい合った暦は、そこに映った自分自身に見つめられている感覚に陥る。
思わず鏡に手を触れると、そのまま指先が沈み込んでいき……。気がついたときには、暦はあらゆることが反転した鏡の世界に迷い込んでしまっていた。
- スタッフ
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原作:西尾維新(「続・終物語」講談社BOX)
キャラクター原案:VOFAN
監督:新房昭之
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
アニメーション制作:シャフト
- キャスト
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阿良々木暦:神谷浩史
戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和
八九寺真宵:加藤英美里
神原駿河:沢城みゆき
千石撫子:花澤香菜
羽川翼:堀江由衣
阿良々木火憐:喜多村英梨
阿良々木月火:井口裕香
斧乃木余接:早見沙織
老倉育:井上麻里奈
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
- 喜多村英梨(キタムラエリ)
- 東京都出身、8月16日生まれ。声優・ボーカリストとして活躍。主な出演作に「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズ(美樹さやか役)、「フレッシュプリキュア!」(蒼乃美希 / キュアベリー役)、タイムボカン24(ビマージョ役)、「立花館To Lieあんぐる」(三井そのあ役)、「ガイコツ書店員 本田さん」(ホウタイ役)など。
- 井口裕香(イグチユカ)
- 1988年7月11日生まれ。2003年にTVアニメ「デ・ジ・キャラットにょ」のうさだあかり役で声優としてデビュー。2013年にはソロアーティストとしてもデビューを果たす。主な出演作に「とある魔術の禁書目録」シリーズ(インデックス役)、「ヤマノススメ」シリーズ(雪村あおい役)、「宇宙よりも遠い場所」(三宅日向役)、「ゴブリンスレイヤー」(牛飼娘役)など。