クライマックス目前!ヨハネ役・小林愛香とライラプス役・日笠陽子が振り返る「幻日のヨハネ」 (2/3)

第12話は……小林、ギリでした

──第9話から第12話までは、ヨハネとライラプスにフォーカスしたお話が展開されました。寂しさが込み上げてくるようなストーリーでしたが、演じていていかがでしたか?

小林 ……私は、本当に第12話がやってくるのが嫌すぎて。

日笠 嫌だったの?(笑)

小林 だいたいのストーリー展開はそうなるだろうなと予想していたんですけど、いざ台本を読んで、コンテを見て。練習してみたら……もう、悲しすぎて……(目が赤くなりはじめる)。

日笠 ……もう泣いてる?(立ち上がってティッシュ箱を取り、サッと差し出す)

小林 泣いてないです……! ふう。もう、練習の時点で涙も鼻水もじゅるじゅるで……「私、これアフレコ耐えられる?」ってくらいすべての水が出たんですけど、でも耐えられる自分じゃなきゃいけないと思って、何度も何度も想像して、訓練してから臨みました。……小林、ギリでしたね。ヨハネが成長することはうれしいんだけど、ライラプスと話せなくなるのは心細いな、っていう思いが大きかったです。

第12話より。

第12話より。

第12話より。

第12話より。

日笠 それだけライラプスを思ってくれたということがうれしいし、温かい気持ちになりますね。ライラプスは、やっぱりちょっと冷静というか。なのでアフレコでは私も同じような気持ちでいました。心が動いているのであれば、愛香ちゃんも心のままに演じてほしいし、ヨハネにその通りに生きてもらいたい。私はただ支えるよ、という感覚でした。ライラプスのほうはね、ある意味ずっと、お別れを覚悟しながら過ごしていた部分があるので。

──ライラプスは冒頭からどこか切なさを帯びていましたよね。全部わかっていたんだろうな……と。

日笠 そうですね。小さい頃の約束を覚えてるのは、ライラプスだけだったし……(横を見やる)。

小林 あれ?(笑)

日笠 ヨハネは忘れてトカイに行っちゃったからなあ!(笑) ヨハネがトカイに行っている期間のことは描かれてないですけど、その間のライラプスの気持ちを想像するだけでもちょっと切なくなるんですよね。ヨハネがトカイから戻ってきたのはうれしかったけど、ある意味お別れの始まりが第1話だったので。

小林 うう……。

日笠 みんなの心の中にライラプスはいるの。

小林 嫌だー!

小林愛香
小林愛香

小林愛香

──第12話を観たばかりでこの記事を読んでいる方は、まさに今の小林さんと同じ気持ちですよね。改めて全編を振り返ると、ヨハネの成長が大きな軸になっている物語だったのだなと思います。

日笠 成長する=会話ができない未来が来ることはライラプスもわかっていたので、うれしくもあり、寂しくもあり。でもどこかに彼女のエゴみたいな、「まだ成長しないで」という思いもあったように思います。お姉さんというより、親に近いというか。世の中の親御さんがお子さんに対して抱く「ずっと赤ちゃんでいて……」というような想いを、ライラプスはヨハネに持っていた気がします。

──この作品を通して成長したヨハネに、今のおふたりならなんと声を掛けたいですか?

小林 ええ、なんだろう。難しい……。

日笠 「もうちょっと一緒にいたかった」かな。ライラプス側からは以上です。

日笠陽子
日笠陽子

日笠陽子

小林 えーん! うーん……ヨハネには、とにかくこれからもみんなと元気で生きてほしいです。「止まってる時間なんてなかったんだな」と思えたので。掛けたい言葉は、ないですね。何も掛けなくても、ヨハネの力で歩んでいってほしい。いけると思う!

日笠 うんうん、絶対そう。

小林 さっき日笠さんがおっしゃっていたように、ヨハネが成長して偉いという気持ちと寂しい気持ち、私の中にも両方があって。毎回演じながら、私も親目線になってたんですよ。ヨハネが娘みたいに思えるというか。放送が終わったら、ひと区切りしてしまうのが寂しいです。

9人が歌って踊ってる姿は、やっぱり感動的

──劇中に出てくるヌマヅのスポットが現実の沼津とリンクしていたり、観返すと「おっ」と気づくような小ネタも多い作品だと思います。視聴者の方に、いくつか教えていただけますか?

小林 アフレコのときは完成した映像ではないので、実は私たちも皆さんと同じタイミングで観ることがほとんどで。逆に皆さんのリアルタイム実況で知ることも多いんです。第6話でヨハネ、マリ、リコの人見知り3人が絆を深めるシーンがあるんですけど、台本にはただ「橋」とだけ書かれていて。放送日にリアルタイムで観ていたら、視聴者の皆さんが「あゆみ橋だ!」って書いてたんですね。あゆみ橋というのは、沼津に実在する橋で。そこのセリフでヨハネが「きっと歩み寄れる」って言ってるんです。「あゆみ橋で歩み寄る」、なんてアツいんだ!と。そういうことがけっこうあるんです。皆さんと一緒に観ることで「そうだったんだ!」って気づかされてばかりです。

第6話より、あゆみ橋のシーン。

第6話より、あゆみ橋のシーン。

日笠 ファンの方、本当によく見てるよね。ライラプスの声がヨハネにしか聞こえてないっていうことも、すぐに気づかれてたよね。

小林 ああ、そうでしたね!(笑)

日笠 絶対にバレないだろうと思ってたんですよ。なんなら最終話でみんなが気づくくらいかな?って。そしたら第1話からあっさり気づかれてたから、ちょっと焦ってました(笑)。

小林 よく見るとライラプスの口の動きは人間の言葉に合ってなくて、動物の鳴き声に合わせた動きになってるんですよね、第1話からずっと。

日笠 アフレコのときも、監督と「ここの『アドリブで呼びかける』というのは、『ワッフ』ですか? それとも『ヨハネ!』ですか?」「ここはヨハネしかいないからヨハネにしよう!」とか綿密にやりとりして、細心の注意を払ってたのに!

小林 たぶんファンの皆さんのほうが詳しいと思います(笑)。あと1つ小ネタを挙げると、全編を通して花が意識的に映っているんですよ。ぜひ花言葉を調べて注目してほしいですね。第1話には沼津市の“花”のハマユウが映っているし、第9話には勿忘草が登場したり。勿忘草はライラプスの影の中にわざわざ入っていたりするんですよ。そういう隠されたメッセージが随所にあるので、何回も観返すうちに「あれ、これって?」って気づきがあるんじゃないかなと思います。

──ヨハネと「ラブライブ!サンシャイン!!」の津島善子は少し性格が違いますが、ほかのメンバーも現実世界とは少しずつ違いますよね。新鮮だったキャラクターや、好きなキャラクターはいますか?

小林 新鮮さで言うと、やっぱりマリちゃん。「ラブライブ!サンシャイン!!」ではハイテンションなお嬢様といった印象があったけど、「幻日のヨハネ」の世界では人見知りだし、外に出ることを怖がってるし、まったく違うキャラクターで。でもふとした瞬間、「マリ」って呼ばれたときに見せる笑顔とかがすごくかわいらしくて。

第5話より、ヨハネとマリ。

第5話より、ヨハネとマリ。

日笠 私もマリちゃんが印象的でした。ツノをコンプレックスに思っていたり、人目が気になって外に出られなかったり……すごく共感するなって。誰しもコンプレックスは持っていて、でもそれは意外と自分の思い込みとか、自分の中で作り上げてしまっていたものだったりするんですよね。自分の力だけじゃなく、友達が道を示してくれたから殻を破れたという。マリちゃんのエピソードはとても好きですね。

小林 私は、マリが一瞬「シャイニー!」ってお馴染みの言葉をしゃべったとき、「あ、来た!」ってなんだかすごくうれしかったです(笑)。みんなと仲良くなって、少し素の部分が出せるようになってきたのかな、よかったね、って。また親目線になっちゃうんですけど。

日笠 うんうん。でもやっぱり9人が揃ったときは感動しましたね。第8話で9人が揃ってステージに立ったときはもう、「ラブライブ!や!」「Aqoursや!」って。Aqoursじゃないんですけど(笑)。「サンシャイン!!」から応援している方は、もう泣かずにはいられなかったんじゃないですかね。

小林 私も泣きました……。9人で歌って踊ってる姿が、すごく感動的だった。とはいえ第1話であれをやっていたら、抱く想いもちょっと違ったのかなと思うんですよ。ヨハネが1人ひとりと絆を結んでいって、9人で立てたステージだからこそよかったんだな、って。オンエアを皆さんと一緒に観ながら思っていました。

日笠 本当にそうだよね。

──「ラブライブ!サンシャイン!!」をリアルタイムで観ていなかった方もいると思うので、そうした方も9人のステージを今観られるのはうれしかったでしょうね。

小林 そうですね。「ラブライブ!サンシャイン!!」が放送されていたのは6年前なので、TVアニメシリーズや劇場版アニメが終わってから、コロナ禍の間に私たちを新たに知ってくれた方々も、ありがたいことにいらっしゃって。そういう方は「アニメをリアルタイムで一緒に追えることがすごくうれしい」って言ってくださるんですね。あと、「幻日のヨハネ」で初めて私たちに出会ってくれた方がいることも伝わってきて、うれしい気持ちになります。私たちがコロナ禍でもがいてやってきたことは無駄じゃなかったんだなと感じます。

第8話より。

第8話より。

劇場版、やってほしいです!

──寂しさでいっぱいになった第12話に続く第13話ではどのような話が待っているのか。ストーリーの行方を待ちわびている方々へ向けて、最後に、一言ずつお願いできますでしょうか。

小林 待ち遠しい時間すら楽しんでほしいなと思いつつ……どんな終わり方であれ、全13話を通して、みんなの心に残るものがある、温かい何かが芽生える作品だと思います。これまで「ラブライブ!」を「アイドルアニメだから」と敬遠していた方にも届く作品になったんじゃないかなと。これまでAqoursが歩んできて、アニメが一段落していた時間とかも含めてすべてがあったからこそ、今があるんだなって。皆さんもいろんな想いで第13話を待ってくださっていると思いますが、楽しみにしてほしいですね。

日笠 第13話は、もしかして私の出番はないかも?と思っていたんですが……姿はあれど声を発していない可能性がありますけども……いるかいないか、あなたの目で確かめてください! 本当にいい終わりというか、希望があるなと思います。

小林 ああ、寂しい……。(スタッフのほうを見ながら)劇場版、やってほしいです!

日笠 やりたいね! 劇場版ってなったら、また何かと戦わないとダメだよね。新たな“異変”が宇宙からやってくるとか……。

小林 宇宙へ飛ばしましょう!(笑)

日笠 私は沼津のいいところをさらに発見したいなと思っていて。この間ロケで沼津に行ったときに、「あのシーンのこの場所、本当にあるんだ!」って感動したんですよ。もし劇場版があったら、皆さんがまた沼津のいいところを発見できるような、魅力をアピールできる劇場版にしてほしいな。でもとりあえずは、ライブ(12月に開催される「幻日のヨハネ」のライブイベント)を楽しみにしています!

小林 わーうれしい。お待ちしています!

小林愛香、日笠陽子。

小林愛香、日笠陽子。

プロフィール

小林愛香(コバヤシアイカ)

10月23日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に「ラブライブ!サンシャイン!!」(津島善子役)、「さよなら私のクラマー」(天馬夕役)など。「ラブライブ!サンシャイン!!」の劇中グループ、Aqoursの一員としても活動する。

日笠陽子(ヒカサヨウコ)

7月16日生まれ、神奈川県出身。主な出演作に「けいおん!」(秋山澪役)、「妖狐×僕SS」(雪小路野ばら役)、「戦姫絶唱シンフォギア」(マリア・カデンツァヴナ・イヴ役)、「呪術廻戦」(庵歌姫役)、「SHAMAN KING」(麻倉葉役)など。