種村有菜が語る映画「さよならの朝に約束の花をかざろう」|画面の隅まで美しいアニメーションに浸りながら、マキアとエリアルが辿りつくラストシーンを見届けて ありなっち描き下ろしイラストも!

キャラクターの名前は子音から決める

──ここからはネタバレありでお話を伺っていこうと思います。種村さんの感想ツイートの話に戻るのですが、「最後にはいくつもの人生を終えたような、そんな気持ちになりました」という一文にはすごく共感しました。

そうですね。イオルフ以外の人間たちが少しずつ歳を取っていくので、みんなの人生が垣間見える印象でした。

──お気に入りだとおっしゃっていたレイリアとクリムは、どちらも壮絶な展開を迎えますよね。

娘・メドメルを産むも、一度も会うことが許されず、孤独を募らせていくレイリア。

レイリアは一番激動の人生を送りますよね。いきなり連れ去られて、好きでもない相手と結婚させられて、でも助けに来てくれたクリムの手を拒むことしかできなくなってしまう。娘のメドメルとも別れる選択をするのは少し驚きましたけど、あのシーンがあったからこそレイリアがさらに好きになったし、そういった驚きもあって、レイリアのセリフはどれも印象に残りました。クリムは……ちょっとかわいそうでしたね。

──クリムはマキアやレイリアが変わっていくことを、最後まで受け入れられませんでした。

クリムも自分の気持ちを優先しちゃっているので、もうちょっとレイリアの気持ちを考えてあげられたら違ったのかなと思いますけど……でも受け入れられないよね、そりゃそうだよねって思ってました。

──レイリアを助けたいというクリムの思い自体は、間違ったものではないですからね。

救い出そうとしたレイリアに拒まれ、ついにクリムは心中をはかろうとする。

1人で思い詰めてしまって、どんどん危うい感じになっていきましたよね。もう少し真っ当な人だと思っていたので、第一印象とは全然違ったんですが、でも最後まで好きでしたね。

──共感するようなキャラクターはいましたか?

共感という意味だと、イゾルかもしれません。かわいそうな王女様になってしまったレイリアを、私も陰ながら支えてあげたいって思うかも。あとバロウは、「こんなのみんな好きになる!」って友達みんなで言ってました。

メザーテの軍人・イゾル。 イオルフと人間のハーフであるバロウ。

──バロウは本当にずるいですよね(笑)。時々出てきて美味しいところを持っていくというか。

最後に出てくるところもずるいですよね。「(マキアと)結構仲良くしてるんじゃん!」って。私の推しはクリムですけど、ラングもマキアを陰ながら支えていて、報われなさ含めて魅力的ですよね。

──ちょっと話は逸れますが、今作はキャラクターの名前はもちろん、「イオルフ」「レナト」といった独自の名称がいろいろと出てきますよね。種村さんはネーミングってどのように考えられていますか?

キャラクターの名前については、私は先に絵を描いて、「このキャラクターはなんの音で一番呼ばれてるんだろう?」っていうのを考えます。ハ行なのか、サ行なのか。やわらかい音で呼ばれているのか、きつめの音で呼ばれているのか。人って、どんな言葉より自分の名前を一番聞いてきているじゃないですか。だったらその音からは、絶対に影響を受けているはずなんですよね。

──なるほど……! 名前の響きが、人の性格に影響を与えると。

そうですね。なのでキャラクターの絵を見ながら、まず子音を決めて、そのあと母音を考えます。ごくまれに名前を先に決めることもあるんですけど、いかにもその名前で呼ばれてるってキャラにします。マンガってキャラクターがいっぱい出てくるので、たとえば“めろこ”(「満月をさがして」のキャラクター)だと、「うわー、この子“めろこ”っぽい!」って思ったら、すぐ覚えてもらえますよね。

──確かに、なんとなくめろこは“めろこ”っぽいと思っていました。

なので、名前の響きとキャラクターの見た目は通じるようにしています。「さよ朝」のキャラクターも、みんな名前が合っていますよね。イオルフの民は濁音がないきれいな響きで、人間のキャラには濁音が入っていて。そこで区別をつけてるのかなと思いました。

出会いと別れが人生でもある

──キャラクターそれぞれの人生が描かれる中で、本作の軸となるのはやはりマキアとエリアルの関係です。マキアはエリアルと出会ったときから、エリアルが先に寿命を迎えることがわかっているわけですが、もし自分がマキアの立場だったらエリアルを拾うと思いますか?

マキアとエリアルの出会いのシーン。

それはもちろん拾いますね。子供が泣いていたら放っておけないです。それは女性としての本能だと思いますし、マキアがエリアルを拾ったのも、そういう部分はあったんじゃないでしょうか。私自身も子供が好きで、友達やアシスタントさんの子供ともよく遊ぶので、ちょっと重ねたりしましたね。エリアルみたいな生意気な子はいないですけど。

──確かに成長したエリアルを見ていると、「昔はあんなにかわいかったのに……」という気持ちになることもありました(笑)。

思春期を迎え、エリアルとマキアの関係に変化が……。

エリアルは、割と思春期の時期がクローズアップして描かれるじゃないですか。もちろんそこを描く作品だとも思うし、エリアルが独り立ちしようとしているからこそ反発しているのはわかるんですけど……「もうちょっとマキアちゃんに優しくしてあげて!」って思ってしまいました、マキアちゃんがかわいいので。でもディタちゃんと結ばれて、父親になったときには、「ああ、立派になったねえ」って。

──本当に、子供の成長を見守ったような気分ですね。では、マキアとエリアルが迎えたラストについてはいかがでしたか?

成長したエリアルはマキアの元を離れ、メザーテの軍人に。

とてもよかったです。“別れの一族”の物語とはいえ、人生の別れまで描くんだなって。あのラストがあったからこそ、「ああ、こういう話だったんだな」って自分の中で完結した気がしていて。115分しかないとは思えないくらい、どこも端折っている感じがなかったですし、本当に最後の最後まで描き切ってもらえたというか。

──確かに、観終わったときはエリアルを見送ったマキアのように、キャラクターたちの人生を見届け切ったな、という感覚がありました。

私、制作側が「(描かれなかった部分は)想像にお任せします」って言うのがあまり好きじゃなくて、それってちょっと逃げだと思ってるんですね。だから自分の作品では、読者に想像の余地を与えないくらい描き切ることにしてるんです。そういう意味でも今作は、エンドロールの後のイラストまで含めて、最後まで丁寧に描き切って、ちゃんと完結させているところがよかったですね。

──では最後に、今作はいくつもの人生が描かれるので、観る人によっていろいろなテーマが見出だせる作品でもあると思います。先生が本作のテーマを言葉にするなら、どんな言葉になりますか?

マキアとエリアル。

“出会いと別れ”ですね。全編通して、どのキャラクターも出会いと別れのシーンに重心を置いて、印象的に描かれているように感じました。もちろん“人生”も感じるのですが、やっぱりイオルフは“別れの一族”ですし、それに“出会いと別れ”が“人生”でもありますから。

ありなっちが「さよ朝」キャラを描き下ろし!

「さよならの朝に約束の花をかざろう」種村有菜描き下ろしイラスト
「さよならの朝に約束の花をかざろう」
2018年10月26日発売 / バンダイナムコアーツ
「さよならの朝に約束の花をかざろう」特装限定版 Blu-ray

特装限定版 [Blu-ray]
9504円 / BCXA-1371

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「さよならの朝に約束の花をかざろう」特装限定版 DVD

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8424円 / BCBA-4910

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「さよならの朝に約束の花をかざろう」通常版 Blu-ray

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5184円 / BCXA-1370

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「さよならの朝に約束の花をかざろう」通常版 DVD

通常版 [DVD]
4104円 / BCBA-4909

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特装限定版Blu-ray / DVD特典
  • 映画では描かれていないストーリーを岡田麿里が書き下ろした短編シナリオ
  • 制作現場の裏側、舞台挨拶の模様などを収録した制作メイキング映像(45分)
  • 映画の設計図・絵コンテを映像で見られるビデオコンテ(115分)
  • 紙上コメンタリーやスタッフ対談・キャストインタビューなどを収録した特製ブックレット(82P)
  • 縮刷版劇場パンフレット(36P)
  • キャラクターデザイン原案:吉田明彦描き下ろし三方背BOX
  • キャラクターデザイン・総作画監督:石井百合子描き下ろしインナージャケット
ストーリー

ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら、人里離れた土地で静かに暮らすイオルフの民。10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つ彼らは“別れの一族”と呼ばれ、生ける伝説とされていた。
仲間と共に穏やかな日々を送りながらも、両親がおらず、どこかで“ひとりぼっち”を感じていたイオルフの少女・マキア。しかしある夜、長寿の血を求めて大国・メザーテの軍がイオルフの里に攻め込んでくる。絶望と混乱の中、なんとか逃げ出したマキアが森で出会ったのは、親を亡くしたばかりの“ひとりぼっち”の赤ん坊だった。
少年へ成長していくエリアルと、時が経っても少女のままのマキア。変化する時代の中で、2人の絆は色合いを変えていく。

スタッフ

監督・脚本:岡田麿里

副監督:篠原俊哉

キャラクター原案:吉田明彦

キャラクターデザイン・総作画監督:石井百合子

メインアニメーター:井上俊之

コア・ディレクター:平松禎史

美術監督:東地和生

美術設定・コンセプトデザイン:岡田有章

音楽:川井憲次

音響監督:若林和弘

アニメーション制作:P.A.WORKS

製作:バンダイビジュアル、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、ランティス、P.A.WORKS、Cygames

キャスト

マキア:石見舞菜香

エリアル:入野自由

レイリア:茅野愛衣

クリム:梶裕貴

ラシーヌ:沢城みゆき

ラング:細谷佳正 

ミド:佐藤利奈

ディタ:日笠陽子

メドメル:久野美咲

イゾル:杉田智和

バロウ:平田広明

種村有菜(タネムラアリナ)
種村有菜
1996年、りぼんオリジナル6月号(集英社)に掲載された「2番目の恋のかたち」でデビュー。1997年にはりぼんにて「イ・オ・ン」を初連載し、その後「神風怪盗ジャンヌ」が大ヒットを記録する。同作や「満月をさがして」はTVアニメ化もされた。詩的かつ印象的なセリフまわしや、こだわりのある美しい絵は、日本のみならず海外でも人気が高い。2011年にりぼんとの専属契約を終了し、フリーに。近年ではアニメ化もされたスマートフォン向けアプリゲーム「アイドリッシュセブン」をはじめ、ゲームのキャラクター原案も手がける。現在はメロディ(白泉社)で「31☆アイドリーム」を連載中。