とにかく感謝される
──連載を始めて競技者の方からの反響はありましたか?
ファンレターは圧倒的に競技者の方が多いですね。「この競技を取り上げてもらえてうれしいです!」っていうのはほぼ間違いなく書かれています。恐れ多いと感じるほど、とにかく感謝されて、それだけこの競技が好きなんだなっていうのが伝わってきますよね。
──そういった反応は、連載前には予想していたことですか?
まったく考えてもいなかったです。ほかのスポーツだと興味本位で描かれることを喜ばしく思わない人もいると思うんですけど。細かな指摘や批判を受けたことがまったくなくて。取材に行っても皆さん本当に好意的でよくしてくれて、質問した以上のことを惜しみなくしゃべっていただけるんです。
──ゆるい空気の競技だからか、心優しい方が集まるのかもしれませんね。
否定的な指摘ももらったことがなくて。なるべく詳しく描いていきたいので、もし間違っているところがあるならぜひご指摘をいただきたいです。何も知識がないところから描き始めた作品ですし、競技者の皆さんの協力なしには、このマンガはあり得ないですね。
──ちなみに印象的なファンレターってあったりしましたか?
全国大会に出てくる秋田の妙ちゃんには実はモデルがいるんです。秋田の競技者の人から少し前にもらったファンレターに「私1人しか秋田の選手がいないんです」って書いてあって、それいいじゃん、って(笑)。
──そんな情報なかなか知りようがないですからね。まさに皆さんあっての作品ですね。
あとは、全国大会に行くような高校のコーチの方からもファンレターをいただきました。その方には、(全国大会が開かれる)筒賀に行ったときに実際にお会いすることができまして。そうやってすぐつながれるところも射撃界の魅力的なところだなと思いましたね。
現実のほうがよっぽどマンガっぽい
──先生の考えるライフル射撃競技の魅力を教えていただいてもいいでしょうか?
ライフル射撃競技では、“なろう系”小説みたいに異世界に転生しなくても、現実世界で「自分が主人公になって活躍できる夢が持てる」ということを読者の皆さんに伝えられたらと思っています。主人公のひかりみたいにほかの運動は苦手でも射撃は得意という人も聞きますしね。
──ひかりがオリンピックを目指すとか言うのもおかしくはないと。
普通だったら大風呂敷広げすぎみたいな印象ですけど、あり得なくはないんだよって。さっき話に出たリオ五輪の代表の方も、大学から競技を始めたそうなんです。ひかりたちでも小学生から競技をやってきている設定なのに、その方は大学からですから。現実のほうがよっぽどマンガっぽいですよね(笑)。
──今年の6月にはメインキャストのMachicoさん、熊田茜音さん、南早紀さん、八巻アンナさんからなるユニット・ライフリング4が、公益社団法人日本ライフル射撃協会公認の宣伝大使に就任されました(参照:「ライフル・イズ・ビューティフル」キャスト陣がライフル射撃協会の宣伝大使に)。
会場には足を運べなかったんですが、様子は後でYouTubeで観させていただきました。キャストの皆さんがかわいらしいのでそこでまず目を引きますよね。
──ライフリング4としては、6月から9月まで定期的にライブ活動もされていました。
今まで声優さんについてあまり知識はなかったんですけど、今はライフリング4推しで、確実に沼にハマりつつあります。アニメ化していただいたことで、そういった方面にも作品が広がってくれてうれしい限りですね。
──実際に会見の取材もさせていただいたのですが、協会の方々の競技普及に対する熱い思いが伝わってきました。
やっぱり、まだビームライフルって競技のことを知っている人の方が少ないと思うんですよ。アニメ化が決まったときのポスターにも「ビームライフルは実在した!?」って書かれてましたけど、知らない人からしたらまさにそんな反応だと思います。というか、ここまでビームライフルがいかにマイナーな競技かって話ばかりの気がするんですけど、大丈夫でしょうか……?
──そういえばそうですね……(笑)。でも、普段こういう競技に対してマイナーって言うのは、はばかられると思うんですけど、会見の際にも会長さん自らがマイナーな競技であることを認めていらっしゃったのが印象的でした。加えて、積極的に普及ができていなかったと反省まで口にしていて。
これまで、知名度が低いことをネタにしてお叱りを受けたことは一切ないんです。ファンレターの話でもしましたが、関係者の方も「取り上げてくれてありがとう、気付いてくれてありがとう」というスタンスで受け入れてくださって。自分も実際にビームライフルをやるようになって面白いと思うことが多々あったので、このマンガを読んでライフル射撃に興味を持ってもらったら最高ですし。アニメでライフル射撃について知っていただいた方に、マンガも読んでもらえるとうれしいですね。
ライフリング4 宣伝大使活動レポート
去る7月13日、14日に埼玉・朝霞市立総合体育館にて第45回全日本ライフル射撃競技選手権大会が開催された。全国からビームライフル、ビームピストルのトップ選手が集うこの大会に、TVアニメ「ライフル・イズ・ビューティフル」にメインキャストとして出演する小倉ひかり役のMachico、渋沢泉水役の熊田茜音、姪浜エリカ役の南早紀、五十嵐雪緒役の八巻アンナが、公益社団法人日本ライフル射撃協会の公認宣伝大使として駆けつけた。
東京2020大会でもライフル射撃競技の開催地になっている埼玉県朝霞市。大会初日の13日には南と八巻が登場し、男子のビームライフル、女子のビームピストルに熱い視線を送った。会場にもTVアニメ「ライフル・イズ・ビューティフル」のポスターが多数掲出され、歓迎ムードの中で行われた今大会。射撃競技の大会に初めて参加する2人がまず驚いていたのが、会場で流れる音楽だ。大会を盛り上げるべく洋楽などさまざまな楽曲がかけられる中、選手たちは淡々と高得点を出していく。
この日、2人は大会の決勝にあたる“ファイナル”を観戦。予選の上位8名によって行われるファイナルでは、各選手が規定の回数射撃を行い、合計点数の低い出場者から順に脱落していく。大会後に八巻が「本当に技術だけじゃない競技なんだなっていうことを改めて身をもって実感しました」と振り返るように、ファイナルではいかに最後まで集中力を切らさないかが重要だ。実際にビームライフルを体験した際には後半に点数が落ちてしまったという八巻は「選手の皆さんがまったく集中力を切らさず、むしろ最後に向かって点数が伸びていくくらいの勢いで撃っていたっていうのが本当にすごいなと思いました」と自身の経験と重ね選手に尊敬の念を送っていた。
南は「自分で撃っていても楽しいけど、観戦もこんなに楽しいんだなっていうのを今日改めて思いました」と、すっかり射撃競技の虜に。競技の終盤、3位から順位が決定していく場面で起こる恒例の手拍子にも最初はびっくりしたそうだが、観客と一緒に手拍子にもしっかりと参加。「緊張感を肌で感じた」という、どちらが勝ってもおかしくない試合を決める大事な場面では、手を合わせ祈るように結果を見守っていた。試合後に感想を求めると南は「0.1点、0.2点を争う緊張感が言葉には表せなくて……。この肌で感じた熱気を演技に活かして、『ライフル・イズ・ビューティフル』、そしてビームライフルを盛り上げられるようにがんばろうと思いました」と意気込みを話してくれた。
大会2日目の14日にはMachico、熊田がゲストとして参加。彼女らの演じるひかり、泉水らと同じく高校生の競技者もファイナルに多く残った女子のビームライフルでは、3位入賞者が決定する場面で2選手が同点で並ぶドラマチックな展開に。この日、大会初観戦だったMachicoと熊田も2選手に同じ点数が表示されると大きく驚きの表情を見せる。シュートオフと呼ばれる、サドンデス方式の1射によって、入賞者が決まると、緊張した様子で試合の行方を見守っていた2人の顔もほころんでいた。また続いて観戦した男子のビームピストルのファイナルでも、最後の1射で2選手が同点で並ぶ。この日2度目となるシュートオフが行われ、0.1点という僅差で優勝者が決まると、Machicoと熊田は興奮した様子で目を合わせた。
大会を終え2人にコメントを求めるとMachicoは「1点、1点も小数点以下の点数も本当に積み重ねで、こんなにドラマが生まれるんだっていうことを大会を通して感じることができました」と、1日に2度もシュートオフが行われるという貴重な体験への感動を語る。熊田が「宣伝大使として来ているのに、写せないような顔で楽しんじゃいました(笑)」と純粋に熱戦に見入ってしまったことを報告すると、Machicoも「ドキドキしっぱなしで、誰が勝つの誰が勝つの!ってずっと思ってました(笑)。選手の戦っている姿が本当にカッコよかったです」と興奮した様子で話してくれた。最後は、熊田が「この生で感じた感覚とか体感したものを声に乗せて、どんどんビームライフルを盛り上げていけるようにがんばります。本当に今日、観戦させていただけてありがたかったです」と感謝を伝え、アニメのアフレコに向けて決意を新たにしていた。