今回は「あしたのジョー」50周年記念作品ではなく、
独立した続編(森山)
──「NOMAD メガロボクス2」の4話まで拝見したのですが、ハードな世界観だった前作に輪をかけて、話がかなり暗いですよね。先ほど安元さんが「まさかあんなことになるとは」と言ってましたけど、ジョーは地下のリングに戻っているし、南部さんも死んでしまっているしで。
森山 続編をやるとなった結果、「前作でやらなかったことをやらなきゃ」とは思っていて。前作が主人公の輝かしいアーリーデイズを描いたので、今回は真逆の、負の部分、影の部分に焦点を当てようと。なので必然的に暗いスタートにはなりました。
──ボクシングという題材自体、引退後を描くと“栄光の光と影”みたいな感じにはなりがちかもしれませんね。
森山 ボクサーはあれだけ照明を浴びたリングの上で戦って、一度降りると……という一面もありますよね。
──ストーリーに移民問題が絡んでいることや街の風景、エンディングがスペイン語なことなども含めてメキシコっぽい雰囲気になって、前作からガラリと雰囲気が変わってますが、これはどういった狙いでしょうか。
森山 そこは自分の好みもありますし、前作は「あしたのジョー」の連載開始50周年記念という冠の存在がやっぱり大きかったんですが、今回は完全にそこから切り離して、独立した続編という考え方なので、より自分たちの興味がある社会のことや世界のことを物語に取り入れた結果、ああいう形になりました。
──なるほど。岩井さん、安元さんのおふたりは、「NOMAD メガロボクス2」の序盤を観た感想としては。
安元 前作がすごい大団円で、ジョーという人間を描くにあたって、思いつく限りで非の打ちどころのない幸せな終わり方をしたと思うんですよ。「NOMAD メガロボクス2」ではそれが一転してジョーが落ち切ったところから始まってるけど、なぜそうなったのかは描かれてない。そこのプロセスが序盤で少しずつ描かれているので、僕は演者ではありますけど、楽しんで観ています。
岩井 ジョーは前作でチャンピオンになってお金を手にしているから、ボクシングと関係ないところで何かしていてもいいと思うんですよね。だけど戦いに身を投じずにはいられなくて、また地下で戦っている。そういう性格のままなのはよかったなと思いました。そしてここからジョーのバイタリティでどうにかしてくれるさまを見せてもらえるのかなと思っています。
安元 実際のボクサーの方も、「結局ボクシングしかできない」とおっしゃる方もいるじゃないですか。そういう悲しみがあるというか……。
岩井 そうなんですよね。
──哀愁も含めてカッコいい、って無責任に思っちゃいますよね。
岩井 今の状況がジョーにとってはいいことかはわからないですが、視聴者としてはなんかそれにわくわくさせられるんですよね。
──岩井さんは、前作の登場人物の中で「あのキャラはどうなったんだろう」というキャラはいますか?
岩井 そうですね、ゆき子の兄の樹生かな。彼は前作で負傷したわけでもないですし、やろうと思えばメガロボクスを続けられていると思うから、どうなったんだろうなって。前作の最後のほう、勇利との会話の感じだと、ジョーによって何か気付かされたようだったので、そのあたりは楽しみですね。財力に頼らない道に進むことで、新しい成長を遂げていそうだなと。
──ジョーによって何かを気付かされて、ただの金持ちのお坊ちゃんじゃない感じになるみたいな。
安元 収録を終えているのでどうなるかわかっているんですけど、樹生は…………いいですよ。
岩井 へえー、そうなんですね。
安元 あんまり言えないけどちょっとだけネタバレすると、樹生なりの業を背負う感じになるというか。自分が経験した「負け」についていろいろ考えるようになっていて、面白いですよ。
──4話の時点ではまだ安元さんが演じる勇利は登場していませんが、どういったキャラクターか言える範囲で教えてください。
安元 いや、今まで通りですよ。でも勇利も結局、メガロボクスに戻ってきちゃったんですよね。
──リュウというチャンピオンの指導をしているという設定ですよね。勇利も「メガロボクスしかできない」みたいな部分があるんでしょうか。
安元 結局そういう部分がどこかにあったのかもしれない。そして指導者になって、今まで自分が現役だったから見えなかったものが見えたのかもしれないですよね。乞うご期待、でお願いします。
次のページ »
最後はバッドエンドでもいいと思っています(岩井)