1話を観て「描かなきゃ、描かなきゃいられない!」ってなった
──「時光代理人」は基本的に1、2話で各エピソードが完結します。各話にそれぞれゲストキャラが登場しますが、メインキャラクター3人以外でうごんばさんが描いてみたいキャラクターをは誰でしょう。
バスケの回から地震の回までにかけて出てきた依頼人の陳瀟(チェン・シャオ)と、彼が思いを寄せていた劉萌(リウ・モン)を描いてみたいですね。アニメを観ていて2人のやり取りが「甘酸っぺー」って思っちゃって。結局その後、陳瀟は別の人と結婚して子供もできてっていう描写がありましたけど、青春の1ページとして輝いていたあの一瞬は、絵にすると映えるんじゃないかなと思いますね。
──うごんばさんの作風とは違うのかもしれませんが、2話に出てきた夏と林貞の中年になった時代や、7話、8話に出てきた誘拐犯のおばちゃんも見てみたいです。
第7話「消えた息子」
人気のミルクティー店を切り盛りする李亮(リー・リャン)夫妻。店は繁盛し忙しく働く李亮夫妻だったが、息子の豆豆(ドウドウ)は遊びたい盛り。母親に遊んでくれとせがむ豆豆に父親の李亮はスマホを渡し、外のテーブルでおとなしく見ているようにうながす。しばらく時間が経ち、ふと外に目をやるとそこにいるはずの豆豆の姿はなく、スマホだけがテーブルに置かれていた。豆豆が失踪してから3年、なんの手がかりもなかったが、写真の中に入れる人がいるとの噂を聞きつけた李亮は時光写真館を訪れる。
誘拐犯のおばちゃんはすごく癖が強かったですし、それも面白いかもしれませんね。少し話が逸れちゃいますが、「時光代理人」って出てくるキャラクターの年齢層も幅広いですよね。誘拐犯のおばちゃんもそうですし、2話の夏と林貞は若いころから50歳くらいまでと幅広い時期がしっかりと描かれている。10代、20代しかスポットライトを当てないんじゃなくて、幅広い年齢やキャラクターのいろいろな年代のエピソードを取り入れて、うまく物語に昇華しているのはすごいなって思いますね。ここまで「うまい」とか「すごい」としか言えてないんですけど(笑)。
──うごんばさんは「時光代理人」以外にも、SNSにさまざまな作品のファンアートをアップされていますよね。ファンアートを描きたくなる作品やキャラクターに法則性はあったりするんでしょうか。
うーん……。考えてみたんですけど、法則性っていうのはうまく見つけられないですね。私がファンアートを描く理由って「この作品面白い」っていう自分の感情を表現する方法が絵を描くことしかないからで、「この気持ちを発散しないとどうしようもない」ってなったときに描くのがファンアートなんです。だから法則性とまでは言えないかもしれませんが、単純にキャラがカッコよかったり、かわいかったりで描くというよりは、自分を「この気持ちを発散しないと」って気持ちにさせてくれるくらいお話が面白かったり、ストーリーがしっかりしている作品のイラストを描いているというのはあるかもしれません。
──「時光代理人」はどの時点で「描かなければいけない」って思いましたか?
それはもう1話の時点ですね。面白すぎて「描かなきゃ、描かなきゃいられない!」って思ってトキとヒカルを描きました。
お互いにフォローしあえるトキとヒカルの関係
──ちなみにうごんばさんはイラストレーターとしての活動のほかに、「声優×二次元芸人」をテーマにしたプロジェクト「GETUP! GETLIVE!」のコミカライズも担当されていますよね。「GETUP! GETLIVE!」ではさまざまな男性コンビの関係を描いているのでお伺いしたいんですが、トキとヒカルの関係性について魅力的なのはどんなところでしょう。
トキって真っすぐですぐ行動する部分が魅力なんですが、それゆえに傷つきやすい弱さもあると思っていて。その弱さをうまくフォローしてあげられているのがヒカルだと感じているんです。今のことだけじゃなくて、冷静に次のことも考えるっていうヒカルの目があってこそ、トキの真っすぐさが生きてきますし、逆にトキの行動力によって物語が動くこともあるので、お互いにフォローしあっているところが魅力的ですね。
──「時光代理人」は新海誠監督作品にも参加されている丹治匠さんが美術監督を担当されています。キャラクター以外の背景や美術設定についてはどのように感じましたか。
「上手」って言ってしまうと上から目線みたいなんですけど(笑)、「時光代理人」の背景って太線で描かれていて緻密なタイプではないのに、背景としてしっかり馴染んでいてまずはそこがすごいですよね。あとこの作品は光の表現がすごくうまいと思っていて。トキとかヒカルがよく座っているソファーが置かれた部屋は光が差し込んでいるシーンが多いんですけど、その光の入れ方や色味がすごくいいんですよね。同じ部屋の月明かりが差し込むシーンもめちゃくちゃきれいで。自分も絵を描くときに真似してみようって思いました。
──最後にうごんばさんから見た「時光代理人」の最大の魅力をお伺いできればと思うのですが、どういった部分でしょうか?
ここまでにも語ってきた部分ではあるんですが、上げて落とす技術をはじめとしたお話の構成力ですね。もちろんキャラクターデザインがよかったり、作画や背景がきれいっていうのはあるんですけど、やっぱり単純にお話作りがうまいっていうのが一番の魅力。なので、まだ観たことがない人には、そういう構成のうまさが出ている1話を「とりあえず観てくれ」と伝えますね。実は友人にも「とにかく1話を観てほしい!」って薦めました。
──反応はいかがでしたか?
「めっちゃ面白い」「次も観る」って言ってくれました。まだ放送前なので詳しくは言えませんが、早く最終回まで観て私と同じ気持ちを体感してほしいです。
──この記事が公開されるのは最終回直前ですが、ラストまで観たご友人の感想が楽しみですね。
ぜひ観ているときの顔をビデオに撮って送ってほしいです(笑)。そして、私としては本国で制作が決定している2期を観るまではなにがあっても死ねないという気持ちですね!
プロフィール
うごんば
イラストレーター・マンガ家。SNS連動型キャラクターソングプロジェクト「Clock over ORQUESTA(クロックオーバーオルケスタ)」の“バトル開幕イラスト”や、にじさんじ所属のバーチャルライバー・卯月コウの誕生日ビジュアルなどを手がけているほか、“声優×二次元芸人プロジェクト”「GETUP! GETLIVE!(ゲラゲラ)」のコミカライズを担当した。
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