「鬼人幻燈抄」|八代拓も夢中! 江戸~平成を描く和風ファンタジー巨編 一気にのめり込む小説「鬼人幻燈抄」の魅力を解説

中西モトオの和風ファンタジー小説「鬼人幻燈抄(きじんげんとうしょう)」シリーズ。Web小説投稿サイトで中西が発表した同シリーズは、剣の達人である青年・甚太を主人公に人と鬼との関係を、江戸から平成までの長い年月に渡って描く物語だ。現在単行本7巻、文庫本1巻が刊行され、9月9日に文庫本第2巻と、里見有によるコミカライズ版第1巻が発売される。

コミックナタリーでは本日8月11日に小説版文庫本のテレビCMが放映されることから、ナレーションを担当した八代拓にインタビューを実施。「最後まで見届けたい!」と語るほど「鬼人幻燈抄」の世界にのめり込んだ八代に、物語の起点となる小説第1巻「葛野編 水泡の日々」の感想と、“推しポイント”を聞いた。またコミカライズ版の第1話を無料公開。インタビューと併せてチェックしてみよう。

取材・文 / 佐藤希

「鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々」文庫版

「鬼人幻燈抄 葛野編 水泡の日々」

中西モトオがWeb小説投稿サイトで発表した和風ファンタジー巨編の第1作。産鉄を生業とする山間の集落・葛野では火を守る巫女“いつきひめ”が尊ばれ、主人公・甚太はよそ者ながら巫女の護衛役を務めていた。ある日討伐に赴いた森で、甚太は遥か未来を語る不思議な鬼に出会い……。刀を振るう意味を問い続けながら途方もない時間を旅する青年を描く「鬼人幻燈抄」の始まりを描く物語だ。

まだまだこれからなんだ!とびっくり

──さっそくですが、小説を読まれたご感想を伺いたいです。

和風ファンタジーというジャンルのお話と聞いて読み始めたんですが、恋愛やアクション、友情といろんな要素が含まれていることに驚きました。さらに家族愛のお話でもありますし、人と鬼という種族の違いを描く物語でもあるので、「どんな話ですか?」と聞かれると、1巻だけではうまく説明できないぐらいいろんな要素が楽しめました。

──八代さんに読んでいただいた「葛野編水泡の日々」は、「鬼人幻燈抄」シリーズの第1話であり、人と鬼の関係をめぐる物語の始まりが描かれました。

読み終えたときは「これが1巻なのか……」と(笑)。壮大な物語のプロローグとして、ここからいろいろ始まっていくんだという予感がしてわくわくしました。これだけいろんな要素を楽しませていただきましたが、まだまだこれからなんだ!とびっくりしましたし。

──「鬼人幻燈抄」シリーズは現在小説版が7巻まで発売されています。1巻にはシリーズの始まりを飾る物語として、本当にいろんな出来事が詰め込まれていましたよね。

単行本最新第7巻 「鬼人幻燈抄 明治編 君を想う」

続きを読むのが本当に楽しみです。まさかこれほど盛り上がって、まだ序盤とは……(笑)。1巻は本当に要素が盛りだくさんでしたが、読み終えて「やっと舞台が整ったんだな」と。作品の地盤ができて、いろんな物語の芽が生えてこれから花咲いていく、という段階でも、こんなに面白いんだということに感動しました。

──先ほど八代さんもおっしゃっていたように、「鬼人幻燈抄」は恋愛やアクションなどさまざまな要素が詰め込まれています。八代さんは一番印象的だったのはどういう部分なんでしょうか?

うーん……ずるい言い方かもしれないんですが「人の愛」ですね。登場人物たちの行動原理やいろんな事件のきっかけは愛だったと思っているので、「鬼人幻燈抄」シリーズでは恋愛要素が間違いなく欠かせないと思っています。

──確かに、愛情を発端にいろんな物語が起きていました。

そうですね、物語の舞台となる葛野という土地への愛着や、そこに暮らす人たちへの思い、人間と対峙する存在の鬼にも彼らの事情がありますし。それがひしめきあって、物語が進んでいきましたね。読み始めて間もないですが、この物語を最後まで見届けたい!

キャラクターみんなに思い入れを感じられる

──主人公の甚太は剣の達人で、生家から家出した自分と妹・鈴音を受け入れてくれた葛野の人々へ恩返しをするため、巫女である白雪(白夜)を守る立場となります。非常にクールな人物ですが、八代さんはどういう印象を持たれましたか?

「鬼人幻燈抄」コミカライズ版より。

とにかくまっすぐな人物だと思いました。でもまっすぐ過ぎるがゆえに、自分の信念を曲げられなかったり、考えすぎて迷ってしまったり、でも自分が抱えている問題をちょっと脇に置いておけるほど器用ではないですよね。1巻で起きた事件を経て、甚太がどのように内面を形成していくのか楽しみだなと思いました。甚太の近くにいる友達だったら、何を考えているんだろうとわからないこともあると思いますが、読者としては意外と内面がつかみやすくて物語に入り込めるんじゃないかなと感じます。

──八代さんは、甚太のような人物が身近にいたらどう思いますか?

好きですね! いい意味で頑固な甚太の姿は男らしくて尊敬しますし、それに「こうしなきゃダメだ!」って思いながらも、本心では大丈夫かなと悩むかわいらしさもあるなと思います。妹の鈴音とのシーンも穏やかでいいですよね。

──「鬼人幻燈抄」1巻ではさまざまなキャラクターが登場しますが、ほかに気になる人物はいましたか?

物語に入り込んで読むタイプなので、序盤では清正が本当に邪魔だな……と思いました(笑)。

──(笑)。清正は葛野の長の息子で、甚太にきつく当たるキャラクターでしたね。

読み終わってみたら、清正は自分の境遇に疑問を抱いているけど、それを自分で解決できるほどの経験や賢さも持っていないから、甚太に対してああいう接し方になってしまったんだなと納得しました。でも心根はいい人なんだなと思います。育ちのいい部分が見えて、甚太に強く当たり切れない優しさがあって、そんな自分に対する嫌悪感も抱えている。人間味があるキャラで、最終的には清正が好きだなって思えました。自分への怒りのような感情って、読み手にとっては親近感があるし、誰しもこれまで生きてきた中で、そういう思いってあったと思うんです。

──なるほど。

甚太もヒロインの白雪のことももちろん好きですが、清正同様に最初は好きになれなかった葛野の長も最後にはしっかりと甚太と向き合った言葉を発してくれていましたし、甚太のことが好きな茶屋のちとせちゃんも応援したくなる。だから、読み終わった今ではキャラクターみんなに思い入れを感じられる物語でした。