「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rhyme Anima」特集 小野勝巳監督、シリーズ構成・吉田伸、北村京子プロデューサー座談会|ラップバトルをアニメにする前代未聞の表現に、3人はどう立ち向かったのか?

ファンが築いてきた歴史へのリスペクト

──アフレコはもう全話終わっていらっしゃるとのことでしたが、これまで「ヒプマイ」を引っ張ってきた木村昴さんをはじめとするキャストの皆さんはアフレコ現場でどのような雰囲気でしたか?

小野 やっぱり昴くんは座長なので、彼がいるときだとみんなが動きやすいというか、そういう感じはありますね。とはいえ、いつもBuster Bros!!!がいるわけではないので、MAD TRIGGER CREWだったら浅沼(晋太郎)くんが引っ張っていってくれたり、麻天狼だったら木島(隆一)くんがムードを作ってくれたり。

北村 新型コロナウイルスの影響を途中から受けてしまったので、特に後半はディビジョンごとに録っていて。相手がいない中でバトルを収録するような苦しい状況もあったんですが、さすが「ヒプマイ」を作ってきた皆さんだけあって、各チームまとまっていらっしゃったなと思います。アフレコでも後半はどんどん皆さんチャレンジをしてくださるようになって、アドリブも入れてくれたり。

小野 歌の収録でもキャストさんがだいぶ協力してくれて。「もっとここは苦しそうに歌ってほしい」だとか、ディレクションを出させてもらいました。

──歌の表現もアニメに合わせたものになっているんですね。ストーリーとしては、原作のBattle Seasonの流れを中心に描いていくんですよね。

小野 はい。トーナメントの勝敗は、原作のBattle Seasonの通りやります。

──これまでのファンの行動がアニメに反映されるというのは熱いですね。

北村 ファンの皆さんがこれまで築いてきた歴史なので、そこをちゃんとリスペクトしよう、という方針になったんです。

小野 その分シナリオでは、キャラクター間の因縁付けをちゃんと描いていこうと思いました。突然怒り出すような印象にはならないように、「なぜ戦うのか」という理由やチームの結束を、ちゃんとストーリーの流れの中で明確にしていった感じです。

吉田 アニメへの参加が決まったときは、各チームまだCD1枚ずつくらいしか出ていなかったんですよ。今はすごく設定も豊富だと思うんですが、2年前はアニメを制作するうえで必要な設定がまだ固まってない部分も多かったんですよね。先行してアニメを作っていったので、アニメ独自のところは独自で作っていきました。

──では、アニメオリジナルの要素もこれからさらに出てくるのでしょうか。

小野 そうですね。アニメならではのチームの特色だったりとか……。

北村 詳しくは言えないですが、楽しんでもらえるんじゃないかと思います。

老若男女が「カッコいい」と思える作品に

──絵に関してだと「ヒプマイ」の特徴的な色遣いも、アニメに引き継がれていますよね。

小野 色彩設計のホカリカナコさんがうまくまとめてくれています。背景の色レベルとセルの色レベルがそれぞれあって画面が構成されているので、1枚で見る絵とは違うんですが、世界として見たときにビビッドに見えるように。

──色遣いもそうですが、「ヒプマイ」の舞台設定はファンタジーとも現代を舞台にした日常系とも違う、独特の世界観ですよね。

北村 そうですね。ファンタジーとリアルが入り乱れている作品なので、その世界観はずいぶん考えました。近くにも感じてもらえるし、違う世界としても感じてもらえるようにできたかと思います。

吉田 バトルに関しても、直接殴り合うわけじゃないですよね。直接タッチしてバトルするっていうのと、そうじゃないバトルって意外と違うんです。殴り合ったりするとリアリティが前面に出てくるんだけど、その点では「ヒプマイ」は精神に干渉するヒプノシスマイクを使って戦うファンタジーなので、それが自然に成立する世界観がないといけない。そこは意識していましたね。

──具体的にはどのように?

吉田 シリアス一辺倒にすると成立しなくなると思ったんです。キャラクターも賑やかだし、コメディ要素というか、「派手にやっちゃおう!」というような感覚を大事にしつつ、ストーリーのリアルなところと乖離しないように気を付けています。

──確かに、「ヒプマイ」の持つエネルギーや勢いが表れた映像になっていると思いました。では最後に、アニメから初めて「ヒプマイ」に触れる方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、そういった人にはどこを見てほしいですか?

小野 やっぱりラップがカッコいい。もともと曲から「ヒプマイ」に入った人ってたくさんいると思うんですが、アニメから入って、曲を聴いてもらえたらうれしいですね。

吉田 ハードルを上げるような作りにはしていないし、むしろ親しみやすい内容にできていると思うので、アニメからでも楽しめると思います。

北村 この作品を作るとき、いろんな方に観ていただきたいなと思って、このおふたりにお願いしたんです。子供から大人まで男女問わず、どなたでも「カッコいい」と思ってもらえるような作品作りをしているので、たくさんの方に観てほしいですね。

──男同士のバトルものですし、男の子でも楽しめそうです。

小野 そうですね。小学生の息子にも見せてみようかな(笑)。

吉田 子供はすぐ曲を覚えちゃうかもしれないね(笑)。