コミックナタリー Power Push - 相田裕「GUNSLINGER GIRL」

連載10周年を目前に、少女たちの戦いはついにクライマックスへ――

読むのはしんどいけど読む手が止まらない理由

──でも思えば、描きこまれた背景と重厚なストーリーの中に可愛らしい絵の女の子が配置されているという、不思議なギャップを内包したマンガですね。

GUNSLINGER GIRL (C)相田裕/アスキー・メディアワークス

パッと「何マンガ」と答えるのは難しいですよね。でもそういう風にジャンルを横断しているのがガンスリの特徴だと思ってます。

──もともと銃と少女ってタイトル自体が一種のギャップ萌えですもんね。

そういうテーマで、現実に近いヨーロッパを舞台にして、ハードなストーリーを描こうという人はあまりいないのではないかと。

──義体は短命ですぐ死がやってくるという設定が初めから織り込まれているのは、たしかにハードですね。

その「設定」をどう「物語」にしていくかは、連載の途中からは大きな課題になりました。ハードな設定というだけでは、エンターテインメントとしていまいち魅力のないものになってしまうでしょうし。

──この、読むのはしんどいけど読む手は止められない、というストーリーは、どういう仕組みでできるのでしょうか。

そんなに簡単に答えられることじゃないんですが……(笑)。読む人が、キャラクターの行く末に関心を持ってくれるようにドラマを描写することじゃないでしょうか。この人物はどういう過去があって、周囲の人々とどんな関係を構築して……というのが伝わってこそ、先の展開に興味を持ってもらえるのかなあと。

そのキャラなりの選択を見届けてもらえたら

──なるほど。そのお話がひとつの決着を見るのがこの14巻だというわけですね。それにしてもなかなか、過酷な展開で、10年付き合ってきた読者にしてみるとしんどいのではないかと。

GUNSLINGER GIRL (C)相田裕/アスキー・メディアワークス

読者の声で、思い入れのあるキャラに死んでほしくない、幸せになってほしいというご意見はたくさんあります。ただ、現実にしろ物語の中にせよ、ある人にとって何が幸せかっていうのは難しいテーマですし、「ガンスリ」ってそもそも登場人物が絶対的に正しい選択をして幸せになりました、という話ではないのですよね。

──それはどういうことですか。人間の過ちを見せるということ?

キャラクターが他人から見て愚かしい行いをすることもあるし、そもそも正しいのか間違いなのか分からない。でも、その人なりの選択を見届けてもらえたら、と。

──どんな結末であれ、それがキャラクターの意志なのだと。

それが伝わればいいな、と思います。

──冒頭でも読み進むのがしんどいと言ってしまいましたが、そのしんどい話も、それぞれに思いが込められているのだとわかって、最後まで付いていく覚悟ができました(笑)。「電撃大王」での連載、いよいよ佳境だと思いますが、楽しみにしています!

GUNSLINGER GIRL (C)相田裕/アスキー・メディアワークス

相田裕「GUNSLINGER GIRL(14)」 / 2011年12月17日発売 / 578円(税込)/ アスキー・メディアワークス / Amazon.co.jpへ

あらすじ

公益法人社会福祉公社——障害者支援のための首相府主催事業を表向きとするこの組織の実態は、瀕死の少女たちに機械の体を与え、「条件付け」を施し、その少女たちを使って政府に敵対する勢力を秘密裏に排除する諜報機関だった。

生きることと引き換えに「義体」となった少女たち。

「条件付け」により、義体になる以前の記憶が封印された少女たちにとって、担当官の命令に従い、銃を持ち戦うことが何よりも幸せなのだった……。

架空のイタリアを舞台にした、少女と銃、そして周囲の人間が織り成す群像劇。

相田裕(あいだゆう)

プロフィール写真

2002年、月刊コミック電撃大王7月号(アスキー・メディアワークス)より「GUNSLINGER GIRL」を連載開始。現在までにコミックス1~13巻が刊行。最新14巻は12月17日発売。