「ダンまちV」で明かされる作品最大の謎、シルの正体!原作・外伝・未アニメ化エピソードからその伏線を解説 (2/2)

シルの正体がアニメでも判明!その匂わせの一部を紹介

シルからの恋文によって物語が動き出した「ダンまちV」だが、第4話でシルの恋路にひとつの決着がついた。そしてそれと同時に、シルの正体が女神・フレイヤであることがついにアニメでも明かされたのだ。

美の女神・フレイヤ。

美の女神・フレイヤ。

フレイヤは、オラリオ最強の派閥であるフレイヤ・ファミリアを率いる、美の女神。気に入った下界の子供を見つけてはその美を用いて男女問わず自分のモノにしている。ベルの“魂”の美しさにも惹かれており、彼が成長するように、たびたび陰で動いてきた。「怪物祭(モンスターフィリア)」にてベルがモンスターたちと戦うように仕向けたことをはじめ、春姫救出の裏ではイシュタルに制裁を科し、異端児との一件ではベルとアステリオスが一騎打ちになるようにほかの冒険者を遠ざけるなど、作中の大きな事件の数々に裏で関わっている。

まだまだ多くの謎を残す「ダンまち」だが、物語開始当初からファンの間で活発に考察されてきたシルとフレイヤの関係。ここでは、そんなシルとフレイヤに関連した匂わせの一部を紹介する。

伏線は原作1巻の初登場シーンから既にあった!

前述した通り、ベルの落とし物をシルが拾ったことで交流を持つようになった2人。そんなシルの初登場シーンにも、シルがただの街娘でないことを匂わせる演出がされていた。

小説「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」1巻

小説「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」1巻

シル登場の直前、街を歩くベルは何者かの視線を感じて立ち止まる。しかし、それらしい人影は確認できず、いきなり現れたシルに話しかけられることに。アニメではほんの一瞬のシーンだが、原作では「肌を冒されるような感覚。まるで物を値踏みするかのような、普通の人にはとても真似できない、無遠慮過ぎる視線」と、その視線の恐ろしさが綴られている。さらにシルが拾ったという落とし物の魔石も、ベルは前日にすべてギルドで換金したはずだと疑問に感じており、違和感の残る出会いとなっていた。

その後、フレイヤが裏で糸を引いていた怪物祭(モンスターフィリア)の騒動の最中にも、シルを探す中で同じ視線を感じることになるベル。原作者の大森藤ノは、GA文庫大賞への応募原稿の時点では、怪物祭でベルと一緒に逃げるキャラクターが、ヘスティアではなくシルだったことを原作17巻のあとがきや、のちのインタビューで明かしている。それだけシルが当時から特別に扱われていたことがうかがえるだろう。

シルが働く「豊穣の女主人」にも秘密が?

シルが働く「豊穣の女主人」の名前も彼女の秘密を紐解くヒントのひとつ。「ダンまち」には、実在の神話に登場する神々の名を冠したキャラクターが多数登場する。美の神として紹介したフレイヤもその1人だが、元ネタとなった女神フレイヤは「豊穣の女神」としても知られる存在。そんな彼女にあやかって「豊穣の女主人」の店名が付けられたと考えられるだろう。また店主ミア・グランドは、かつてフレイヤ・ファミリアの団長を務めていた冒険者であり、名前以外にもフレイヤと関係の深い店であることがわかる。

「豊穣の女主人」で働くシル。

「豊穣の女主人」で働くシル。

一度も顔を合わせていなかったシルとヘスティア

「ダンまちV」第1話では、ヘスティアの口からシルと一度も会ったことがないという意外な事実が飛び出した。わざわざ「豊穣の女主人」へと訪れたにも関わらずシルに会えなかったというヘスティア。実は原作1巻でヘスティアはシルに看病されている。しかし、その際ヘスティアは気を失っており、シルと対面することはなかった。原作1巻の発売が2013年、そしてシルと会ったことがないという事実が語られる16巻が2020年発売なので、約7年にわたって2人が出会わないように調整されてきたことになる。なおアプリゲーム「ダンメモ」(※1)「ダンクロ」(※2)で実装されてきたシナリオ内でも2人は会っておらずその徹底ぶりは驚くほどだ。シルは、神であるヘスティアと会ってしまうと自身がフレイヤであることがバレてしまうことを危惧していたのだろう。

※1「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~」
※2「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか バトル・クロニクル」

ヘスティア

ヘスティア

神と比較されるほどの観察眼

「ダンまち」の世界では、神たちは人間の嘘が見抜ける存在として描写されている。趣味が「人間観察」だというシルだが、彼女の観察眼の鋭さは時に神と比較されるほど。ベルと知り合った当初のリリが、彼の大事な武器ヘスティア・ナイフを盗んだ場面では、凄腕冒険者のリューがリリの変身に騙されるなか、シルだけがリリだと見抜き彼女に一言釘を刺している。さらに彼女の観察眼の異常さが強調されたエピソードが、各キャラクターにスポットを当てた小説シリーズ「ファミリアクロニクル episodeリュー」収録の「グラン・カジノをぶっつぶせ!」。とある少女救出のためにカジノへ潜入したリューとシルを描くこのエピソードでは、敵のイカサマによってリューがポーカーで負け続けてしまう。そんなピンチを救ったのがシル。まるで相手の手の内がすべてわかっているかのように勝ち続けるシルは、「神様の中には、『魂』の色を見抜いてしまう女神がいるそうですよ?」とフレイヤを思わせる言葉を敵に投げかける。また普段からシルとポーカーをしている同僚のアーニャも「神様と勝負している感じ」とシルの観察眼の異常さを語っている。

リリの嘘を見抜くシル。耳元で「おいたしちゃダメよ?」と囁きリリを怯えさせる。

リリの嘘を見抜くシル。耳元で「おいたしちゃダメよ?」と囁きリリを怯えさせる。

アニメでカットされたエピソード「街娘の秘密」

原作小説8巻収録の「街娘の秘密」はシルにスポットを当てた短編。街中で見かけたシルの後をつけたベルが、彼女のまだ知らない一面を目にすることになる。アニメではカットされたエピソードだが、貧民街出身というシルの出自や、孤児院へ足を運ぶ彼女のプライベートが明らかになるなど、シルを深掘りするうえで欠かせないエピソードになっている。この物語の終盤には、ベルと孤児院の子供たちのピンチに、フレイヤ・ファミリアの副団長アレン・フローメルが登場。その後の彼とフレイヤの会話では、フレイヤがシルを“娘”と呼ぶなど、彼女とシルにつながりがあることが明確に描写された

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクルepisodeフレイヤ」。本編より前のフレイヤ・ファミリアの団員たちのエピソードなどが収録されており、読めば「ダンまちV」をより楽しめる。

「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか ファミリアクロニクルepisodeフレイヤ」。本編より前のフレイヤ・ファミリアの団員たちのエピソードなどが収録されており、読めば「ダンまちV」をより楽しめる。

また小説「ファミリアクロニクル episodeフレイヤ」では、貧民街での“シル”という少女とフレイヤの出会いが意味深に描かれている。フレイヤになりたいというシルの願いに対し、フレイヤは何らかの提案をするのだが、そのセリフは伏字に。この言葉が「ダンまちV」第4話でのフレイヤと少女のやり取りへとつながってくる。

「ダンまちV」第4話では、フレイヤと謎の少女のやり取りが回想として描かれた。

「ダンまちV」第4話では、フレイヤと謎の少女のやり取りが回想として描かれた。

今後どうなる?「ダンまちV」

ここまでベルとシルのデートを軸に物語が動いてきた「ダンまちV」。ヘディン・セルランドからの突然の恋愛レッスン、フレイヤ・ファミリアからの監視などバタバタがありながらも始まった2人のデートが第2話から描かれてきた。思い人であるベルと手をつなぎ、終始幸せそうに笑顔を見せるシル。そんな彼女からは、「ダンまち」史上最高と言っても差し支えないくらいの幸せなオーラが溢れていた。

シルのレアな私服姿も注目ポイントのひとつ。

シルのレアな私服姿も注目ポイントのひとつ。

「ダンまち」には珍しく、ラブコメ濃度高めなやり取りが展開された。

「ダンまち」には珍しく、ラブコメ濃度高めなやり取りが展開された。

そして第4話のラストでは、シルがベルへの溢れる思いを告白。しかし、ベルはつらい気持ちを抱えながらもシルの思いを受け入れることができなかった。まるでシルの心情を表すかのように降り出した雨の中、彼女はフレイヤ・ファミリアの団長・オッタルへ、「誰にも渡さない。ベル、あなたは私のものにする」と告げる。シルの声から次第にフレイヤの声へと変わっていくと、あの優しいシルの顔はもうそこにはなかった。フレイヤという真の姿を見せたシルは、髪の毛をかき上げながら、口を吊り上げ不敵な笑みを浮かべる。ラブコメ然としていた「ダンまちV」の物語を急転換させる彼女の表情をぜひとも見届けてほしい。

「ダンまちV」第4話のラストシーンより。不敵な笑みを浮かべるフレイヤ。

「ダンまちV」第4話のラストシーンより。不敵な笑みを浮かべるフレイヤ。

衝撃の真実が明かされたが、第1話のラストでは、フレイヤとシルが顔を合わせており、2人の関係にはまだ謎が残る。シルに変身することができ、単独でベルを殺そうと動いていたへルンについても今後のストーリーで明かされていくだろう。

フレイヤと言葉を交わすシル。

フレイヤと言葉を交わすシル。

フレイヤ・ファミリアの団員へルン。シルに変身してベルを騙そうと行動し、正体がバレると襲いかかってきた。

フレイヤ・ファミリアの団員へルン。シルに変身してベルを騙そうと行動し、正体がバレると襲いかかってきた。

力ずくでベルを奪うことを宣言したフレイヤ。“オラリオ最強”と謳われ、リューやベルが太刀打ちできなかったヘディンやヘグニを擁するフレイヤ・ファミリアと、ベルたちヘスティア・ファミリアがどのように交わっていくのかにも注目だ。

フレイヤ・ファミリアが集結したビジュアル。

フレイヤ・ファミリアが集結したビジュアル。