ナタリー PowerPush - たりふた SUMMER JAM '12

山里亮太&若林正恭Wインタビュー

「社交性がたりない」「恋愛がたりない」など、人として“たりない”部分を笑いに昇華させてきた南海キャンディーズ山里とオードリー若林のユニット・たりないふたり。2009年9月の「LIVE!潜在異色」への出演を出発点に、今年2012年4月から6月にかけて初めて日本テレビで冠レギュラー番組を持ったほか、中野サンプラザでの2DAYSライブ「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-presents たりふた SUMMER JAM '12 -We wanna be a human ASAP!-」のチケットを即日完売させるまでの大きな存在となった。

8月20日、21日に行われたこの人気ライブが、いよいよ2枚組DVDでリリースされる。お笑いナタリーでは、山里、若林、それぞれに個別取材を敢行。あらためてこの2日間のライブを振り返ってもらうとともに、ユニットの今後について話を聞くことにした。

取材・文 / お笑いナタリー編集部

山里亮太インタビュー(前編)

あんな楽しいものは若林くんとしかできない

──あの夏の思い出を思い返していただきたいのですが。

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

山里 あっという間だなー。あれから4カ月経つんだもん。

──「たりないふたり」のない生活ってどうですか?

山里 朝、「うわっ」って目覚めるのがなくなったというか。あんまり追い込まれてないなって思いますね。「たりないふたり」って、加圧トレーニングみたいな感じだから。あれだけ凝縮して自分のお笑い能力を高めてくれる時期っていうのが普通はない。今はけっこうそのときの遺産でやってるときもあるし、「たりないふたり」が終わってから、テレビで若林くんがウケてるの見るとちょっと嫉妬して……。僕の正恭が取られてるような(笑)。

──あははは(笑)。

山里 「たりないふたり」は「たりないふたり」で完成なんですよね。あんな楽しいものは若林くんとしかできない。「楽しい、楽しい!」「嬉しい、嬉しい!」がずっと続いてるんですよ。しんどいけど、そんなしんどいっていうのも天秤にかけたらもうはるかに楽しいことのほうが多いし。自分がお笑い芸人やっていく上で、それがどんだけ心強いものか。だから、しずちゃんがドラマやろうがボクシングやろうが、「俺は面白い漫才できるし」って思えることが結構でかいんですよね。

──今の山里さんが芸人でいられる支えということですね。

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

山里 そうさせてくれるのがやっぱり若林くんのスパルタ教育なんで。ネタ合わせとかやると、お笑い、漫才に対して本当にめちゃくちゃ厳しい。やりたくないってときは本当に露骨に態度に出してくるし、台本読んで「ここはこうで」って言っても「ちょっと見えないですね」ってハッキリ言ってくる。しかも、本番何しでかすかわかんないっていう。

──自分も本番でムチャしてみたいと思うときってありますか?

山里 漫才やってて、若林くんが壊れてドッカンドッカン笑い取ってるときは、「これを僕がやったらどうなるんだろう」とか、「僕が壊れるネタやったらどうなるんだろう」っていうワクワクはちょっとあるんですけど、でも、「いや、違う」と。もし僕が壊れて若林くんがツッコミになったとき、「ツッコミ若林のほうが面白いな」ってなっても嫌だし、「たりないふたり」をやってるときは、とくにツッコミに徹してるほうが、自分も絶対楽しい。あと、これを言うともうダメなんですけど、「ボケで若林くんと勝負しろ」って言われたら僕は勝てない。この人は、両方強いんですよ、ツッコミも。でも根本はボケの人。まるっと人間ごと変われるんです。

──若林さんのボケに、いかにちゃんと返せるかっていうところに神経を集中してるんですね。

山里 そうですね。あと若林くんが、僕のツッコミを試してる感じがするんで。ニヤニヤしてるんですよ。8分のネタやるのに、ネタ合わせで若林くんがずっとアドリブを入れ続けてくるから、1回のネタ合わせにつき50分かかる。50分間頭の中のボケ出し続けてるっていうの繰り返して見てたら、やっぱ勝てないなと思って。

漫才のときはチームだけど、それ以外のときはライバル

──そのぶん普段のバラエティ番組などでのツッコミは負けたくないですよね。

山里 そこは嫌ですね、負けるのは。漫才のときはチームだけど、それ以外のときはライバルというか。ライブも、僕は(8月)20日のほうは若林くんにボロ負けしたと思ってて。その日が1番ショックで。

──そうなんですか!?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

山里 その日、軽い打ち上げみたいな、メシ食いに行ったんですけど、喋る気しなかったですね。

──その20日の負けた感というのは具体的には?

山里 全体的に言葉を発するタイミングと、そのときに出したもののボケの大きさとか笑いの量とか、オープニングの立ち振る舞いとか、数えればキリがないくらい。あのときの目線の配り方だとか、移動の仕方だとか、若林くんのやってたことはちゃんと練りこまれてた。

──それはライブの最中に、もう思いながらやっていたんですか?

山里 そう。

──え! 苦しくないですか?

山里 苦しいです。

──まったく気づきませんでした。

山里 本当にお客さんに助けられたっていう気持ちがあって。お客さんが笑ってくれてるから心がボッキリいかなくて助かったけど、でももう前半は「なんか違うな」って。怖いですもん、DVD見るの。

──では、翌日21日は気持よく終われましたか?

「たりふた SUMMER JAM '12」の一場面。

山里 「明日こうなったらダメだ!」って思って、その日の夜から仕上げにかかりました。21日に出すものの整理と、どれくらい言葉を削ろうかとか、そのエピソードのもっとパワーアップ版ないかなとか、新しいワードないかなとか、これまでの「たりないふたり」から持ってこれないかなとか。

──それを頭の中で考えて、シミュレーションして臨むんですね。それは20日もやってたわけですよね。

山里 でも20日は、どっかで番組を1クールやってきた自信みたいなものがあって、「行ける」と思ったんですよね。

──ちょっと目算が外れたっていう。

山里 そう。時間のない中で若林くんがこんだけ仕上げきたのに、本当はもっと若林くんに振って面白くできたはずなんですよ。

──いやいや、十分面白いですよ。

山里 僕が焦ってる姿を20日のDVDで見ていただくと、21日でマシになっていきますので(笑)。

収録内容

2012年8月20日、21日に中野サンプラザで行われたライブ「たりないふたり-山里亮太と若林正恭-presents たりふた SUMMER JAM '12 -We wanna be a human ASAP!-」を2枚組DVDに収録。2人が“戦場”と呼ぶスタジオ風と居酒屋風のセットで生き延びる術を実演した「サバイバル体験記」、たりふた名物「妄想ラブストーリー」、「こんな鬼に気をつけろ」と「理想の結婚相手」のプロフィール作成コーナー、ステージの大きさを生かして派手なアクションも盛り込んだ漫才など、見どころ盛りだくさん。(収録時間:本編240分+特典映像)

山里亮太(南海キャンディーズ)
  • 生年月日:1977年4月14日
  • 出身地:千葉県
  • 所属:よしもとクリエイティブ・エージェンシー
若林正恭(オードリー)
  • 生年月日:1978年9月20日
  • 出身地:東京都
  • 所属:ケイダッシュステージ