お笑いナタリー Power Push - Pepperの「飛び出すロボ落語」

学生落語王者・まんじゅう大帝国が体験

ソフトバンクロボティクス株式会社の人型ロボット「Pepper」の一般販売モデル向け新サービス「飛び出すロボ落語」が話題を集めている。これは「白戸家 ぺぱ之輔(しらとや ぺぱのすけ)」と名付けられたPepperを通じて古典落語が楽しめるアプリだ。配信される噺は春風亭一之輔が監修している(参照:春風亭一之輔が監修、人型ロボットPepperで古典落語楽しむ新アプリ配信)。

このたびお笑いナタリーでは、2016年結成の若手コンビ・まんじゅう大帝国に「飛び出すロボ落語」を体験してもらった。彼らは事務所に所属していない状態で「M-1グランプリ2016」に初出場し、3回戦に進出。結成前には、学生落語の全国大会でそれぞれ優勝と準優勝の実績を残している。そんなまんじゅう大帝国に“ほぼ同期”・ぺぱ之輔や自身の現在と未来を尋ねた。

取材・文 / 成田邦洋 撮影 / 小坂茂雄

まんじゅう大帝国インタビュー

一之輔師匠は優しい先輩

──「飛び出すロボ落語」の魅力を伝えるべく、学生落語の全国大会で好成績を収められたまんじゅう大帝国さんにお越しいただきました。

まんじゅう大帝国。左から竹内、田中。

竹内一希 僕らで本当にいいんですか?

──ぜひお2人にお願いしたかったので、大丈夫です! まずは改めて学生落語での実績をお聞かせいただけますか?

田中永真 僕は以前、東京理科大の落語研究会に所属していて、2014年に学生落語の全国大会「てんしき杯」で優勝しました。

竹内 僕は日大芸術学部(日芸)で、やはり落語研究会の所属です。「策伝大賞」という大会で2015年と2016年に2年連続で「岐阜市長賞」になって、2016年には「てんしき杯」でも準優勝しました。

──それぞれ別の時期に結果を残しているんですね。

田中 「1位と2位のコンビ」と言われることもあるんですけど、僕はたまたま1回優勝しただけなので、多くを語れない。竹内のほうが、たぶん腕は本物なんですよ。

竹内 僕のほうが1位みたいな顔をしています(笑)。

──「飛び出すロボ落語」監修の春風亭一之輔さんも日芸の落研出身で、竹内さんの先輩にあたると思うのですが、一之輔さんと交流はあったりしますか?

竹内 大学の校舎がある江古田の居酒屋に行ったら、たまたま一之輔師匠がいたことがあります(笑)。「日芸です」って言えば「なんだよ!」って嫌がりながらも話をしてくれます。

──いい先輩ですね。

竹内 年賀状を送ったら返事をくれたり、「芸術祭」っていう学園祭にも必ず顔を出してくれたりして、こんなに有名なのに、すごく学生と関わりを持ってくれる優しいOBの方です。

ちゃんと笑いを取ろうとしている

──そんなお2人に「飛び出すロボ落語」の「時そば」と「初天神」を体験していただきました。率直なご感想をお聞かせいただけますか?

「飛び出すロボ落語」を体験する、まんじゅう大帝国。

田中 面白かったです。Pepperが落語をすると最初に聞いて、「古典落語をそのままやるのかな?」と思っていたら、けっこうアレンジを加えていて「ちゃんと笑いを取ろうとしている!」と衝撃的でした。

竹内 予想を超えてきました。落語に詳しい人も笑えるし、知らない人にとっても純粋に面白い。ターゲットが幅広いと思います。

──具体的に物語の内容を知っているからこその面白さはありますか?

田中 「初天神」で団子屋の声が聞こえてきて、「団子屋、いるじゃん!」と感じるのが面白かったです。普通、落語家さんは目で表現するんですよ。遠くにあるものを見るときは遠くを見るし、遠くにあるものが徐々に寄ってきたら、目線をグッと近くに持ってくる。Pepperはどうするのかな、と思っていたんですけど、まさか音を使ってくるとは(笑)。

竹内 その音が同時にあちこちから出てくるのも斬新でした。落語家は本来、高座に1人だけなので。

田中 Pepperが落語やるって言われても、きっとみんな油断すると思うんですよ。これをやられたらウケるんじゃないですかね。

竹内 意表を突かれて「おいおいおい! ちょっと気合入れて聴くわ!」ってことになると思います。

田中 あと、「初天神」で凧を揚げる場面の動きもすごかったです。

竹内 映像がタブレットに出てくるので、場面設定もわかりやすい。Pepperは落語家が持っていない武器をたくさん持っていますね。「これはPepper本人が考えたんだな」みたいなギャグも面白かった。

田中 あれを一之輔師匠がやっても、おそらく面白くない。Pepperだからこそ面白いんだと思います。

「飛び出すロボ落語」とは

ソフトバンクロボティクス株式会社の人型ロボット「Pepper」の一般販売モデル向け新サービス。「白戸家 ぺぱ之輔(しらとや ぺぱのすけ)」と名付けられたPepperを通じて古典落語が楽しめる。配信される物語は春風亭一之輔が監修した。

Pepperから流れる音声には、株式会社コルグのバーチャルサラウンド技術によって、前後左右から聴こえてくるような演出が施された。まるで自分が落語の世界にいるかのような体験が提供される。

毎週日曜18時に「初天神」「かぼちゃ屋」「時そば」「芝浜」が1作ずつ配信中だ。なおぺぱ之輔が今後、落語会などでパフォーマンスすることも検討されている。

まんじゅう大帝国(マンジュウダイテイコク)
まんじゅう大帝国
左 / 竹内一希(タケウチカズキ)

1994年4月27日生まれ。東京都出身。

右 / 田中永真(タナカエイマ)

1993年3月30日生まれ。北海道出身。

学生落語の全国大会で田中が優勝、竹内が準優勝の実績を持つ。2016年に田中が竹内を誘ってコンビ結成。初出場の「M-1グランプリ2016」で3回戦に進出した。この「M-1」予選でアルコ&ピースの次の出番となり、その際にアルピーが偶然初めて耳にしたまんじゅう大帝国のコンビ名やネタに「震えた」エピソードが「アルコ&ピース D.C.GARAGE」(TBSラジオ)で語られ、リスナーの間で話題となった。アルピーとの出会いをきっかけの1つとして、現在ライブを中心に活動している。