ナタリー PowerPush - アニメ「ゆゆ式」楽曲関係者 総勢10名による大座談会

ふわりP、164、add9(ヘリP)、亜沙、DJ UTO、Ryu☆、Starving Trancer、Mayumi Morinaga、mitsu

4月17日、アニメ「ゆゆ式」のテーマソング「せーのっ!」がリリースされた。

このシングル、いわゆるアニソンCDとはひと味違う。「ゆゆ式」のメインヒロインの声優を務める大久保瑠美、津田美波、種田梨沙からなるユニット・情報処理部による表題曲にして同アニメのオープニング曲と、Mayumi Morinagaが歌うエンディング曲「Affection」、そして情報処理部の歌うイメージソング「セツナイロ」の3曲を収録しているあたりは、ごく普通のアニメ主題歌のシングル盤なのだが、今作は堂々18曲構成。「せーのっ!」「Affection」「セツナイロ」のオリジナルトラックに加え、この3曲をボーカロイドが歌うバージョン、リミックスバージョン、インストバージョン、さらにはアカペラバージョンまでパッケージしている。

そこでここでは「せーのっ!」の作詞・作曲・編曲を手がけたふわりP、「Affection」「セツナイロ」の作詞家・mitsu、作編曲を手がけたユニットAnother InfinityのRyu☆、Starving Trancerの2人、「Affection」のボーカリストMayumi Morinaga、各曲のリミックスを担当した164、亜沙、ヘリP、デッドボールP、そしてリミキサーの1人にしてシングルのプロデューサーであるDJ UTOを招へい。なぜシングル「せーのっ!」はこんな大胆な内容になったのか? 各トラックメーカー、リミキサーはどんな思いでこのシングルに参加したのか? 話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 上山陽介

女子校的リアルの一面を描く「ゆゆ式」

──皆さん、「ゆゆ式」という作品の感想は? 特に「せーのっ!」の作詞・作曲・編曲を担当したふわりPさんや、「Affection」の作詞家mitsuさん、作編曲家のAnother Infinityのお2人、そしてボーカリストのMorinagaさんはトラック制作やレコーディングの際、当然作品世界を意識したと思うんですけど。

左から164、Mayumi Morinaga、DJ UTO。

ふわりP なんて言いますか、「ゆゆ式」に出てくる彼女たちみたいな高校生の頃っていうのはだいたい親の援助のもと生きてるじゃないですか。

164 すごいところから話を始めたな(笑)。

ふわりP いや、マジで(笑)。高校時代って、そういう援助がある恩恵で、生活に直結した生き馬の目を抜くような競争にはなりにくいじゃないですか。だからこそある毎日は、競争で隠れがちな本当の部分をたくさん見つけられて、しかもそれが明日も明後日も、寝ても起きても続いていく。それって素晴らしいな、という思いで原作のマンガを読ませていただきましたね。振り返ってみると、もうやってこないんですよね、ああいう時期っていうのは。学生時代みたいな友達関係っていうのも作りにくくなるし。

Mayumi Morinaga(以下moimoi) あはははは(笑)。

──確かに大人になると利害関係一切ナシの友情って築きにくくはなりますよね。仲のいい人、ウマの合う人っていっても結局のところ職場の同僚や取引相手だったりするし。金の切れ目が縁の切れ目になりかねない(笑)。

ふわりP そうなんですよね!

moimoi 私も自分の高校時代を重ねて「懐かしいなあ」なんてアニメを観ているところはあるかもしれない。登場人物が基本的に女の子ばかりなのでたぶん女子校が舞台なんだと思うんですけど、私も女子校出身だから「ああ、こんなことしたなあ」って思い出したりしますし。ヒロインの3人は情報処理部だから、アニメの後半で必ず何かのテーマについてパソコンで調べ物をしながら言葉遊びをするじゃないですか。私も図書館で四字熟語、例えば「証拠隠滅」なんて言葉を「インコ消滅」って言い換えて遊んだりしてましたから。

DJ UTO つい最近までそのまま覚えちゃってたんですよね?

moimoi ええ。なぜか「証拠隠滅」のことを「インコ消滅」と言い続け(笑)。

──今回の座談会メンバーの中で唯一女子校に通う資格があり、しかも実際に女子校に通っていたのはMorinagaさんだけなんですけど、「ゆゆ式」で描かれている高校生活ってどのくらいリアリティがあるものなんですか?

moimoi けっこうああいう感じでしたよ。箸が転げても笑っちゃうみたいな。作品の中では生徒がみんな松本(頼子)先生って女の先生を「お母さん」って呼んでますけど、私たちも男の先生のことを「お父さん」って呼んでたりしましたし。逆に男子校ってどういう感じだったんですか?

ライトでポップながらも頭を使うアニメ

左からRyu☆、Starving Trancer。

Ryu☆ 普段の生活からしてけっこう地獄。先生が「体育の授業のあとの教室には入れない」って言っちゃうくらいには(笑)。

Starving Trancer(以下ST) 僕も極端に男女比のバランスの悪い学校に通ってたんですけど、だからなんて言うんだろう。「ゆゆ式」みたいな作品を通じて女の子たちがこうキャッキャウフフ、ランランランってしているのを傍目に観ていると、思わず一緒に微笑んじゃうというか。たぶん今、僕、微笑んじゃってるんだろうなあ、っていう「ゆゆ式」を観ている僕を観ている感想みたいなものが頭をよぎるんですよ(笑)。

ヘリP あれっ!? オレもほぼ男子校みたいな学校の出身だけど、「ゆゆ式」を観てるとすごく懐かしくなりますけどね。「ああ、こういうバカなことをやってケタケタ笑ったなあ」っていう郷愁みたいなのがすごくあるんだけど(笑)。

亜沙 同じ男子校でも違うもんなんですねえ。

Ryu☆ 郷愁とは違うんだけど、確かに心のオアシス的な感じの作品ではあるかなあ。今期のアニメってそれこそ巨人に襲われたりとか、メカで戦ったりっていう作品が多い中「ゆゆ式」はホッとできる。なんていうか、いい場所にある作品なんですよ。

亜沙

亜沙 それはわかります。オレも深夜作業しているときにポケーッと、ゆったり観ていられるのがいいと思うし。あと、オレはあの3人の中なら(櫟井)唯ちゃんが好きですね。お下げのツインテールっていうのがいい! ……と、なぜか女の子の好みの話をしちゃってますけど(笑)。

ふわりP だから亜沙さんも髪の毛縛ってるんだもんね。

亜沙 そうだったのか、オレ!?

──衝撃の真実(笑)。

164 でも本当にいい意味で軽い。ライトでポップな作品だなっていう印象はありますよね。

mitsu ただ、ほかの4コママンガとか日常系アニメに比べると「これは普通やらないだろう」っていうところに平気でタッチしてくる作品でもあるんですよ。「これをオチに持ってくるか!」っていう話の進め方をしてみたりとか、あえてオチをつけないというか、考えオチにしてみたりとか。実は脳みそが楽しくなる作品でもあったりして。

情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)/ Mayumi Morinaga「せーのっ! feat. ふわりP (TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ) / Affection feat. Another Infinity」2013年4月17日発売 / EXIT TUNES
初回限定盤 [CD+DVD] 1300円 / QWCE-00274
通常盤 [CD] 1000円 / QWCE-00275
CD収録曲
  1. せーのっ! feat. ふわりP(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ) / 情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)
  2. Affection feat. Another Infinity(TVアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ) / Mayumi Morinaga
  3. セツナイロ feat. Another Infinity(TVアニメ「ゆゆ式」イメージソング) / 情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)
ボーナストラック
  1. せーのっ!(ふわりP feat.MAYU)
  2. Affection(164 feat.MAYU)
  3. セツナイロ(azuma feat.MAYU)
  4. せーのっ!(164 Arrange)
  5. せーのっ!(デッドボールP Arrange)
  6. Affection(亜沙 Arrange)
  7. Affection(add9(ヘリP)Arrange)
  8. セツナイロ(DJ UTO Remix)
  9. セツナイロ(Ryu☆ Remix)
  10. せーのっ!(オリジナルカラオケ)
  11. Affection(オリジナルカラオケ)
  12. セツナイロ(オリジナルカラオケ)
  13. せーのっ!(アカペラ)
  14. Affection(アカペラ)
  15. セツナイロ(アカペラ)
初回限定盤DVD
  1. せーのっ!(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ)PV映像
  2. せーのっ!(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ)CM映像
  3. 情報処理部 (大久保瑠美、津田美波、種田梨沙) 特典映像 座談会
「ゆゆ式」

高校で情報処理部に所属する野々原ゆずこ(CV:大久保瑠美)、櫟井唯(CV:津田美波)、日向縁(CV:種田梨沙)の女子3人の日常を描いたアニメ。インターネットを使って気になることを調べ、出てきた情報をもとに3人がトークを繰り広げる。アニメーションを制作するのは「東京マグニチュード8.0」のキネマシトラス。監督は「CODE:BREAKER」のかおり、キャラクターデザインは「コードギアス 反逆のルルーシュ」の田畑壽之、シリーズ構成は「もやしもん」の高橋ナツコが務める。