ナタリー PowerPush - アニメ「ゆゆ式」楽曲関係者 総勢10名による大座談会
ふわりP、164、add9(ヘリP)、亜沙、DJ UTO、Ryu☆、Starving Trancer、Mayumi Morinaga、mitsu
アニメ本編にコミットメントできない強み
──一方「せーのっ!」はAnother Infinityさんとは正反対というか、ある意味ハーコーなふわりP節。普段のふわりPさんの作風をさらに推し進めた楽曲ですよね。ドラム、ベース、アコースティックギター、ピアノ、ストリングスっていうすごくシンプルな楽器編成で、曲も詞もどこまでも明るくて、どこまでもヌケがよくて、どこまでもかわいらしい内容になっている。
ふわりP ありがとうございますっ! そのコンセプトこそが最初の質問の答えにつながってくるんですけど、アニメ本編っていうのは動きと声で物語を伝えることができるんだけど、僕たちみたいに音楽、しかもオープニング曲やエンディング曲を担当する人間はその本編に直接関わることは難しい。その代わり動かず、しゃべらずにアニメのことを語ることができるんですよね。つまり、僕らは唯一アニメを俯瞰で眺めることができるスタッフだとも言えるんです。で、その俯瞰で眺めた感想っていうのが最初の質問の答え。確かに僕らにも毎日変わることなく、明るく楽しい日々があったよね。そしてアニメを観ている皆さんたちは今まさにそういう時間を過ごしているんだよ。っていうことをオープニング曲を通じて感じてもらいたいっていうのが僕のテーマだったし、だからこそ、こういう曲になったんですよ。
──物語本編にコミットせずにアニメを語ることって難しくはないんですか?
UTO そんな気がするんですけど、ふわりさんの詞ってアニメの制作スタッフから一発OKをもらってるんですよ。初めにもらったデモではメロディは鼻歌だったんですけど、「詞を書いてきてくれ」って言われて。それで作ってもらった詞が、制作委員会の全会一致でOKになるという。
ふわりP ありがとうございますっ!(笑) そこは信じるというか、アニメの作り手の人と同じくらい「ゆゆ式」っていう作品に対する思いや気持ちを込めさえすれば、同じように作品に愛を持っている者同士、そこの帳尻は合うだろうと思っていたので。
盤としてのバランスを考えたリミックスワーク
──リミキサー陣って制作はスムーズでした?
164 いやあ、スムーズじゃなかったですねえ……。
──こと164さんについてはそうだと思います(笑)。ギターロック系のトラックを作る人だと思ってたのに「クラブユースしか考えてない!」みたいなミニマルトラックを作りましたもんね。
164 ええ(笑)。おっしゃる通り、基本的に僕は自分の曲は生楽器系で構成するんですけど、僕ともう1人、デッドボールPが「せーのっ!」をリミックスするって話を聞いたとき、たぶんこの人は生ドラム系の音でくる。しかもコード進行を変えるし、BPMも変えてくるだろう、と思ったんですよ。
──読みはズバリ的中しましたね(笑)。164さんのトラックもそうなんですけど、デッドボールPさんのトラックもビックリしましたもん。なんで王道ポップミュージック「せーのっ!」をあんなバカテクフュージョンみたいなアレンジにしようと?
デッドボールP 164さんの言う通りなんですけど、ふわりさんの原曲を聴いた第一印象が「この曲ってBPMを上げたら、かなりフュージョンっぽくなるんじゃない?」って感じだったので(笑)。その気持ちに忠実に作ってみました。で、ふわりさんは「ゆゆ式」のフワフワした空気感をゆったりした曲調と歌詞で表現してたので「じゃあ僕は浮遊感のあるコード進行でそのフワフワを表現しよう」と。で、オンコード(ベースを構成するルート音のコードと上モノのコードが異なるコード)をバリバリ使ってみました。
164 きっとそういうことをやってくるだろうと思ってたし、「Affection」のリミキサーにはやっぱり生楽器系が得意なヘリPさんと亜沙さんがいるって聞いていたので、僕はちょっと自分の守備範囲から外れようと。そもそも原曲自体、僕の守備範囲に近いといえば近いので、そこからは外れたほうが収録曲にバリエーションが出るんじゃないかと思ったんです。まあ初めてだったんですけどね、あんなリミックスしたの(笑)。
──ほかのリミキサーを驚かそうっていう気持ちはなかった?
ふわりP 僕は164さんのミックスにもデッドボールPさんのミックスにもビックリしたけどね(笑)。
164 あはははは(笑)。「みんなビックリするんじゃねえかな」っていう気持ちよりも「これ、認めてもらえるかな」って気持ちでしたけどね。
UTO うん。声優さんの事務所的にこれOK出るのかな?ってことは考えました(笑)。
──ここまで声を加工しまくっていいものなんだろうか?って。
UTO そうですね。でも二次創作カルチャーが浸透してきているおかげもあるんでしょうけど、アニソンシーンにもミックス違い、アレンジ違いを楽しんでくれる文化みたいなものができあがっているみたいで。すごくいい時代になったなあ、っていう気はしますね。
原曲を裏切るリミックスと原曲に寄り添うリミックス
──亜沙さんも原曲には寄り添わないリミックスをしていますよね。いつもの作品ほどボトムヘビーではないものの、ハードロックギターをガンガン弾きまくるスタイルで。
亜沙 「Affection」の原曲を初めて聴いたとき、納得できたというか。オレも「ゆゆ式」には明るくてポップなイメージを持ってたから、すごく世界観にマッチしたいい曲だと思ったんですけど、だからって同じように「ゆゆ式」の世界を解釈して原曲をアレンジしても似るだけだし、あんま面白くねえな、って思って。だったらオレはやっぱりギターだろう、と。ただ、最初はボーカル以外全部イチから作り替えようと思ったんですけど、ドラムパターンを作っている最中にあんまりしっくりこなくて。だからドラムは原曲を生かして上モノで遊んでみたら、ああいうバランスのトラックになったって感じですね。
──ところがヘリPさんは……。
ヘリP 僕は逆。「Affection」ってものすごく好きな曲なんですよ。言ってみたらストライクなことしかやってなくて。初めて聴いた瞬間からいろんなアイデアが浮かんできたので、僕の大好きな原曲を大事にしつつ、でも僕なりの解釈で作ってみるっていうアレンジの仕方をしてみました。
──だから亜沙さんとは逆に原曲に寄り添いつつも、ヘリPさんの手つきが感じられるトラックになってますよね。
Ryu☆ リミックスしてもらったトラックを聴くのって、そこが楽しいですよね。自分の作った曲なのに、自分のものではないというか。自分の中にはまったくないものがアウトプットされてくるから「おおっ、そうきたか!」ってビックリできる。
ST うん。亜沙さんのもヘリPさんのもどっちも素敵なトラックで、ホント元気が出ましたね。
- 情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)/ Mayumi Morinaga「せーのっ! feat. ふわりP (TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ) / Affection feat. Another Infinity」2013年4月17日発売 / EXIT TUNES
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1300円 / QWCE-00274
- 通常盤 [CD] 1000円 / QWCE-00275
CD収録曲
- せーのっ! feat. ふわりP(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ) / 情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)
- Affection feat. Another Infinity(TVアニメ「ゆゆ式」エンディングテーマ) / Mayumi Morinaga
- セツナイロ feat. Another Infinity(TVアニメ「ゆゆ式」イメージソング) / 情報処理部(大久保瑠美、津田美波、種田梨沙)
ボーナストラック
- せーのっ!(ふわりP feat.MAYU)
- Affection(164 feat.MAYU)
- セツナイロ(azuma feat.MAYU)
- せーのっ!(164 Arrange)
- せーのっ!(デッドボールP Arrange)
- Affection(亜沙 Arrange)
- Affection(add9(ヘリP)Arrange)
- セツナイロ(DJ UTO Remix)
- セツナイロ(Ryu☆ Remix)
- せーのっ!(オリジナルカラオケ)
- Affection(オリジナルカラオケ)
- セツナイロ(オリジナルカラオケ)
- せーのっ!(アカペラ)
- Affection(アカペラ)
- セツナイロ(アカペラ)
初回限定盤DVD
- せーのっ!(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ)PV映像
- せーのっ!(TVアニメ「ゆゆ式」オープニングテーマ)CM映像
- 情報処理部 (大久保瑠美、津田美波、種田梨沙) 特典映像 座談会
「ゆゆ式」
高校で情報処理部に所属する野々原ゆずこ(CV:大久保瑠美)、櫟井唯(CV:津田美波)、日向縁(CV:種田梨沙)の女子3人の日常を描いたアニメ。インターネットを使って気になることを調べ、出てきた情報をもとに3人がトークを繰り広げる。アニメーションを制作するのは「東京マグニチュード8.0」のキネマシトラス。監督は「CODE:BREAKER」のかおり、キャラクターデザインは「コードギアス 反逆のルルーシュ」の田畑壽之、シリーズ構成は「もやしもん」の高橋ナツコが務める。