ナタリー PowerPush - 吉井和哉

本人証言で紐解く 初ベスト盤「18」

YOSHII LOVINSON時代の捉え方が変わった

──2ndアルバム「WHITE ROOM」をリリースしたあとからは、ライブもやるようになりましたよね。

吉井和哉(撮影:有賀幹夫)

そうですね。僕個人はあんまりライブやりたくなかったんですけど。単純にまだ曲もなかったし。でもだんだん「ライブもやらなきゃな」っていう気持ちになってきましたね。だから最初のツアーをやったときに、自分を待ってくれてた人たちがあんなにもいて不思議でした。

──そのライブも当初はそう派手でもなかったけど、名前を「吉井和哉」にしてからのアルバム「39108」のツアーからは、ロックスター的な吉井さんが復活しましたね。

うん、だんだん「俺はやっぱり人々にいやらしい思いをさせるロッカーに戻らなきゃいけないんじゃないか」みたいな(笑)。その部分を別に捨てなくてもいいんじゃないかと思って、もう1回やってみようかなっていうのがライブツアー「THANK YOU YOSHII KAZUYA」っていう。あの金髪になってやたら派手になったときで。

──あれは「やっぱり俺はこれだな」という意識が強まった頃だったのでは?

うーん、でもそれはそれで、やってみなきゃわかんなかったことでしたね。もちろん、派手でロックスター的な吉井和哉を求めてる人たちもいっぱいいるけども、そのときにはYOSHII LOVINSONの頃と比べて「ちょっと軟弱になったね」っていう意見もありましたからね。

──そうですか。でもそれ以降はいい状態をキープできている気がしますけど。

そうですね。それに、こないだの「.HEARTS TOUR」で「吉井さんすごい変わった」て言われたんですよ。「タバコやめたからですかねえ?」みたいな。で、もちろんそれも原因のひとつだと思いますけど……LOVINSON時代の曲の歌い方や、捉え方が変わったんですよ。あのときの曲を今度は得意なポップス風に歌ってやろうって気持ちが自然に出てきて。

──じゃあ自分でも違うふうに歌えた感覚があるんですね。

うん、自分本来の得意な歌い方というか、表現の仕方というんですかね。それはすごく感じました。だから正直言うと今までのツアーでもYOSHII LOVINSONの曲で省かれた曲はいっぱいあったんですよ。リハでやってはみるんだけど。

──練習はしてみるのに、本番では採用されてこなかったんですか?

そう、やってはみるんですけど……まあ詞がややこしいとかね(笑)、いろんな理由があって。そこでスタッフの人が見兼ねて「カンペ見たらどうですか?」「それでもいいから、やりましょうよ」って言ってくれてたんだけどね(笑)。でも今度やるツアー「GOOD BY YOSHII KAZUYA」では、ほんとにやりたいと思ってますし。今度はやりやすいようにアレンジし直すと思うんですよね。避けるとか、「これつまんねえからやらない」じゃなくて。そういうふうになれたのは、すごくいいと思いますね。

「これは全部、吉井和哉です」

──今回リリースされるベスト盤なんですが、新曲が2枚のCDの真ん中あたりに置かれてますね。

うん。DISC 1の後半からDISC 2の前半は新曲なんですよね。これは並べて聴いてもらったときに、YOSHII LOVINSONとちょっと前までの吉井和哉が、最新の吉井和哉を挟んでるっていうイメージでこの選曲にしたんです。悩みに悩んだんですけど。

──その構成に至った理由はなんですか?

自分自身が腑に落ちたんじゃないですかね? バンド時代も、LOVINSONも、吉井和哉も、もう「これは全部、吉井和哉です」っていうことに。で「自分ができることはだいたいこういうことです」と言えるというか。だから新曲を挟みたいっていう気持ちにもなったんだろうと思いますね。

──新曲のひとつである「HEARTS」には、最後のあたりで「帰りたい帰れない」というフレーズに未練のような感情をにおわせながら、次に行こうとしている吉井さんの姿を感じます。

うん、ここは「帰りたい? 帰らない」と歌ってもよかったんですけど。でも「やっぱり後ろ髪引かれるときもあるなあ」という気持ちですかね。でも自分としては今は「もう次に行くときだな」という思いが強いですね。

──わかりました。こうしてソロでやってきた吉井さんにあえて訊きますけど、今、バンドをやってみたいという思いはないですか?

いや、それはなくもないけど、バンドで「いっちょ一攫千金狙ったろか」とは思ってないですね(笑)。今はもう自分が鳴らしたい世界観を鳴らしたいだけだから。もし「そこから外れないと売れませんよ」って言われたとしても、やらないです。それはもう変わらないですね。「そんなわけねえだろ! 自分の鳴らしたい音楽を作れば聴いてくれる人はちゃんといるぜ」って思ってるから。だからそれを貫いていきたいですね。まあ僕のやり方は、常に回りくどいんですよ。ストーリー型なんで(笑)。自分の力で目指す場所までいこうとするから。力づくというか、外部の力を使ってのし上がっていくタイプじゃないから。

──だから、ひとつひとつ納得しながらじゃないと先に進めないということですよね。さらに自分の衝動や葛藤がその過程にあって、それがちゃんと音に込められてないといけないと。

うん。あとちょっと壊れやすい部分がないと魅力的じゃないと思ってるんですよね。車でもそうなんですよ。コストを削減して、壊れないやつで、燃費も良くて、デザインもカッコいいの……ってのは、あまり好きじゃない。やっぱり蹴っ飛ばしたくなるような車のほうが好きなんです(笑)。

──そうですか。何はともあれ、これは吉井さんがそうして考えたり悩んだりしてきて、今ここまで来れたということがわかるベストアルバムだと思います。

そうですね。まあ、そうは言っても……悩んだりしても、結局自分はこれしかできないので(笑)。だからこれからも、悩みながら、いろんな理由を連ねながら、音楽をやっていくと思います。

吉井和哉(撮影:有賀幹夫)
ベストアルバム「18」 / 2013年1月23日発売 / EMI Music Japan
「18」
初回限定盤 [CD3枚組+DVD] / 5800円 / TOCT-29112
通常盤 [CD2枚組] / 3500円 / TOCT-29115
完全生産限定アナログ盤 [アナログ4枚組+CD+DVD] / 12000円 / TOJT-29112
DISC1(3形態共通)
  1. TALI
  2. CALL ME
  3. FINAL COUNTDOWN
  4. WANTED AND SHEEP
  5. トブヨウニ
  6. HATE
  7. 20 GO
  8. BEAUTIFUL
  9. MY FOOLISH HEART
  10. BELIEVE
  11. 朝日楼(朝日のあたる家)
  12. HEARTS
DISC2(3形態共通)
  1. 点描のしくみ(Album Version)
  2. 煩悩コントロール(Album Version)
  3. 血潮
  4. 母いすゞ
  5. ノーパン
  6. ビルマニア
  7. ONE DAY
  8. バッカ
  9. WINNER
  10. Shine and Eternity
  11. LOVE & PEACE
  12. FLOWER
DISC3(初回限定盤、完全生産限定アナログ盤)
  1. シュレッダー(LIVE)
  2. WEEKENDER(LIVE)
  3. 黄金バッド(LIVE)
  4. 欲望(LIVE)
  5. SIDE BY SIDE(LIVE)
  6. BLACK COCK'S HORSE(LIVE)
  7. VS(LIVE)
  8. 恋の花(LIVE)
  9. Don't Look Back in Anger(LIVE)
  10. スティルアライヴ(LIVE)
  11. マサユメ
  12. 甲羅
  13. ギターを買いに
DVD収録内容(初回限定盤、完全生産限定アナログ盤)
  • 点描のしくみ Queen of Hearts 予告編
  • 点描のしくみ Queen of Hearts メイキング
  • LOST -誰が彼を殺したか-
吉井和哉 (よしいかずや)

1966年生まれ。THE YELLOW MONKEYのボーカリストとして1992年にメジャーデビュー。以後、2004年の解散まで数々のヒットを生み出す。2003年10月にはYOSHII LOVINSON名義でシングル「TALI」をリリースし、事実上のソロデビューを果たす。2006年には現在の吉井和哉名義にし、ソロとして3枚目のアルバム「39108」を発表。以降も精力的にリリースやライブを重ねている。グラマラスなサウンドと歌声は多くのリスナーを魅了しており、他アーティストからの評価も高い。2013年1月にソロ名義では初のベストアルバム「18」をリリースした。