ナタリー PowerPush - 山根万理奈

もっと自由に!もっと貪欲に!インディーズで見つけた“新しい自分”

2012年4月リリースのアルバム「空な色」以来、約1年半ぶりに山根万理奈へのインタビューが実現した。その期間で彼女は活動の場をインディーズに移し、初めて自らのオリジナルソングだけで編まれたアルバム「好きで悩んでるわけじゃない」をリリース。そして年間100本近いライブを全国各地で繰り広げてきた。

「インディーズになって正直、厳しいところもある」と素直に現在の状況を語りつつも、その表情は実に清々しく、アーティストとしてひと回り大きくなった姿を見せてくれた。「好きで悩んでるわけじゃない」収録の「君を好きになったんだろう」をもとに完成したオリジナル映画「十二人の変な恋。」や、アルバム制作資金をネット上で募るクラウドファンディングへの挑戦など、話題満載となったこのインタビューから、止まることなく進み続けている絶好調な山根万理奈の“今”を感じてほしい。

取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 佐藤類

面白いことをやっていくハードルが低くなった

山根万理奈

──山根さんは現在インディーズで活動されています。メジャーから離れたことで気持ちの変化はありましたか?

私の場合、「音楽活動をちゃんとやっていくぞ」って気持ちを固めてすぐにメジャーデビューが決まった経緯があったので、メジャーがどういうものかあまりわからないまま過ごしてきたところがあったんです。だからメジャーを離れてみたことで、今までは本当にたくさんの人たちが関わって一緒に仕事をしてくださっていたんだなっていうことに気付かされたところがありましたね。今は超小規模で動いているので(笑)。

──インディーズで活動することに対しての不安はありませんでした?

メジャーが決まったことも自分としては想定外なことでしたけど、メジャーじゃなくなることも同じくらい想定外だったので(笑)、多少の不安はもちろんありました。実際、予算面だったりで厳しいところもありますしね。でもメジャー時代に自分の名前をちゃんと世に出してもらえた部分はすごくあったし、それによってミュージシャン仲間とのつながりもたくさんできたんですよ。だからこそ、今ちゃんと活動していられるんだと思うんです。それにインディーズだからといって大好きな歌が歌えなくなるわけじゃないし、逆に自分が思い描くいろんな面白いことをやっていくハードルはむしろ低くなった感じもしていて。ライブは今まで以上にたくさんできているし、今年に入って新しいアルバムも出せましたし、あまり変わることはないなっていう気持ちですかね、今は。

──アーティストとして一皮剥けたというか、強くなったのかもしれないですね。

そうかもしれないです。ライブに関しても1人で、弾き語りでやることが増えてきたんですよ。最初はそれがすごく不安で、ステージに立つだけでドキドキだったんですけど、今は1人でも素直に楽しめる感じになってきました。そういうところでは鍛えられたのかなって思います。まあでも、それはメジャーでもインディーズでも関係なく、シンガーとして絶対に踏むべき段階だった気もしますけどね。

いい歌を歌っていきたいだけ

──そんな環境の変化に加えて、楽曲に関してもメジャー時代とは違った流れになってきていますよね。5月にリリースされたアルバム「好きで悩んでるわけじゃない」は、山根さんのオリジナル曲だけで構成されていました。歌詞もほぼご自身で書かれていますし。

山根万理奈

そうですね、うん。

──メジャー時代は楽曲提供を受けて活動されていたわけですけど、そもそも活動初期からYouTubeにはオリジナル曲がアップされていたじゃないですか。個人的にはどうしてオリジナル曲をリリースしないんだろうって思っていたんですよね。今だから言いますけど。

あー、そこは別に自分の曲をやるなとも言われてなかったですし、ずっと提供曲だけでいこうとも言われてなかったんですよ。だから自分としては、自分の曲かどうかにこだわらず、いい歌を歌っていきたいっていう気持ちだけだったんですよね。オリジナル曲はメジャーの頃からずっとライブではやっていましたし、いつかリリースしたいねって話もしていたので。

──あ、そうだったんですね。なるほど。

で、ライブに来てくれたお客さんの「あのオリジナル曲、いいよね」っていう声を聞く機会が増えてきたので、じゃあそういった声を踏まえつつ、アルバムとしてまとめてみようかっていう流れになったんです。ライブをたくさん経験することで、オリジナル曲のアレンジや構成が練れてきていたタイミングでもあったので。

──そこはもう自然な流れだったということですね。メジャーデビューした当初、山根さんが「シンガーソングライターと呼ばれたくなかった」と言っている記事を読んだことがあるので、それが楽曲提供を受けていた理由なのかなとちょっと思ったりもしていたのですが。

なんかシンガーソングライターって言っちゃうと、自分で書いた曲しか歌わない感じがやっぱりするじゃないですか。もちろんオリジナル曲を書いてはいるので、そう呼ばれることに違和感があるわけではないんですけど、それによって自分のイメージが固まっちゃうのはもったいないなって思っていたんですよね。だから、「好きで悩んでるわけじゃない」をリリースしたことで、「山根さんはシンガーソングライターなんですね」っていう見られ方だけになっちゃうのは、やっぱりちょっとイヤかなって気持ちはあります。

──じゃあ今でもいい曲との出会いがあれば、それが誰の曲であれ歌うのは全然アリだと。

ですね。歌うことが好きっていう強い気持ちが根底にあるので。そこは何があっても変わらないところなんです。

山根万理奈

──でも、ご自身の言葉とメロディで紡がれた曲たちは、当然のことながらよりリアルな山根さん像を見せてくれるものではありますよね。そういう魅力が「好きで悩んでるわけじゃない」というアルバムには詰まっていた気がします。

あのアルバムは本当にリアルな自分が詰まったものにはなったと思いますね。歌詞に関しては細かい部分までほぼノンフィクションだったりしますし(笑)。だからこそ、今おっしゃってくださったように、山根万理奈というものがより見えやすくなってきたって言葉をいただくことも多かったんです。自分としても「あ、こういうところを出してもいいんだな」「じゃ今度はこういう違った面を見せるのもありかな」とか、いろんなことを思えたりもして。ソングライターとしての今後がより楽しみになってきた感じはありましたね。

「君を好きになったんだろう」をもとにしたオリジナル映画完成!ニコニコ生放送オフィシャルチャンネルにて
2013年11月17日(日)21:00~22:30に試写会実施。

MotionGallery(モーションギャラリー)- クラウドファンディング

ニューアルバム「好きで悩んでるわけじゃない」/ 2013年5月29日発売 / 3150円 / BURGER INN RECORDS / BUCA-1035
収録曲
  1. 努力の歌プランA
  2. あなたに
  3. へなへなん
  4. かくれんぼ
  5. 君へのなみだ
  6. 努力の歌プランB
  7. 冬の歌
  8. あたしの気持ち
  9. 星の見える晴れた夜に
  10. おやすみnight
  11. 君を好きになったんだろう
山根万理奈(やまねまりな)

島根県在住のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeで、カバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開する。透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターが注目を集める。その存在が現在所属する事務所スタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に満を持して1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後ワーナーを離れ、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を発表。年間100本を超えるライブを通じて着実にファンを獲得している。