ナタリー PowerPush - WEAVER

壁を乗り越えるパワーをくれたファンの笑顔に応えたい

そもそもWEAVERは「ついてこいよ!」って感じではない

──そんな皆さんの最新トピックといえば、配信限定リリースだった「キミノトモダチ」と「『あ』『い』をあつめて」が、3月16日からレンタル限定シングルとして登場することですね。改めて、この2曲について聞かせてもらえますか? まず「キミノトモダチ」は、河邉さん作詞、杉本さん作曲のナンバーです。

杉本 この曲はメロディーが先やったんですけど、まず最初に「第89回全国高校サッカー選手権大会」応援歌が決まっていて。スポーツで汗を流したり熱い毎日を過ごしている学生が仲間と共に闘ってる姿、っていうのをイメージして曲を作り始めました。

──ちなみに杉本さんも何かスポーツをやっていたんですか?

杉本 はい、僕はずっと野球をやっていました。どんなスポーツでも、いい試合っていうのは勝ち負けじゃなく、その過程がやっぱり大事なんですよね。本当にひとつになって闘ったときの気持ちは時間が経っても消えるものじゃないと思うし、むしろ、あのときがんばった自分がいるんだから今ももっとがんばらないと、って思わせてくれるものかなって。だから、その力強さみたいなものや、一歩一歩前に進む感じを表現したいと思って書きました。

河邉 僕はそのメロディーを受けて歌詞を書いたんですけど、今回はタイアップもわりと意識しましたね。自分も3、4年前まで高校生でしたから、そう遠い昔の話ではなくて。僕はサッカーではないけど、1日10時間受験勉強をやってた頃を思い出しました。何かに一生懸命がんばった経験は時間が経っても鮮明に思い出せるし、結果がどうこうより、その時間が今の自分の背中を押してくれてるもんなのかなって思うんです。その経験をちゃんとメッセージとして伝えられたらなって思ったので、このタイミングでカタチにしようと。この歌詞は「がんばったその濃い時間が、未来で絶対自分の背中を押してくれる」っていうことを言っていて。それは自分の経験からも深く感じたことなんで、今回で歌詞にできてすごい良かったと思います。

──楽曲全体から感じるやわらかさは、先程杉本さんがおっしゃった「一歩一歩」という言葉がピッタリな気がします。決してドン! と強く押すんじゃなく、優しく見守っているという感じがして。

奥野 そうですね。それ、すごい的確な表現やと思います。僕もこの曲は、ひとつひとつ丁寧に進んでいく力を与えられる曲になってほしいと思っていて。そもそもWEAVERというバンド自体が「ついてこいよ!」っていう感じではないですから(笑)。そういう意味でも僕ららしい曲だと思うし、押しつけがましくない応援歌になったのかなって。

杉本 あとこの曲は、実際に高校サッカーの選手たちに「いい曲」って言ってもらえたのがうれしかったですね。

河邉 国立競技場で演奏して、そこで選手たちと話す機会があったんですよ。まさに彼らに向けて作った歌でもあったから、その反応は何よりうれしかったですね。

50音の最初が“あ”と“い”で、つなげると“愛”になる

──「『あ』『い』をあつめて」のほうは、すごく春らしい雰囲気と、胸にグッとせまる温かさが印象的な曲だなと思いました。

奥野 この曲は僕がメロディから先に作ったんですけど、もともとなんとなく春頃に出せたらいいなっていう気持ちがあって。春といえば卒業シーズンだし、出会いや別れとか、人とのつながりにおいていろいろ変化する時期ですよね。今は学生じゃないという人も、昔を思い出してどこか懐かしくなったり、心が温かくなったり。そういうタイミングに、すごく落ち着いた感じというか、ひとつひとつの音を届けるみたいな曲を作りたいと思ったんですよね。今までの僕らの曲に多い、サビがグッと高くなって張りつめた声で思いを届けるっていうのとは違うパターンをやってみようと思ったんです。

──なるほど。河邉さんは、この歌詞にどんな思いをこめたんですか?

河邉 奥野から特にこういう歌詞がいいっていうオーダーを受けたわけじゃないんですが、やっぱり春をイメージして書いたところはありました。メロディからそういうイメージが自然と湧いてきたので。

──今回の歌詞には、“言葉”というものについて深く考えさせられる要素がたくさんありますよね。

河邉 はい。僕はずっと言葉というものについての歌詞を書いてみたいと思っていて。言葉って、今しゃべってる言葉も、歌の歌詞でも、手紙の文字でも、それを媒介としていろんな思いを乗せて行き交ってる気がするんですよ。だから言葉を船として、そこに愛が乗っていろんな人のもとへ届いていくっていうイメージをしっかり描けたら素敵なんじゃないかなと。

──ああ! その感じ、歌詞からすごく伝わってきますよね。ところで、タイトルを「愛」ではなく「『あ』『い』」で表したのはなぜ?

河邉 日本語の50音の最初が“あ”と“い”で、つなげると“愛”になるのはすごいことだと思うんです。英語じゃそういうわけにはいかないし。

──杉本さんは、この曲を歌ってみてどうでした?

杉本 正直もし1年前の自分だったら、ここまで思いを込めて歌えなかったかもしれないって思いますね。というのも、僕は今まで自分の思いを言葉で伝えるのがあまり好きじゃなかったし、言葉を信じて裏切られてしまったという経験もあるので。でもこの1年間で、お客さんから「ありがとう」という言葉をもらったり、思いを純粋に言葉に乗せて伝えてくれるっていう機会がすごく多くて。僕もそれは素直に受け止めることができたし、言葉で人ってつながれるんだなってことを強く感じたんです。今だからこそ、歌詞の思いを自信を持って歌うことができるんだと思います。

新生活が始まるみんなの背中を押せるようなライブに

──ところで、この2曲はいつごろ制作していたんですか?

杉本 去年の全国ツアー中ですね。どっちも、大体同じくらいの時期だと思います。

──となると、先程話してもらった壁や悩みを経て生まれてきたもの、ということになりますが、壁を乗り越えた先に出てきたものがどちらもすごく優しい歌だったというのは印象的ですね。

杉本 そうですね。その時期はライブをたくさんやっていて、お客さんに伝えたい! っていう思いが3人のなかでかなり強くなってたころだと思うんです。全員の気持ちもすごくひとつにまとまってたし。だから、2曲ともそういう部分が強く出てるのかなって気がします。

──自然と出てきたのがこの2曲ということは、この優しさが今のWEAVERの本質ということなのでしょうか。

河邉 去年1年間は、ファンのみんなから本当にたくさん優しい感情をもらったから。人ってこんなに優しくなれるんやって気付けた面もあったし、その結果、生まれてきたものがこの2曲だったんですよね。だから……この先はどんなものが生まれるかまだわかりませんけど、とにかく今回に関しては皆さんからもらったものが大きいのかなって気がします。

──WEAVERにとって、ライブは本当にさまざまな収穫があったり、気持ちが揺さぶられる時間だといえそうですね。4月の頭には大阪と東京で初のホールワンマンが開催されますが、意気込みはいかがですか?

河邉 会場が大きくなるから緊張するっていうのは特になくて。逆にイスがあるからこそ「ここは座って聴いてもらおう」とか、いろんなことを考えていけるなって思います。ちょうど春休みの時期なので、新生活が始まるみんなの背中を押せるようなライブができたらいいと思います。

杉本 僕らはノリノリで聴く曲もあるけど、歌詞の世界に浸りながら味わってもらうって曲も多いバンドなので。そういう意味では、逆にホールは聴いてもらいやすい環境なのかもしれませんね。楽しみです。

奥野 ホールで自分たちがどんなことをできるのかっていう、すごく前向きな気持ちで今はワクワクしています。お客さんに楽しんでもらうのはもちろん、僕ら自身もいろんな経験値を積めるものにしていきたいです。

レンタル限定シングル「キミノトモダチ /『あ』『い』をあつめて」 / 2011年3月16日レンタル開始 / A-Sketch / ANT-0016

CD収録曲
  1. キミノトモダチ
  2. 『あ』『い』をあつめて

<特典映像>

CD-EXTRA「『あ』『い』をあつめて」ショートフィルム

※被災地への救援活動を優先した交通事情、およびCDショップ様の震災の影響の中、地域によっては商品のお届けが当面できないことがありますことを何卒ご了承下さい。

WEAVER(うぃーばー)

杉本雄治(Vo, Pf)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなるピアノロックバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成となる。神戸を中心に活動を展開し、ライブ会場限定で自主制作盤を発表。2009年3月には神戸VARIT.にて初ワンマンライブを敢行し、大成功を収める。同年8月には夏フェス「SUMMER SONIC 09」にも出演。10月にはA-Sketchより配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビューを果たし、デビュー翌日にはflumpoolの日本武道館公演でフロントアクトを務めた。メンバーの卓越した演奏テクニックと、ピアノの音色が印象的なメロディアスな楽曲が魅力。2010年2月にはメジャー1stミニアルバム「Tapestry」をリリースし、その低価格(980円)を含め話題となった。