ナタリー PowerPush - ワタナベフラワー

甲子園球場で歌うために クマガイタツロウが考えたこと

ライブ前にショートコント

クマガイタツロウ(Vo)

──そこで音楽を一旦辞めようと?

周りの人にも「もう僕辞めますわ。無理っすわ」って言って。でもスタジオの先輩に誘われて修行のつもりで何度かステージには立たせてもらいました。お客さんも誰も知らない人たちばっかりだったのでどうにかして盛り上げようと思ってライブの前に前説をやったんです。

──え、歌ではなく?

はい、ショートコントやりました(笑)。そうしたらお客さんも笑ってくれて。で、そのあと「ワタナベフラワーです!」ってライブ始めたらドーンって盛り上がったんですよ。「恋!愛!恋愛!」って歌っても嘘みたいに盛り上がるんで、もう僕うれしくなっちゃってね。そうしたらそこから「あ、イケるやん」って勘違いが始まるという(笑)。

──あはははは(笑)。

でもたぶん、それが本当の意味で人の気持ちを動かした最初の瞬間やったと思います。そのとき思ったのは、まず人となりを見せることだなって。やっぱり知ってることって大事だなと。極論、音楽を知らなくてもその人のことを知ってるだけで盛り上げれるんじゃないかなって思ったんです。それだけで耳を傾けてくれるんちゃうかなって。そこからバンドの方向性が定まってきました。

僕だけ背水の陣

──現在のワタナベフラワーはクマガイさん含めて3人ですよね。ムサ(B)さんとイクロー(G)さんはどういった経緯でメンバーに?

クマガイタツロウ(Vo)

ムサは最初僕らのお客さんだったんですよ。で、自分でも別にバンドやっててベースでボーカルでした。なぜか僕のこと尊敬してたんですけど、そのときうちのベースが女の子でちょっと一緒にやってくのがしんどくなってきたので辞めてもらって彼を入れました。「1日待ったるから入りたいですって俺に電話してきて」って誘って(笑)。そうしたらバイトかなんかで全然電話かかってこないからこっちからかけて「かけてこいって言うたやろ!」って脅したら「すみません! 入ります! 入らせてください!」ってね(笑)。

──イクローさんは?

僕らがテレビのバンド対決番組みたいなのに出たとき、それをたまたま観てた視聴者でした。彼はそのとき17歳くらいでバンドやっててロックエリートみたいな子で。僕らその番組で負けたのに自分が主催するイベントに出てほしいって連絡してきたので、キミ、頭おかしいんちゃうか、みたいな。でもやりとりしていくうちに面白い子やなって思って、彼が大学のために上京したあともちょくちょく遊びに行ってたんですよ。そのうちワタナベフラワーとは別のバンドやろうなって話にもなったんですけど、当時のうちのギターがふわっと辞めたので彼にお願いすることになって。そこから一緒にやることになりました。

──クマガイさんだけでなくイクローさんも曲を書いてますもんね。

彼の書く曲はやっぱり好きだし、ちょいちょい「君、天才や」って思うこともあって。でも当時彼はまだ大学生で東京だったので、僕らのいる関西まで通ってもらいました。

──大学生に長距離を通わせるって厳しいですね……。

いや、イクローは家が医者で、ムサも有名な会社の息子で。だからこいつらバンドなくてもまあまあ安泰なんですよ。僕だけ背水の陣でね。誰が一番ロッカーやねんって話ですよ。これダメだったら僕は宝石商になります(笑)。

ミニアルバム「YOUNG!」2014年2月12日発売 / 1500円 / three cheers / THCH-004
収録曲
  1. 運ぶday
  2. ピッピッピッ
  3. 僕のふるさと案内
  4. 最後に笑って
  5. ダンシング男子はジョギング女子に恋をする
ワタナベフラワー
ワタナベフラワー

2001年に神戸で結成。現在はクマガイタツロウ(Vo)、ムサ(B)、イクロー(G)の3人編成で活動中。「ワクワクロックンロールバンド」と銘打たれた彼らのライブではクマガイの軽快なMCだけでなく、シャボン玉や風船を使ったエンタテインメント性の高いステージが繰り広げられ話題を集めている。2012年に「てんとうむし」がNHK「みんなのうた」に採用。翌2013年にはワタナベフラワー&ゆーゆで「タン・タン・タン」を発表し、2年連続で「みんなのうた」オンエアという快挙を達成する。2014年2月にはミニアルバム「YOUNG!」を発表する。