ナタリー PowerPush - 露崎春女
元祖R&Bクイーンイズバック! 新作「Now Playing」は攻めの姿勢全開
露崎さん、自分で詞書かなくていいんじゃない?
──歌い方にしても、自分の歌を一歩引いた場所から見て、どういうふうに歌ったらカッコいいとか、面白く聴こえるのかとか考えて歌ってらっしゃる印象を受けたんですよ。
それはまさにそうですね。それは他人の作品を手がけて思い始めたことかもしれないです。「ここは行っちゃえ!」って思い切れるのも、自分の斜め後ろからもう1人の自分が見てるからかもしれないですね。
──そのせいか独創的なメロディや譜割りが満載で。
あー、そうなんですよ。自分で書いてない曲、例えば「Sacrifice」や「Bye Bye Gloom」は、「この声だったらこういうふうな曲にしたら面白いんじゃないか?」なんて、まるで自分のことじゃないように発注して。
──プロデューサー的に?
そうそう(笑)。「でも、自分が歌うんだよな」みたいな、不思議な感じでした。「こういうの露崎さん、歌ったらいいんじゃないかしら?」って、他人事みたいに考えてるみたいな感覚は、確かにありましたね(笑)。作り終わったときに思ったのは、なんか「あたしのアルバムなんだけど、あたしの手の中で全部作ったんじゃなくて、半分は違う人がやってる」ってことで。なんでかな?
──二重人格的な(笑)。
(笑)。私の手を離れたなーって感じ。でも、それでいいんですよ。そういうふうに曲もお願いしたから。
──それは、ボーカリストとしてもっと新しい面を出していきたいって欲求からですか? それとも単純にそういう作品にしたかったということですか?
モチベーションとしては……露崎さんを……「露崎さん、自分で詞書かなくていいんじゃない?」とかそういう。
──ジャッジを?
そそそ。誰かほかの人に言われたんじゃなくて、自分が、客観的にやりたかったんです。
自分の感覚をバッチリ共有できるクリエイターたち
──では、あがってきた作品の中で、ご自身の発注からとんでもなく飛躍した曲とかありますか?
「どういうことだー?」とはならなかったかな(笑)。お願いするときに「こんなことだと思うんですよね」って、今回の「'80s」っていうテーマの背景から、今の音楽の流れまで全部説明したから、そこがブレることはあんまりなかったというか。例えば、Nao'ymtくんにお願いした「Bye Bye Gloom」は、「基本的にこういうギターリフの曲が欲しいんだよね。でも、R&Bなんだよね」なんて話をして。今の時代って、すごくいろんなものがミックスされてる、混ざってるじゃないですか? 音楽だけじゃなくてファッションとかもそうですけど。なので「そういうことだと思うんだよね」みたいな話をしたら、バッ!とドンピシャの曲が返ってきて。80年代のエッセンスのほかに70年代とかも入ってて、「バッチリじゃないですか!」って。そういう感覚を「はいはいはいはい」って共有できる人たちだったってことですよね。
──なるほど。
だからもう、「みんな(クリエイター達)スゴイのよー!」って、近所のおばさんみたいに自慢したい(笑)。BL(BACHLOGIC)さんもピカイチだし、実際には会えてないけどロスのマークさん(Mark de Clive-Lowe)もあがってくるものは素晴らしいし。
──マークさんとはネット上のやり取りですか?
そうです。最初はハウス系の4つ打ちトラックだったんですけど、私がそれにメロディをつけて送ったら、今の形で返ってきて。「こんなんなった! 新しすぎる!」ってびっくりしちゃった。
──たしかにタイトルどおり「Emergency」感バリバリのエレクトリックなトラックで。
歌詞がまたすごいんですよ。書いてくれたMOMO"mocha"N.ちゃんは帰国子女で、使う言葉が日本とアメリカの半々って感じで、面白いんです。こういう曲の歌詞で「ひゃーくとおばーん(110番)」ってあてるなんて(笑)。そういう面白い人たちとやれて、すごく勉強になりましたね。
CD収録曲
- Sacrifice
- Bye Bye Gloom
- Love Flame
- Real Love
- A New Day
- Emergency
- Let Go
- Alright
- Still Of The Night
- You Lied
- さよならの誓い
- Time Is Jewelry
EP収録曲
- Sacrifice
- Believe Yourself(Live ver.)
- Saving All My Love For You(Live ver.)
- Love Takes Time(Live ver.)
- Through The Fire(Live ver.)
露崎春女(つゆざきはるみ)
神奈川県出身の女性ボーカリスト。1995年10月にシングル「TIME」でメジャーデビュー。パワフルで情感豊かな歌声を持つR&Bシンガーとして人気を博す。2001年11月にアーティスト名義をLyricoに変更。曲調もオリエンタルな雰囲気の漂うポップスとなり、ファン層を広げる。2008年10月にはアーティスト名義を露崎春女に戻し、キャリアを総括する2枚組アルバム「13years」をリリースした。2011年2月、所属レーベルをヤマハミュージックコミュニケーションズに移籍。4月20日に待望のニューアルバム「Now Playing」を発表する。