ナタリー PowerPush - the brilliant green
5thアルバム「BLACKOUT」 川瀬智子インタビュー
変化していくよりブランド感を徹底したい
──「BLACKOUT」というアルバムタイトルにもthe brilliant greenらしさは漂っていますよね。
記憶が抜けることを「BLACKOUT」って言うらしいのと、あとは暗転っていう意味ですね。基本的にthe brilliant greenのスタンダードはやっぱりこうこうと明るいというよりは薄暗いイメージなので、暗闇の中で目が慣れてリラックスしてるような、そういうモードをちょっとイメージしてます。心地いい感じというか。
──外に対する憧れはありつつも、自分が今いる環境を見つめ直してみると案外心地いいものだよっていうメッセージは、日常のさまざまなシーンに置き換えられそうな気がします。
そうなんですよね。だから、the brilliant greenという名前でここからどんどん変化していきたいっていう気持ちは全然ないんですよ、今の段階では。やっぱり"らしさ"みたいなものを徹底してやっていくほうがいいなっていうのはすごく思うんですよね。
──今いる場所でいいっていう気持ちは決してあきらめではなく、そこにまだ何かがあるという確信なんでしょうね。
何があるかっていうのはわからないですけど、これから作っていきたいのはブランド感なんですよ。聴いてくれる人のフィーリングとかテンションとか「こういうときにはブリグリ聴きたいな」とか、そういう期待に応えられる作品を作っていきたい。そういう意味でのブランド感。だから、いろんなthe brilliant greenを見せるっていうよりは、(Tommy)february6のカラー、(Tommy)heavenly6のカラーがあるように、the brilliant greenのカラーをイメージどおりにやっていけたらいいなって思うんですよね。
──リスナーとしては安心感がありますよね。
そうですね、うん。だからthe brilliant greenだけを聴いて満足するんじゃなくて、必要なときに選んでもらえるようなイメージ作りですよね。そういうことをそれぞれのプロジェクトごとにしっかりやっていきたいなって。
情報過多の時代についていくつもりはない
──そのブランド感っていうのは、もうすでに確立しているような気もしますね。本作からもthe brilliant greenならではの魅力をちゃんと感じましたし。
そうですね。だから、そこをもっと追究していきたいっていうか。それぞれがブレないやり方でやりたいなって。もちろん自分たちは毎日違う経験をしているので、新しさは自然と投影されてはいくと思うんですよ。でも無理に奇をてらったりとか、こういうことにチャレンジしてみようとか、そういうことはしないっていう。自然に守っていく感じですね。
──でも音楽シーンの流れの速さを考えると、そこを守ることは難しいことでもありますよね。
なかなかね。時代的にどうしても情報過多なんで、今音楽をやるのって大変だと思いますよ。何をやりたいのか考える時間もなく新しいものがどんどん入ってくるし。私たちの世代とは音楽の歩み方が全然違いますもんね。昔は今みたいなスピードで音楽を取り入れてなかったですから。だから向き合い方がそもそも違うのかもしれない。私なんかは意識して情報制限してますからね。今の流れにはついていけないし、ついていきたいとも思わないので。そこについていこうとすると、たぶん音楽じゃなくなっちゃうし何が自分の表現なのかもわからなくなるから。そもそもついていく元気がないっていうのもあるんですけど。だからそれでいいと思ってます(笑)。
──アハハハ。とは言え、そんなthe brilliant greenが現在も第一線でしっかりと聴かれている状況はあるわけで。
いえいえ、全然全然。戦いですよね、常に。自分の感性と時代との。だからまあ今がふんばりどきかなって思いますけどね(笑)。
──その裏には確固たる自信が見えているような気もしますけど。
そこはね、さっきも言ったように、世代的に音楽に対してものすごく熟成して向き合ってきたというか。1曲に対して、歌詞のワンフレーズに対して何回も解釈したりしながら聴いてきましたからね。今ほど情報がなかったから。そういうこだわりみたいなものは自分自身に対してもすごくあるので、そこが自信につながってるのかもしれない。揺るがない感覚はあるので。
──で、このアルバムを完成させた今、the brilliant greenにとって次にやりたいことはもう見えているわけですよね。
次はこれだなっていうのは制作が終わって気づきましたね。ブランド感を追求していきたいっていう理想を持ちつつ、自分たちの考え方やイメージや意志をどこまで通せるかっていうのがこれからの課題ですね。
──じゃあこの先はいいペースでいろんな活動を見せてもらえそうですか?
うん、そういうふうにしていきたいと思ってます。
CD収録曲
- BLACKOUT
- BLACK DARK NIGHT
- I'm sick of this place
- Talk to me
- Blue Daisy
- Break Free
- Going Underground
- WHIRLWIND
- Spring Gate
- Song 2
- I Just Can't Breathe...
- LIKE YESTERDAY
- BLUE SUNRISE
初回盤DVD収録内容
- LIKE YESTERDAY MUSIC VIDEO
- Blue Daisy MUSIC VIDEO
- I Just Can't Breathe... MUSIC VIDEO
- LIKE YESTERDAY MAKING MOVIE
- Blue Daisy MAKING MOVIE
- I Just Can't Breathe... MAKING MOVIE
the brilliant green(ぶりりあんとぐりーん)
奥田俊作、川瀬智子によるロックバンド。作曲・アレンジ・ベースを奥田、作詞・ボーカルを川瀬が担当。1997年にシングル「Bye Bye Mr.Mug」でデビューし、その独自の世界観と完成度の高いサウンドが注目を集める。1998年にリリースしたシングル「There will be love there~愛のある場所~」はメガヒットを記録。その後the brilliant greenの他に、川瀬のソロプロジェクト「Tommy february6」「Tommy heavenly6」でも活動。the brilliant greenとしては、2010年2月に「LIKE YESTERDAY」、6月に「Blue Daisy」、8月に「I Just Can't Breathe...」のシングル3枚をリリースし、2010年9月に約8年ぶりとなるオリジナル5thアルバム「BLACKOUT」を発表。