音楽ナタリー PowerPush - StylipS

声優ユニットの進化形 新作レビュー&ライブレポ

声優の能登有沙、松永真穂、豊田萌絵、伊藤美来からなるユニット・StylipSが、通算8枚目となるニューシングル「ギブミー・シークレット」を5月27日にリリースした。新メンバー豊田&伊藤の加入から2年が経ち、強力なチームワークを手に入れた彼女たち。今回の特集は、StylipSの個性が遺憾なく発揮された新作「ギブミー・シークレット」のレビューと、4人の絆の深さが感じられたライブツアー「StylipS FIRST LIVE TOUR 2015 THE SUPERSONIC SUPERNOVA」最終公演レポートの2本立てでお届けする。

取材・文 / 成松哲(P1) 、臼杵成晃(P2) ライブ撮影 / 尾形正茂、江藤はんな

声優? アイドル? いいえ、StylipSです!

「夢をいっしょに叶えたい——。僕たち世代の声優ユニット」

そんなキャッチフレーズを携えて、2012年にデビューしたStylipS。能登有沙、松永真穂、豊田萌絵、伊藤美来が顔をそろえた2013年4月のメンバーチェンジを経て現在に至るまで、着実なステップアップを重ねながら華々しい活動を繰り広げている。

能登が「マンガ家さんとアシスタントさんと」の音砂みはり役、松永が「咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A」の二条泉役、伊藤が「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた」の宇佐美奈々子役、豊田が「人生相談テレビアニメーション『人生』」の九条ふみ役を務めるなど、それぞれ注目のテレビアニメ作品に出演。さらにその一方でユニットとして7枚のシングルと2枚のアルバムを発表し、また2015年3~4月には東名阪ツアー「THE SUPERSONIC SUPERNOVA」を成功裏に収めている。

彼女たちの最大の武器にして魅力は、そのライブパフォーマンスにある。StylipSでコリオグラファーとしても活動し、また自身の出演作はもちろん、ほかのアニメやゲームのダンスシーンの振り付けやモーションアクターをも担当する能登や、最近クラブDJとしての活動も展開している松永(参照:StylipS松永、ASOBINITEで小室哲哉らと競演)と、ダンスミュージックに通じるメンバーを擁するだけあってステージ上の彼女たちは“ダンサブルでタフ”。昨年全国各地で開催された「15th Anniversary Live ランティス祭り 2014」などさまざまなステージにおいて、そのルックスや“若手声優4人によるアイドルユニット”という看板とは半ば裏腹な、ラブリーながらも力強いアクトを見せつけている。

「ハイスクールD×D」を彩るトライバルなダンスチューン

このたびリリースされた8thシングル「ギブミー・シークレット」の表題曲は彼女たちの魅力が存分に詰め込まれた1曲だ。

CDプレーヤーやパソコンの音楽ソフトの再生ボタンを押すと、まずはそのアレンジに耳を奪われるはず。サンバ、レゲエと目まぐるしく変化し続けるドラムパターンと、ブリブリとうねるヘヴィなベースラインの上ではサイドチェインの効いたトランシーなパッドシンセが飛び交いまくる。ミス・モノクローム「ポーカーフェイス」やBerryz工房の楽曲、スマイレージの楽曲など、ダンス色の強いアイドルソングで鳴らす近藤圭一によるこの曲のアレンジは“ド派手”のひと言。ダンスで魅せる彼女たちならずとも、思わず“腰を持っていかれそう”になる、踊れる1曲に仕上がっている。

そしてメロディと歌詞は、StylipSのもう1つの魅力である“ラブリー”で、しかもコミカルなものに。「ギブミー・シークレット」は2015年4月から放送のテレビアニメ「ハイスクールD×D BorN」のエンディングテーマ。作詞の真崎エリカと作曲の宮崎まゆは、主人公の男子高校生・兵藤一誠の成長と熱いバトルを魅せる一方で、カラッと明るい下ネタ、“ラッキースケベ”を連発するコメディ作品にピッタリの言葉と音を用意した。

どこまでも陽性な宮崎メロディに乗せてStylipSの4人が歌うのは、大切な思いを明かせない誰かに「曖昧なのはヤだな No secret 賛成!」「アンサー届けてね」と、独特なレトリックで語りかけられる、まさに“ギブミー・シークレット”なメッセージ。「大事なトコばっかイシン→フデンシン」「最終的にはアナログ通信」、「じゃあ、ココでひとつ質問」「だけどね ジッサイそれが大問題」と細かくライミングするなど、そこかしこに仕掛けられた言葉遊びも楽しい。

能登有沙&豊田萌絵による“B・A・K・A”じゃないラブソング

対するカップリング曲は、能登と豊田によるユニット内ユニット・TEAM B・A・K・Aの「destiny」。能登のブログ(参照:能登有沙オフィシャルブログ「癒され日和」)によるとこの2人、「終始自由に行動し、脊髄反射で発言をする。よって内容の無い発言が多い。つまり、ビーエーケーエー」だから「内部でこっそりと」ユニットを結成したのだとか。そしてこのたび、このなんとも自虐的は2人がメジャーシーンでお披露目されることとなった。

そんなTEAM B・A・K・Aの記念すべき1曲目「destiny」は、“B・A・K・A”からはおよそほど遠いシリアスタッチなミディアムチューンだ。サウンドの肌合いは「ギブミー・シークレット」と地続き。パッドシンセや太いシンセベースなどトランシーな楽器隊で構成されていながらも、和テイストあふれたメロディはメロウで、歌詞は切なくいじらしい。“B・A・K・A”の2人は、恋の“運命”にとまどいながらも、「特別な今があってもいいじゃない アダムとイブみたいに」と一歩踏み出そうとする、女子の揺れる思いをかわいらしくもはかなげに歌い上げている。

ニューシングル「ギブミー・シークレット」 / 2015年5月27日発売 / Lantis
初回限定盤 [CD+DVD] 1944円 / LACM-34349
通常盤 [CD] 1296円 / LACM-14349
CD収録曲
  1. ギブミー・シークレット / StylipS
  2. destiny / TEAM B・A・K・A(能登有沙&豊田萌絵)
  3. ギブミー・シークレット(inst.)
  4. destiny(inst.)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「ギブミー・シークレット」Music Clip
StylipS(スタイリップス)

スタイルキューブに所属する声優の能登有沙、松永真穂、豊田萌絵、伊藤美来からなるユニット。2011年12月に活動を開始し、2012年2月にシングル「STUDY×STUDY」でランティスよりメジャーデビューを果たした。2013年4月の1stベストアルバム「THE LIGHTNING CELEBRATION」のリリースとともにオリジナルメンバーの小倉唯と石原夏織が卒業し、スタイルキューブ研修生だった豊田と伊藤が加わる。新体制で3枚のシングルを発表したあと、2014年11月に2ndアルバム「THE SUPERNOVA STRIKES」を発表。2015年春には東名阪3会場で初のライブツアー「StylipS FIRST LIVE TOUR 2015 THE SUPERSONIC SUPERNOVA」を行い、いずれも大成功に収めた。同年5月には通算8枚目のシングル「ギブミー・シークレット」をリリース。