音楽ナタリー PowerPush - Village Vanguard presents Sing Your Song! 2015

ヴィレヴァンのインスト仕掛け人+人気プレイヤー3名 新木場競演前の座談会

4月26日に東京・新木場STUDIO COASTでヴィレッジヴァンガード主催のイベント「Sing Your Song! 2015」が開催される。出演バンドはすべてインストゥルメンタルで固め、しかしジャンルは多種多彩という、今までありそうでなかった画期的なイベントには魅力的な8組がラインナップされている。そこで今回はこの日の出演者の中から、Schroeder-Headzの渡辺シュンスケ、fox capture planの岸本亮(Key)、→Pia-no-jaC←のHAYATO(Piano)を招き、イベントの企画者であるヴィレッジヴァンガード下北沢店の金田謙太郎も交えた座談会を実施。インストの多面的な魅力についてじっくりと語り合ってもらった。

取材・文 / 金子厚武 撮影 / 笹森健一

インストバンドがヘッドライナーを務めるフェスを見たかった

──まず金田さんにお伺いすると、なぜインストバンドのみを集めたイベントを開催しようと考えたのでしょうか?

左からHAYATO(→Pia-no-jaC←)、岸本亮(fox capture plan)、渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)、金田謙太郎。

金田謙太郎 音楽って、静かな人生の邪魔をしてくるじゃないですか?(笑) うっかり感動しちゃったり、メッセージに突き動かされちゃったり。それって音楽っていうより言葉に動かされることが多いと思うんですけど、インストはそういうところから自由に開放されている気がして、もうちょっと言葉に捉われない、気楽に音を楽しむ、散歩みたいなイベントが1つぐらいあってもいいんじゃないかと思ったんです。がんばらないフェスっていうか(笑)、力を抜いて気楽に音と向かい合えるようなフェスにするには、インストが一番かなって。

──なおかつ、括りは「インストである」ということだけで、ジャンルはホントにバラバラなのが面白いですよね。

金田 インストの多彩さって、実はちゃんと語られる機会があんまりない気がしたんです。例えばロックにはいろんなロックがあるっていうふうに語られるけど、インストっていうと、ジャズがあって、クラシックがあって、なんとなくそれ以外みたいな。でも実はすごくカラフルな音楽で、皆さんやってることは全然違うんだっていうのを見せたかったんですよね。あと普通のロックフェスだと、インストバンドがヘッドライナーを務めることっておそらくないですよね? なので、インストバンドがヘッドライナーを務めるフェスを僕が見たかったっていうのがスタートだったりもします(笑)。

──同じインストバンドでも、お三方のバンドのほかにSPECIAL OTHERS、Nabowa、DEPAPEPE、mudy on the 昨晩、toconomaと、これだけ多彩なメンツがそろうことってなかなかないですよね?

岸本亮 僕で言うと、やっぱりクラブジャズシーンから派生した同世代のバンドが近くにいることが多くて。JABBERLOOPだとそういう4バンドぐらいでUNITでイベントをやったり、fox capture planだとレーベルのフェスみたいなのを新宿LOFTで年1回やったりしてるんですけど、それも客層とかジャンル感が近いアーティストが集まりますね。たまにツーマンとかで違うタイプのバンドとやることもありますけど、今回みたいに客観的に見てもちょっとジャンルが違う人たちが一堂に会すっていうのはあんまりないので、実はお客さんもこういうの見たかったんじゃないかと思いました。

──岸本さんご自身はラインナップを見てどんな印象を持ちましたか?

岸本 SPECIAL OTHERS、Nabowa、toconomaとかは、わりと野外フェスのイメージが強いですよね。最近インストバンドの野外フェス需要が高いっていうのは思ってたんですけど、それでもその3バンドが集まるっていうのは珍しいと思いました。あとmudy on the 昨晩は今回の出演者の中でも異質かなって思うんで、逆にすごい楽しみです。

──シュンスケさんはどんな印象でしたか?

渡辺シュンスケ(Schroeder-Headz)

渡辺シュンスケ すごい豪華だなっていうのが最初の印象で、今日はたまたまピアニストが3人集まってますけど、ピアノ縛りみたいなイベントはけっこうあるんですよね。でもそういうときは歌もののアーティストもいて。今回みたいにインストだけで大きい会場借りてやるっていうのは、「その手があったか!」って思いました。

HAYATO 実は僕ら(→Pia-no-jaC←)もインストフェスっていうのをやりたかったんですよ。なので「先やられた!」って思いました、ホンマに(笑)。初めてお会いするバンドさんもいるので、また新しい刺激をもらえると思いますし、すごい楽しみです。

──金田さんはラインナップを決めるにあたって、どんなこだわりがありましたか?

金田 DEPAPEPEはどうしても入れたかったんですよね。SPECIAL OTHERSとかNabowa、toconoma、あとmudy on the 昨晩もですけど、ロックを軸にしたフェスに出てる人たちと、Schroeder-Headzとかfox capture planみたいに「ジャズ」っていう括りで見られてる人たちがいて、インストのシーンってあともう1個あるんですよ。それを体現しているのが→Pia-no-jaC←とDEPAPEPEで、だからこそ外せなかったんです。

岸本 ジャンルは違っても「インスト」っていう括りはあるから、それぞれのバンドについてるファンがこのイベントに来れば、新たな発見をするきっかけになるんじゃないかっていうのはすごく思います。

金田 そうなってほしいですね。さっきも言いましたけど、やっぱり言葉ってすごく強いので、それがあるとどうしても“歌とそれ以外”になっちゃう。なので、掟ポルシェさんのツイートを引用させてもらうと(参照:掟ポルシェ (@okiteporsche) | Twitter)、音楽を言葉から解放してあげるようなイベントにしたいんです。

Village Vanguard presents「Sing Your Song! 2015」2015年4月26日(日)東京都 新木場STUDIO COAST / OPEN 13:00 / START 14:00
Village Vanguard presents Sing Your Song! 2015
出演者

SPECIAL OTHERS / →Pia-no-jaC← / Nabowa / DEPAPEPE / mudy on the 昨晩 / fox capture plan / Schroeder-Headz / toconoma
VJ:丸橋圭太郎×土肥武司×比嘉了×ウサミタクト

VJプロフィール
丸橋圭太郎
2008年頃より電気グルーヴへのツアーVJ映像を提供開始。大型フェス、テレビアニメ、CM、ゲーム、映画など活動の場は多岐にわたる。代表作にRYUKYUDISKOの廣山哲史アーティスト写真やスクウェア・エニックス「MoreSQ」メイングラフィックなど。
土肥武司
1999年よりCG制作を開始。CGとプログラミングをかけ合わせた映像表現を中心に、VFX、VJ、インスタレーション、ゲームなどさまざまなフィールドで創作活動を行っている。近年では、プラネタリウムでの音楽イベントのビジュアルシステムや、LEDと映像を使った日光東照宮でのインスタレーションなどを手がけている。
比嘉了
多摩美術大学情報デザイン学科卒業後よりフリーランスとして活動し、2011年より株式会社ライゾマティクスへ所属。2015年より再度フリーランスへ。リアルタイム3Dグラフィックス、コンピュータビジョンなどの高度なプログラミング技術、多種多様なプロジェクトに関わった経験を生かし、インスタレーション、リアルタイム舞台演出、ライブパフォーマンスなど幅広い作品を制作している。
ウサミタクト
2011年頃からプログラミングの勉強を始める。2014年にロシア・モスクワで行われた大規模なマッピングイベント「Circle of Light」に参加。ドイツ・デュッセルドルフで行われた国際ガラス製造・加工機材展「GLASSTEC」にて建築インスタレーションの照明計画などを担当する。
HAYATO(ハヤト)

HIRO(Cajon)とのインストゥルメンタルユニット→Pia-no-jaC←のピアノ担当。鍵盤と打楽器というシンプルな編成ながら、重厚かつ多彩な音を鳴らすのが特徴。その独自の音楽性が各方面から注目を受け、ディズニーやスクウェア・エニックス、ショパンなど多数のトリビュートアルバムに楽曲提供し、宝塚歌劇団への楽曲提供やラジオのジングル制作など幅広い活動を展開。葉加瀬太郎とのコラボレーションアルバム「BATTLE NOTES」やクラシックのカバーアルバム「EAT A CLASSIC 5」でも話題をさらう。2014年10月から11月にかけて4カ国8都市でヨーロッパツアーを敢行。2015年3月にはライブDVD「Zepp Entertainment ~→PJ←ワンダーランド~」をリリースした。

岸本亮(キシモトリョウ)

1983年生まれ。2005年3月にクラブジャズバンドJABBERLOOPに加入し、躍動感のある鍵盤さばきでオーディエンスを魅了する。2011年にはカワイヒデヒロ(B / Immigrant's Bossa Band)、井上司(Dr / nhhmbase)とともにfox capture planを結成。“現代版ジャズロック”をコンセプトとした情熱的かつクールで新感覚なサウンドを展開している。2015年はfox capture planとして3枚のアルバムリリースを予定しており、4月にその第1弾「UNDERGROUND」を発表する。

渡辺シュンスケ(ワタナベシュンスケ)

ソロプロジェクトSchroeder-Headzのほか、数多くのアーティストのサポートでも活躍するキーボーディスト。2010年、アルバム「NEWDAYS」よりポストジャズプロジェクトSchroeder-Headzを始動。ピアノ、ベース、ドラムによるアコースティックなトリオサウンドとプログラミングを融合させ、美しいメロディと有機的なグルーヴが印象的なサウンドを紡ぎ出す。2013年12月にはリミックスプロジェクトの一環としてミニアルバム「Sleepin' Bird」を発表し、2014年2月にメジャー移籍第1弾アルバム「Synesthesia」をリリース。また、土岐麻子とともに「土岐麻子 meets Schroeder-Headz」としても精力的にさまざまなイベントに出演している。

金田謙太郎(カネダケンタロウ)

「Sing Your Song! 2015」オーガナイザー。ヴィレッジヴァンガード下北沢店のCD担当バイヤーとしてSotte Bosseや→Pia-no-jaC←の作品をヒットさせ、コンピレーションアルバム「DISNEY ROCKS!」シリーズのプロデュースや、スクウェア・エニックスによるゲームミュージックのアレンジコンピレーションアルバム「SQ」シリーズの協力を手がける。