ナタリー PowerPush - 柴咲コウ

「未来は自分でつかむもの」新作に込められた思い

柴咲コウの作詞術

──そういえば、本作のアートワークは収録曲のイメージを踏まえつつ、さまざまなモチーフが散りばめられていますね。

好きなモチーフを一緒に入れたくて。今回はノートとペンを入れてもらいました。

──ノートとペンにはこだわりが?

うん、大好きなんです。

──僕もノートとペンは好きでよく持ち歩いています。手書きのほうがアイデアがまとまる気がするので。

柴咲コウ

あっ、わかります。それは手書きだと文字に魂が宿るからだと思う。書いたときの念のようなものが、文字に反映されるような気がして。その念の入った文字を見ながら書くと、また新たなアイデアが生まれたり。極端な話、携帯やPCはただの記号の羅列じゃないですか。だから書いてて、よく「あれ、何書いてたんだっけ?」ってなるんですよ(笑)。

──じゃあ、作詞は手書き派ですか?

基本的には手書きですね。私は作詞するとき、無限にループさせたトラックを聴きながら徐々に書いていくんです。曲から受けたインスピレーションを少しずつ言葉として紙に記録していって。で、そうやって書いていくと文字の雰囲気が変わるポイントとかがあるんです。

──文字の雰囲気が変わる?

私、絵心は全然ないんですけど、文字心みたいなのは結構あって(笑)。例えば、最初はあるイメージをもってエッジの効いた右肩上がりの字を書いてても、途中からイメージと違うなあ、と思うと丸い字にして、新しい紙に書き始めるんです。そうすると、また違った視点の新しいアイデアが生まれたりします。そうやって書いていった文字たちをまとめて1曲にするんです。

音楽は自分の思いを吐き出す場所

──ところで、柴咲さんは映画に、ドラマに、CMにと現在も大忙しなわけですよね。そんな中で柴咲さんが音楽を続けるモチベーションというのは、どこにあるのでしょうか?

私にとって音楽は自分の思いを「わーっ!」って吐き出す場所なんです。だから、ただ歌を歌うことが大事なんじゃなくて、ちゃんと自分の魂を込めた歌詞を歌うことに意味があるというか。そうしないと、どんどん思いが溜まって苦しくなってきちゃう。それって、すごくフラストレーションになるんですよね。だから、自分のためにも音楽を続けたほうがいいんじゃないかなって思ってます。

──音楽には自浄作用がある、と。

そうですね。あと、曲になると自分の思いを改めて客観視することができるし。

──演技は溜まった思いは発散されないんですか?

お芝居はひとりではできないので。やっぱり料理してもらう側というか。どちらかというとボードゲームの駒のように動かしてもらう立場なんです。ただ駒のデザインや色みたいな部分では、自分の意見も反映されるけど。でも、それも周りと合ってないと浮いちゃうし、それなりに空気が読めないとできないんですよ。音楽で歌うことは、そういうのをあんまりしなくてすむから(笑)。

柴咲コウ - "ANOTHER:WORLD" (90sec.ver)

ニューシングル「ANOTHER:WORLD」 / 2012年6月13日発売 / NAYUTAWAVE RECORDS

CD収録曲
  1. ANOTHER:WORLD
  2. アドラスティアの抵抗
  3. ANOTHER:WORLD
    -ANOTHER:FUTURE Remix-
    ※通常盤のみボーナストラック
  4. ANOTHER:WORLD(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • ANOTHER:WORLD -Music Video-
柴咲コウ(しばさきこう)

1981年8月5日生まれ、東京出身の女優 / シンガー。2001年に公開された映画「GO」での演技が高く評価され、日本アカデミー賞で最優秀助演女優賞、キネマ旬報ベスト・テンで最優秀助演女優賞などを獲得した。シンガーとしてはシングル「Trust my feelings」で2002年にデビュー。2003年にRUI名義でリリースしたシングル「月のしずく」が100万枚を超える大ヒットとなった。また福山雅治とのユニットKOH+名義でシングル「KISSして」を2007年に、「最愛」を2008年に発表。さらに2011年にはDECO*27とTeddyLoidとともにgalaxias!というユニットを結成し、アルバム「galaxias!」を11月に発売している。2012年3月にシングル「Strength」をリリースし、6月にはシングル「ANOTHER:WORLD」を発表。同曲はフジテレビ系ドラマ「未来日記-ANOTHER:WORLD-」のために歌詞を自ら書き下ろしたもの。