ナタリー PowerPush - Ray
キュートなアニソンシンガーがニコニコ語る オーディション連敗の軌跡と今と未来
2012年、KOTOKO、折戸伸治、音楽制作集団・I'veの高瀬一矢が制作するシングル「sign」で華々しいデビューを飾った、アニソンシンガーRay。以来彼女は、アニメ「To LOVEる -とらぶる- ダークネス」の主題歌「楽園PROJECT」や、豪華作家陣を擁した1stアルバム「RAYVE」といった話題作を立て続けにリリースし「Animelo Summer Live」に2年連続出演するなど、今日に至るまで快進撃を続けている。
そんな彼女がニューシングル「lull ~そして僕らは~」をリリースする。このシングルの表題曲は現在放送中のアニメ「凪のあすから」のオープニングテーマ。デビューシングル「sign」を思わせる、甘酸っぱくも切ない青春の1ページを切り取ったウェルメイドなポップスに仕上がっている。デビューから1年半、変幻自在のボーカルスタイルを見せつけてきたRayはなぜ原点回帰を図ったのか。自身にボーカリストとしてのキャリアを振り返ってもらうとともに、その理由を探った。
取材・文 / 成松哲
音楽との出会いはダンススクール
──デビューして1年と……。
半年が過ぎましたね。
──いかがでした? この1年半って。
緊張の連続でした……。というか、今も緊張することばっかりです(笑)。
──あれっ、そうなんですか。アニサマ(Animelo Summer Live 2013)のステージではあんなに堂々としてたのに。
わーっ! そういうふうに見えましたか! ホントは鼓動がすごい速さでダダダダダダダダ!って感じだったんですけど、ド緊張してるのがバレてなくてよかったです(笑)。
──歌がうまいのはもちろん、歌詞にあわせてハンドサインを作る振り付けも面白かったですし、バレてないと思いますよ(笑)。で、だからこそRayさんの横顔が気になって。どんなキャリアを積んできた人なんだろう?って。
ああ、なるほどー。
──なのでまずは音楽歴を追わせてください。最初に買ったCDって?
自分で選んで買ったのはSHOWTA.さんの「願い星」ですね。買ったのは中学校……2年生か3年生かなあ。
──けっこう遅い音楽の目覚めですよね?
自分で初めて買ったのはそれぐらいの頃だったんですけど、小学生の頃からボーカルとダンスのスクールに通ってまして。以前からそのレッスンやライブ用にいろんな曲を聴いたり、友達からいろんなアーティストさんを教わったりして聴いてはいました。
──そのスクールにはなぜ通おうと?
通い始めたのは小学校1年のときだったんですけど、その頃、兄がすごい人見知りで。母親はそれを克服させるために兄をスクールに通わせようとしたみたいなんですけど、なぜか私も一緒にオーディションを受けさせられたというか(笑)。で、2人とも受かって、私は足と手を交互に叩いてみたりとかホントにお遊戯みたいなレッスンを受けてたんですけど、上級生の兄がやってるダンスレッスンとか発声練習とか演技の練習とかを見学しているうちにだんだんやる気になってきて。いつのまにか兄と同じレッスンを受けたり、スクール主催のライブに出たりするようになってました(笑)。
ステージに上がり続ければ歌い続けられる
──誰かバンドやアーティストのファンになるというリスナー的な体験からではなく、歌とダンスの訓練、要はプレーヤー的な体験をきっかけに音楽ファンになる人ってちょっと珍しいですよね。
しかもきっかけは母親の後押しですし(笑)。でも歌は好きだったんですよ。北海道の田舎の出身なので大きな声を出しても全然問題なかったし、むしろクマさん除けって感じでもあったので、学校の行き帰りのあいだはずーっと歌ってました(笑)。
──スクールにはいつ頃まで?
小学校3~4年生までですね。しかもダンスがメインだったんです。だから正直、歌をきちんと習ったことはほとんどなくて、8~9割独学なんです。その頃はダンスを習うことのほうに興味があったというか、歌は歌えていれば楽しいって感じだったので。ただ、当時から歌のオーディションはずーっと受けてましたし、地元のカラオケ大会なんかにもかなり出てはいました。
──「歌えていれば楽しいって感じだった」小学生がなぜオーディションを?
人前で歌うことやステージに上がることが好きだったのと「ずっと歌い続けられたらいいな」って思ってたからだと思います。「オーディションだってある意味ステージだよね!」「ステージに上がり続けているうちは歌い続けられるんだよね!」って(笑)。それとオーディションやカラオケ大会の独特の緊張感がすごく好きで。なので、道を歩いてるとき、街のお祭りのカラオケ大会なんかを見かけると、その場で主催者の方と交渉して飛び込みで歌わせてもらったりもしてました(笑)。
のど自慢大会のゲストに見たプロへの道
──そうやって貪欲に歌う場所を求めてはいたもののプロ志向はなかった?
うーん……。今思い返すと「ステージに立って生きていく人間になりたいな」っていう気持ちがゼロだったわけではないんだと思います。というのも、小学校3年生のときにとあるのど自慢番組のジュニア版の北海道大会に出場しまして。
──毎週日曜日に放送している「NHKのど自慢」の子供版みたいなもの?
はい。その番組も出場者が全員歌い終えたあとには、プロのゲストさんの歌う時間もあって。私も出場者なのでステージのうしろのほうからゲストさんの背中を眺めてたんですけど、そのゲストさんの向こうにたくさんのお客さんが見えたんですよ。そうしたら、自分も大勢のお客さんの前で堂々と歌っているような気持ちになっちゃって(笑)。当時小学生だった私にとってはキレイな女性シンガーが真っ白なフワフワの衣装を着て、ピンスポットを浴びながらみんなを前にバラードを歌ってるのがホントに幻想的でカッコよかったんですよ。しかも私、本番で鐘を1個しかもらえなかったのに、その方がゲスト賞に選んでくださって。それがミーハー心に火を点けたんだと思います(笑)。それ以来、受けられるオーディションはすべて受けるようになりましたし。
- ニューシングル「lull~そして僕らは~」 / 2013年10月30日発売 / GENEON UNIVERSAL
- 初回限定アニメ盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0309
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1890円 / GNCA-0310
- 通常盤 [CD] 1260円 / GNCA-0311
CD収録曲
- lull ~そして僕らは~
[作詞:川田まみ / 作曲:中沢伴行 / 編曲:中沢伴行、尾崎武士] - I’m MONSTERちゃん
[作詞:三重野瞳 / 作曲・編曲:IKUO] - lull ~そして僕らは~(instrumental)
- I’m MONSTERちゃん(instrumental)
初回限定アニメ盤付属DVD収録内容
- 凪のあすからPV
- イメージビデオ(「lull~そして僕らは~」ver.)
- アニメノンテロップオープニング映像
- 「lull ~そして僕らは~」PV -short size-
- Special Spot
初回限定盤付属DVD収録内容
- 「lull ~そして僕らは~」PV
- PV Making
- Special Spot
- イメージビデオ(「lull ~そして僕らは~」ver.)
- アニメノンテロップオープニング映像
Ray(れい)
北海道出身の女性シンガー。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のオープニングテーマにして、アニメ「Air」のテーマソング「鳥の詩」で知られる折戸伸治、KOTOKO、I'veの高瀬一矢といった豪華作家陣を迎えて制作されたデビューシングル「sign」がオリコン週間シングルランキング11位をマークし、大きな話題を集める。同年10月にはアニメ「To LOVEる -とらぶる- ダークネス」のオープニング曲「楽園PROJECT」を、2013年2月にはアニメ「AMNESIA」のエンディング曲「Recall」を、同6月には川田まみら、音楽制作集団・I'veのクリエーターを中心に制作された1stアルバム「RAYVE」をリリース。青春ポップ、ギターロック、テクノ、電波ソングなど、幅広いジャンルの楽曲を巧みに歌いこなし、若手最注目のアニソンアーティストとしての地位を確固たるものとする。さらに2012年8月と2013年8月には「Animelo Summer Live」に連続出演。そして2013年10月にはアニメ「凪のあすから」のオープニングテーマ「lull ~そして僕らは~」をリリースする。