ナタリー PowerPush - POP ICON PROJECT TOKYO

ニコラ・フォルミケッティに聞く「日本に求めるもの」

世界に通用する女性アーティストを発掘するオーディション「POP ICON PROJECT TOKYO」が、8月1日からスタートした。このオーディションはLADY GAGAのファッションディレクターを務めていたニコラ・フォルミケッティと、フェイス、日本コロムビアが共同で開催。ニコラのプロデュースのもと、オーディションで選ばれた女性によるガールズボーカルユニットを結成し、“日本の新たなポップカルチャー”の魅力を世界に向けてアピールしていく。

今回ナタリーでは、プロデュースを担当するニコラ・フォルミケッティにインタビューを実施。海外で活躍する彼ならではの視点で、オーディションで求める人材や今の日本について語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 小坂茂雄

「努力しない子はダメ!」

──ニコラさんが考える、“ポップアイコン”に必要な要素ってなんですか?

ニコラ・フォルミケッティ

これは全世界共通するものだと思ってるんだけど、努力を惜しまないこと。それが一番大事で、歌が下手でも踊りが下手でも努力でカバーできるわけだから。ホント、LADY GAGAもそうだしね。彼女だって決して歌やダンスが特別上手ってわけではないけど、自分に自信があって毎日努力することを惜しまなかったらトップになれる。そういう簡単なことだと思うんです。そういうもんですよ。

──努力を惜しまないという姿勢は、表舞台で活躍している人みんなに共通して言えることですよね。

絶対にそう。どんなに歌がうまくても、カッコよくてもかわいくても、努力することができなかったら絶対にトップになれないから。

──じゃあ今回のオーディションは、そういう人たちにどんどん応募してきてほしい?

それはもう、最初に大きく書いてほしいですね。「努力しない子はダメ!」って(笑)。

──オーディションに限らず大事なことですよね。

そうですよ。今の日本の若い子は、そういったことが欠けてるじゃないですか。根性がないみたいによく言われますよね。日本は本当にいい国だし、何も考えなくても生活できる。流行っているものを追いかけて、みんながやっていることを真似すれば無難に過ごせるわけですし。でも僕はそこを変えていきたいんです。

──海外で活動するニコラさんだからこそ、そういう日本のいいところも悪いところもわかるんでしょうね。

そうかもしれない。でも僕も日本に1カ月くらいずっといたら、今の日本の若い子みたいになっちゃうかもしれない。メディアとかテレビにブレインウォッシュされてね(笑)。

──逆に日本を拠点にして海外に行くような生活だったら、さっきおっしゃったような点を見失ってしまうかもしれない?

ニコラ・フォルミケッティ

それは絶対あると思う。音楽もそうだし、ファッションでもアートでも、なんでもそうだと思うよ。

──では、そういう努力を惜しまない子たちを集めてグループを作ると。

そうですね。そういう人が1人でも2人でも見つかればいいと思っていて。一応4~5人が目安だけど、1人でも自信を持って送り出せる人がいたら1人になるし、もしかしたら10人になるかもしれないし。それはそのときの運と応募してくれる人たちによって変わってくるから、臨機応変に対応するよう考えてます。かかってこい!みたいな感じです(笑)。

──今の日本の音楽シーンでは女性アイドルの人気が高いという状況もありますし、面白い子が見つかるんじゃないかと思いますよ。

それは僕も思っていて。だから最初に女の子限定にしたんだけど、次は男の子でも同じことをやってみたい。まだスタッフには言ってないんだけどね(笑)。

子供の頃に触れた日本の音楽やマンガにはパワーがあった

──話は変わりますが、ニコラさんは12歳まで日本に住んでいたそうですね。当時は日本の音楽やマンガに触れていたと思いますが、どういったものが好きでしたか?

音楽はねえ……光GENJIが好きでしたよ、小学生のときは(笑)。あのローラースケートに憧れたし。あとおニャン子(クラブ)も好きだったし。で、毎週ジャンプを買って「ドラゴンボール」を読んだり。普通の日本人の小学生でしたよ(笑)。

──僕たちの子供の頃とまったく一緒ですね(笑)。

ニコラ・フォルミケッティ

今でも当時の映像をYouTubeで観るんだけど、やっぱりあの頃に触れた音楽やマンガにはパワーがあったんだよ。あの頃YouTubeがあったら、日本のカルチャーはもっともっとグローバルなものになってたと思う。だから僕たちが子供の頃に体験したあのパワーを、今の海外の人たちにも届けられたらいいよね。それくらいのインパクトは与えたい。だって30年経った今でもこうやって光GENJIやおニャン子のことを話してるわけだから。

──ちなみに現在、日本のアーティストでもっとも世界に近い人って誰だと思いますか?

きゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃん。きゃりーちゃんとは向こうの雑誌でも一緒に仕事したんだけど、彼女はすごくしっかりしてるのね。前から会ってみたくて、格好だけだったら長くないなと最初は思ってたんだけど、会ってみたら彼女の芯の部分がしっかりしてたから、これからもっともっと成長して変わっていくと思いますよ。あとはあんまり知らないかな……誰かいい人、います?(笑)

──きゃりーぱみゅぱみゅもそうですけど、今の日本の音楽シーンでは女性アーティストが強い印象がありますね。

ああ、PerfumeとかAKB48とか? それはすごく日本ぽくていいと思いますよ。でも僕はもっと今の時代にあっていて、ちょっとだけ先に行ってる、パンキッシュで個性的で、だけどポップなアーティストを求めていて……単純にそういう人がいないから、この「POP ICON PROJECT TOKYO」を始めたんです。

──でも、ないものをゼロから作り上げていくにはすごいパワーが必要ですよね。

それが僕の宿命なのかな。ファッションにしても、そういうことをやらないとムズムズしてくるから。どうせやるんだったら人と違ったことをやりたいし、もっと面白いことをやったほうが楽しめるし。僕は自分がやってることを仕事だと思ってなくて、半分遊びと思ってるから今回みたいに音楽のオーディションもやろうと思えるのかな。

ニコラ・フォルミケッティ

POP ICON PROJECT TOKYO

世界に向けて日本を代表するガールズボーカルユニットを発掘するオーディション「POP ICON PROJECT TOKYO」がスタート。現在オーディションのエントリー受付中!

ニコラ・フォルミケッティ

ニコラ・フォルミケッティ

1977年5月31日生まれ。イタリア人の父と日本人の母を持ち、12歳までを静岡県沼津市で過ごした、国際的に活躍するファッションディレクター。LADY GAGAのファッションディレクターとして衣装やミュージックビデオのディレクションを担当し、彼女をトップスターに押し上げたことで知られる。現在は主にUNIQLOのファッションディレクター 、DIESELのアーティスティックディレクターを務めている。