今できることに磨きをかけて、衝撃を与えるドラムを目指したい

──この「入門編」の教則本の最後に、中野さんが影響を受けたアーティストがずらっと載ってるのがすごく興味深かったんですけど。

電気グルーヴから始まってますからね。

──そうなんです。ドラムの教則本なのに（笑）。

意味わからないですよね（笑）。でも電気グルーヴは素晴らしいですよ、リズムの構築が。ドラマーにはない高揚感を持ってるんで、その感じを生ドラムで出せたらなって思いながら叩くこともよくあるし。

──あとPerfumeも推してますけど、これはファンなだけですよね？

いやいや、ちゃんと書いてありますよ、ドラムのことも（笑）。Perfumeの音楽に合わせて適当にドラムを叩くのが趣味なんです。

──銀杏BOYZのことも褒めてますけど、中野さんのドラムとはだいぶ方向性が違うと思うんですが。

いや、村井さん超カッコいいですよ。うらやましい。四分のキックでよれるときがあるんですが、あれが死ぬほどカッコよくて。素晴らしいドラマーだと思います。自分にないものをいっぱい持ってる。

──自分と全然タイプが違う人のことも、すごくよく見てるんですよね。

まあ、ないものねだりじゃないですけど。

──個人的には、中野さんはテクニック指向のドラマーというイメージがあったんですけど。

そんなことないですよ。そんなにうまいほうじゃないと思います。YOSHIKIさんも自分で「テクニック指向じゃない」って言ってるんですけど、でも僕にはテクニック指向にしか見えなかったんですね、最初は。でもそういうのがだんだんわかるようになってきて。

──今はYOSHIKIさんのドラムがテクニック指向じゃないと思えるようになった？

なりましたね。

──それはどういうことですか？

YOSHIKIさんのドラムはテクニック指向とかそういう話じゃなく、もうYOSHIKIさんでしかなくなってるんで。だから僕も自分ができる範囲で、よりカッコよく見せたり、衝撃を与えるドラムを目指したいと思って今実践してるんですけど。テクニックって、あるに越したことはないけど、そんなに必要でもなくて。今できることに磨きをかけて、もっとインパクトのあるドラムを叩けるようになるほうがいいかなって思う。

──うまさよりカッコよさを追求するということ？

うまい人って本来カッコいいんですけどね。でも今は自分のドラムスタイルが確立してきたんで、技術的なところはそんなに必要としてない。あとは時雨の楽曲に自分のドラムをどうなじませていくかっていうことくらい。

──なじませるっていうのはどういう意味で？ 時雨というバンドが求めるものと、自分が追及したいものの間にズレがあるということでしょうか？

いや、それはないです。北嶋くんの作る楽曲も好きだし、メンバーのことも好きなんで、バンドで求められるものに応えて、それを超えるものを提供し続けたいって思ってる。できることはいっぱいあるし、変わらずずっとやっていきますよ。それ以外に自分がやりたいこととかはCHAOTIC SPEED KINGとかで試せたりするので。

──玉筋とかでも？

玉筋とかでも（笑）。いろんなところで発散できるんで、そこにストレスを感じたりはしないですね。

毎日が夢みたいに楽しいです

──この教則DVDを観て思ったんですが、中野さんって親切ですよね。

うん、だいぶ親切です。サービスサービス（笑）。

──そういう活動スタイルが、どこかPerfumeに近いような気もして。本業をあくまでストイックにやりながら、でもファンサービスをものすごく大事にするところとか。

そうですね。影響を受けてる部分はあると思います。

──でも一般的にドラマーって、あまりファンサービスに励むイメージはないですけど。

いや、僕が好きなドラマーはファンサービスを大事にする人が多いですよ。いいドラマーってお茶目だったりするんで。バディ・リッチとか加藤茶とか（笑）。

──確かに、中野さん自身もお茶目というか、毎日楽しそうに活動しているように見えますね。

毎日相当楽しいですよ（笑）。夢なんじゃないかって思うくらい。今までやってきたことが、ちゃんと結果につながるんだって実感することが最近多くて。特に30代になってから。いろいろやっといてよかったなって思います。

──今後やりたいことは？

まずは時雨のツアーが始まるんで、それをしっかりやることですね。あと今回教則を出せたんで、その反応を見つつ、また何か面白い作品が作れたらいいなって思ってます。