どんな素敵に見える人でも、根本はみんな“ダメ人間”

──アルバムを聴いた人が、何か一歩でも踏み出す糸口を見つけてもらえたらってことですか？

はい、そうなればうれしいですよね。楽曲の要所要所にいろんな答えを入れてるつもりなので、それを読みとってもらって。必要やと思えば生活に生かしてもらえればと思うし、何かに気付くきっかけにしてもらえたらいいなって。

──すごく漠然とした質問かもしれませんが、みんながそうやって前を向いて、いろんなものがつながっていって……。その先に、大知さんは最終的にどういう世界を見たいと思ってるんですか？

うーん……たぶん、僕はただ笑ってたいだけなんだと思います（笑）。いきなりシンプルな答えになっちゃいますけど。最終的に自分の周りの人が少しでも笑ってくれてたり、悲しいことが少なくなったり。自分自身や僕にかかわってくれた人が、健やかで充実できる人生を送ることができれば。そういう景色をずっと見てたいんだと思いますね。

──なんだかここまでお話をしてきて、大知さんが強い人なのか弱い人なのかわからなくなってきました（笑）。弱いからそうやって不安や怖さをパワーに変えているのか、本来すごく強い生命力を持った人なのか。

そうですねぇ……。強さと弱さは常に一緒にあるんだと思います。そのバロメーターが強いほうに変わるときもあれば、弱いほうに傾くときもあって。弱くなったらまた心を奮い立たせる。そういう繰り返しなんだと思います。

──なるほど。

でもたぶん、そうやって闘っていってる人が世の中にはいっぱいいるんやろうなって。僕、どんな素敵に見える人でも根本はみんな“ダメ人間”やと思うんです（笑）。自分もそうですし、だからこそ、そこに向き合って、闘って、打ち勝って、どんどん強い自分を作っていける。弱いだけじゃないぜっていう部分を作れるんやと思います。

──失礼な言い方かもしれませんが、大知さんてまだ20歳になったばかりなのに、すごく達観した感じがありますよね。そう言われません？

あははは、言われますね（笑）。でも、まだ20歳の僕が持ってる経験なんて少ないもんですから。今回のアルバムには、そんな今の自分なりに精一杯考えて出した答えが詰められたんじゃないかと思います。

「19歳最後の唄」は、最後の10分で録った曲

──20歳といえば10曲目に「19歳最後の唄」という曲が入っていますが、これは本当に19歳の最後に作ったんですか？

そうなんです。僕、誕生日が1月20日なんですが、楽曲は12月くらいから作り始めて、レコーディングは粋な計らいで前日の19日にしようって話になったんでんですよ。でも正直、あまり10代最後だっていう実感がなくて、それが影響したのか、納得できる歌がなかなか歌えなくて。そうやって歌い続けてるうちに、パッと時計を見たら23時50分になってたんですよ。で「19歳の自分ではあと1テイクしか歌われへん！」と気付いたら、いよいよ歌詞と気持ちがリンクしてきて。イントロが流れた瞬間から、今まであったことが走馬灯みたいにバーッて浮かんだんです。

──鳥肌が立つようなエピソードですね。

それで歌詞の一言目から最後まで、本当に自分の記憶のすべてと気持ちを込めて歌えたなって思えたので。そのまま修正せずに、OKテイクにしたんです。

──この曲の歌詞は、アルバム内で最も赤裸々な内容ですよね。すべてのエピソードが本当にあったことなんですか？

そうですね。猫も4匹飼ってますし、弟の就職も決まりました（笑）。僕自身もかなり素の自分やなーと思うので、ぜひ聴いてほしいです。

──さて、このアルバムを引っさげて6月からは全国ワンマンツアーが始まります。最後に意気込みをお願いします！

やっぱり、今作に込めた“つながり”に対する思いを、ライブで直接しっかりみんなに届けていきたいと思います。ライブの前と後では何かが違っているような、観にきてくれたお客さんが晴れやかな気持ちで会場の出口へ向かってもらえるようなステージにしたいですね。