ナタリー PowerPush - NIRL GIRL

人生の光と影を詰め込んだ初音源 A.D.2010 ~相対的世界崩壊元年~」

8月4日に1stミニアルバム「A.D.2010 ~相対的世界崩壊元年~」をリリースするNIRL GIRL。2006年に結成されたこのバンドは、歪んだギターサウンドの中にヒリヒリとした焦燥感や憤りを感じさせる、グランジ/オルタナティブ/シューゲイズな雰囲気を持つ4人組だ。

今年の2月より、プロデューサーに松井敬治(the primrose)を迎えてレコーディングされたという今作には現在の彼らの代表曲のひとつ「sadistic youth」や、切なく優しい浮遊感を漂わせるバラード「風」などバラエティ豊かな魅力が詰めこまれている。インタビューはほぼ初、という彼らに今作について話を訊いた。

取材・文/上野三樹 撮影/中西求

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業界の人間をギャフンと言わせたい

──まずはNIRL GIRL結成のいきさつから。2004年に吉野豪史(Vo, G)さんと折橋豪(Dr)さんが前身となるバンド、MR. POPOを結成されたんですよね。

折橋 僕の同級生の女の子が、ヒデ(吉野)がやっていたユニットのファンで。それで紹介してもらって、2人でバンドを始めたのが最初です。

インタビュー写真

吉野 その当時はいわゆる“下北系”な感じのバンドが多かったので、僕らはあえてグランジ色が強いものをやっていました。振り返ってみると、いい意味でも悪い意味でもバカだったというか……よくライブハウスの方に怒られてましたね。ドラムセットとかに飛び込んじゃったりアンプを倒しちゃったりするので「めちゃくちゃにするな!」って(笑)。

──もともとステージで衝動を露わにするタイプなんですね。

吉野 はい、未だにそうなんです。

折橋 マイク投げまくってたりするからね。

──2人でバンドを始めるときは、どんな思いがあったんですか。

折橋 最初は「大人を驚かせたい」みたいな気持ちがありました。ヒデは今でこそ穏やかな性格ですけど、以前はかなりトゲがあって。相当ひねくれてたんで、そのときは「業界の人間をギャフンと言わせたい」って思いで活動を始めたんです。NIRVANAみたいに、この業界に大きな風を吹かせたかったから。

吉野 何かしでかしたいんです(笑)。

メンバーって誰でもいいわけじゃない

──そんな思いから始まり、2006年に現在の編成になってNIRL GIRLという名前になると。田村光(G)さん、伊藤真紗世(B)さんの加入時はどんな感じでしたか?

吉野 ギターの光くんは、違うバンドで活動していて、ライブを観に行ったときに「かっこいいギタリストだな」と思い、共通の知人を通じて紹介してもらったんです。

インタビュー写真

田村 それで彼らと一緒にスタジオに入ったんですけど、そのときグッとくるもの、光るものを演奏に感じました。うまくはないけど魅力を感じたので、自分も一緒にやりたいなと思ったんですよね。でも最初は、紹介してくれた方にお世話になっていたので恩返しの気持ちもあり、サポートメンバーとしてかかわっていたんです。

──最初はちょっと客観的な視点でこのバンドを見ていたと。そしてその後に正式メンバーになったんですね。

田村 そうですね。いきさつはまあ、あったんですけど。結果そんな感じです。

──なんか話を省略されました?(笑)

吉野 光くんは、人間的に難しいんですよね。だからなかなか仲良くなれなくて。長い間、音は一緒に出してても気持ちが通い合ってない時期が続いたんです。それで、新しいギターを探して、彼には抜けてもらおうと思ってたんですけど、あるとき急に「俺を正式にメンバーに入れてくれ」って言われたんです。それで、びっくりしたけど「いいよ」って。

折橋 なかなか仲良くなれなかった頃に、ヒデと僕で、光くんと話をしようと渋谷のマックに集まったんです。そのときに光くんが100円でコーヒーが飲めるのを見て「100円の大事さをお前らはわかるのか」みたいなことを言い始めて(笑)。「時給600円のところだったら、これを飲むのに10分働かなきゃいけないんだ」とかって言うから、ヒデと帰り道に「難しい人だね」って話をしたのを未だに覚えています。でもまあ、それが光くんとの始まりで。なのでこの4年間は、ヒデと光くんの仲が、どんどん歩み寄っていくような年月だったと思います。

──4年は長いですね(笑)。

インタビュー写真

折橋 はい。決して短くはなかったですよ(笑)。

吉野 でもまあ、真紗世ちゃんもそうなんですけど、音楽で仲良くなったというよりはみんなで遊びに行ったりして仲良くなっていった感じです。湖でボートに乗ってみたり。

──伊藤さんはどのタイミングで加入したんですか?

伊藤 光くんが入ってすぐくらいですかね。共通の友人から紹介してもらって。それまで音楽をやってる知り合いも少なくて、ライブハウスに行ってもあんまり本気でやってる人たちに出会えなくて。NIRL GIRLが、初めて音楽をずっとやっていくことを目指して入ったバンドなんです。

──この4人で音を出したときの手応えとか、「これでやっていけるな」と思ったところは?

吉野 なんせ僕と彼(折橋)だけで、サポートメンバーを入れながら長い間やっていたので、メンバーが揃ってくれたことが本当にうれしかったですね。

折橋 メンバーって誰でもいいわけじゃないし、出会ってすぐに一緒にやれるものでもない。時間はかかりますし、時間をかけて揃えても解散しちゃうバンドもいますしね。でも僕らはだんだん「このメンバーなんだな」ってお互いに思えるようになったんです。

1stミニアルバム「A.D.2010 ~相対的世界崩壊元年~」 / 2010年8月4日発売 / 1575円(税込) / SOUL MATE MUSIC / SOULM-004 / ※店頭販売はタワーレコードのみ

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CD収録曲
  1. sadistic youth
  2. 真昼間
  3. Silentboy Silentgirl
  4. color
  5. 8
NIRL GIRL(にーるがーる)

吉野豪史(Vo, G)、折橋豪(Dr)、田村光(G)、伊藤真紗世(B)から成る4人組ロックバンド。2004年にNIRL GIRLの前身であるMR. POPOを吉野と折橋で結成。下北沢や渋谷のライブハウスを中心に活動を開始する。2006年にバンド名をNIRL GIRLに改名。同年、田村と伊藤をバンドに向かえ、現在のメンバー編成となる。2010年8月、バンド史上初めての音源としてミニアルバム「A.D.2010 ~相対的世界崩壊元年~」をリリース。