ナタリー PowerPush - 光村龍哉(NICO Touches the Walls)×庄村聡泰([Alexandros])
“ラーメン”で語る音楽論
NICO Touches the Wallsのニューシングル「天地ガエシ」がリリースされた。これにあわせてナタリーではフロントマンの光村龍哉(Vo, G)と、彼と公私ともに親交が深い[Alexandros]の庄村聡泰(Dr)の対談を企画した。
ディープな音楽ファンであるとともに、ラーメンにも深い愛情を寄せるこの2人。“ラーメン”をお題に対談を依頼したところ、話は思わぬ方向へと転がっていった。なお普段はあまり声が大きくない庄村だが、話がヒートアップしていく中で徐々に大声になっていったことを記しておく。
取材・文 / 中野明子 撮影 / 上山陽介
中高生のときのような感じで話せる関係
──お2人はラーメン好きが共通点と伺ったんですが……。
光村 ラーメンだけじゃないですよ、共通点は(笑)。ただお互いをつなぐ大きな柱の1つであることは確かですね。
庄村 初めて会ったのって、2010年の「ROCKS TOKYO」だっけ? 俺らデビューしたての年だったから、バックヤードに知り合いがほとんどいなくて。だから直前で対バンして知り合ったTOTALFATのBunちゃんについて回って、そこで「すごいNICOが好きだ」って話したら紹介するよって。でみっちゃんに「昔からずっと聴いてて、『エトランジェ』と『かけら -総べての想いたちへ-』が好きで」って話をしたのが最初だったかな。
光村 それを聞いて「この人本当に俺らの曲聴いてる」って思ったんだよね。あのときのサトヤスって、フラワームーブメントかってくらいの派手な格好してたじゃん。
庄村 なんかの形で爪痕を残したいと思ったんだよね。バックヤードでも一番変な格好をしてやろうと。でもそのあとで倒さなきゃいけない人がいっぱいいるって気付いたんだけど。N'夙川BOYSのシンノスケ(BOYs)さんにはいまだに勝てた気がしないよ(笑)。で、初めて会ったときにみっちゃんが「ライブ来てください」って言ってくれて。後日行った横浜BLITZでのワンマン(2010年6月12日開催)で「エトランジェ」をやってくれたんですよ。
光村 ある意味で俺からサトヤスへの“アンサー”でしたね。
庄村 メロウな面が好きなんですよ、NICOの。
光村 そう言ってくださる方は本物です(笑)。で、俺らの壁がなくなったのっていつだっけ?
庄村 初めて2人で飲みに行ったときじゃない? 夜8時くらいに待ち合わせて、明け方までずっと飲んでたんですよ。2軒目がロックバーだったんだけど、そこでみっちゃんとトッド・ラングレンの話をして。「Utopiaっていうプログレのバンドをやってた時期が好きで」とか言ったときに、反応してくれて。俺、トッド・ラングレンの話を人にしたの初めてで。それでこの人はすごい同世代の中では貴重だなって。
光村 さらにお互いAORが好きっていう話になり、いつの間にか2人でSteely Danの「Aja」のドキュメンタリーDVDを一緒に観る仲になったと(笑)。
庄村 俺くらいリスナーとして本気で音楽楽しんでいる人っているんだってうれしかったんですよね。みっちゃんとは「あれ聴いた?」「これどうだった?」って言い合えて、昔のロックの話もガンガンできる。音楽に目覚めた中高生のときのような感じ。
光村 普段、サトヤスと話すときは好みの話しかしてないんですよ。あらゆる好みの話。ライブの感想も「俺の好みで言えば」っていう前提で話す。そこだけはズラさないようにしてるんですよ。
庄村 いち人間としての意見っていうかね。2人とも「NICO Touches the Wallsの光村龍哉」と「[Alexandros]の庄村聡泰」っていう意識では全然話してない。
光村 ビジネスとか仕事的なことは一切関係ないよね(笑)。
庄村 そうだね、そういう開けっぴろげな関係で。
バンド=ラーメン説
光村 出会った頃はサトヤスはあんまり飲めなくて、だったらうまいもの食べに行こうって話になって。何回か焼き肉行ったりしたあとで、初ラーメン行ったのが豪徳寺の「りらくしん」だったんだよ。
庄村 去年の春だっけ? もともとみっちゃんがつけ麺が好きっていうのは聞いてたんですよ。で、僕は僕で[Champagne]に入ってから「ラーメン二郎」に恋い焦がれてしまったんですよ(笑)。その前はずっと家系(※横浜市新杉田にある吉村家を発祥とする、豚骨醤油ベースで太いストレート麺を特徴とするラーメン)人間だったんだけど。
光村 地元そっちだもんね。
庄村 で、あるときにみっちゃんと話しているときに二郎の話題を出したら、「あの店知ってる?」「この店行った?」っていうニッチな会話に発展し……。
光村 もう音楽の話と同じようなノリだね。そのときに「豪徳寺にいいライブハウスがあるらしい」っていうようなノリで、行ったのが「りらくしん」で。初めて行ったときラーメンが来るのを待ってたら、たなしん(グッドモーニングアメリカ)と出くわして。
庄村 ヒョウ柄のセットアップで、グラサンかけたえらいファンキーなやついるって思ったら、ジョギング帰りのたなしんがラーメンを食いに来てた。
光村 そこで「近々フェスとかイベントで一緒になる機会あるかもね」って言ってたら、全員そろって山口の「WILD BUNCH FEST.」で同じ日に出演することになってた。まあ、それで本格的に火がついて、「このアーティストはこうらしい」とか話すのと同じ感じで、各地のラーメン屋にいろいろ確かめに行くことになるわけです。お互い音楽同様にディープなラーメンファンなので。
庄村 会ったときに必ずどっかしらでラーメンの話は出るんですよ。お互いそうなんでしょうけど、この人に勧められた音楽とラーメンはひとまず試してみる。
光村 ははははは(笑)。その通り。
庄村 でね、俺ら別に好みが被るとかじゃなくて、ひたすら食べた分析結果を話すんですよ。「あの店のはこう感じたんだ」とか話し合って、それを踏まえて新しい発見をしていく。
光村 この手のタイプの人間が、音楽シーンにおいてもラーメン界においてもウザイよね。
庄村 だろうね(笑)。普通の人には微妙な味でもさ、いいとこ探ししちゃうんだよ。うまい、まずいじゃないんだよ俺たちにとっては。
光村 そうそう。一口すすって、お互い顔見合わせて「ああこれこっち系ね!」って頭の中のデータベースを引っ張り出して会話したり。サトヤスはいろんなラーメン屋に行ってるから、データベースとしてけっこう完成されてるのよ。で、それが音楽の話につながることもある。例えば俺らの新曲「天地ガエシ」って途中でテンポが変わるんだけど、サトヤスが曲を聴いて「そういうラーメンあるじゃん」って言い出して。
庄村 BPMが途中で変わるんだけど、それをどうやって録ったのかドラム的にはすごく気になって。どういうふうにレコーディングしたのか聞いた上で、ラーメンに例えると、半分まで食った上で卓上にある調味料を入れると別の味になる、二度おいしいラーメンみたいだねって伝えて。
光村 それで言うと「二代目つじ田」かと。途中ですだち絞って、黒七味かけるとまた味が変わってすいすい食べられるよねって。俺らにとっては、ラーメンが新しい“ランゲージ(言語)”なんですよ。ラーメンに例えるとなんでも解決するんだから。ラーメンにおけるベースって、出汁があって、かえしがあって、麺があって、トッピングがあるのが基本でしょ? これってバンドでいうドラム、ベース、ギター、ボーカルみたいだなって。
庄村 近年の音楽シーンに例えれば、バンドっていう形態をなしていれば、どのような音楽をやってもけっこう理解される気がするんですよね。リスナーの方がどんな奇天烈な音も聴いてくれるような広い耳を持ってると思うんです。ラーメンにしてもそうで、汁と小麦で打った麺があって、ラーメンってカテゴライズされていれば“ラーメン”として認知されるんですよ。だって、今ってパイナップルラーメンとかあるじゃん。「太陽のトマト麺」とか自分の中のラーメンとは違うけど、ラーメンに必要な要素は満たしてるんですよ。だから俺らはバーリトゥード(※ポルトガル語で「なんでもあり」を意味する言葉)の世界に生きてるんだなって。
- NICO Touches the Walls ニューシングル「天地ガエシ」 / 2014年6月11日発売 / Ki/oon Music
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / KSCL-2443~4
- 通常盤 [CD] 1188円 / KSCL-2445
CD収録曲
- 天地ガエシ
- ハナノユメ
初回限定盤DVD収録内容
「天地ガエシ」music clip+ドキュメンタリー
- [Alexandros] ライブDVD / Blu-ray「[Alexandros] Live at Budokan 2014」 / 2014年6月18日発売 / RX-RECORDS / UK.PROJECT
- [DVD2枚組] 5076円 / RX-090~1
- [Blu-ray Disc 2枚組] 6156円 / RX-092~3
- [Blu-ray Disc 2枚組] 6156円 / RX-092
NICO Touches the Walls
(ニコタッチズザウォールズ)
2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施して成功を収める。2013年3月にシングル「Mr. ECHO」、4月に5thアルバム「Shout to the Walls!」、7月にシングル「ニワカ雨ニモ負ケズ」を発表。2013年2月にキャリア初のベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースし、さらに3月にシングル「ローハイド」、6月にシングル「天地ガエシ」をリリースした。なお8月には2度目となる日本武道館単独公演を控えている。
[Alexandros](アレキサンドロス)
川上洋平(Vo, G)、磯部寛之(B, Cho)、白井眞輝(G)、庄村聡泰(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年より[Champagne]名義で本格的に活動を始める。2010年1月にRX-RECORDSから1stアルバム「Where's My Potato?」を発表。美メロとパワフルなバンドサウンドを武器に、さまざまなイベントやフェスに出演しファンを獲得する。2013年6月に4thアルバム「Me No Do Karate.」をリリース。2014年3月の東京・日本武道館公演でバンド名を[Champagne]から[Alexandros]に改名した。同年4月から東名阪2DAYSを含む全国Zeppツアー8公演を実施。同年6月に改名後初めての作品となるシングル「Adventure / Droshky!」と、武道館公演の様子を収めたライブDVD / Blu-ray「[Alexandros] Live at Budokan 2014」をリリースする。