ナタリー PowerPush - mishmash*Julie Watai

勝負曲「起電力ロマンス」を紐解く

Corneliusのサウンドプログラマー / エンジニアとしても知られる美島豊明と、さまざまなカルチャーコンテンツを手がけるプロデューサーのマスヤマコムによるプロジェクト「mishmash*」が、Julie Wataiをゲストボーカルに迎えた新曲「起電力ロマンス」を発表。テクノポップ風のサウンドと「この国の電力事情はビミョ~」「電気だって 自分で作ろうよ アハハン」というリリックがひとつになったこの曲は、mishmash*の魅力をさらに広い層に伝えることになりそうだ。

今回ナタリーでは、マスヤマコムと「起電力ロマンス」のビデオクリップのイラストを手がけたアーティスト・タカハシヒロユキの対談を企画。楽曲制作のプロセスからビデオクリップのコンセプト、mishimash*のアートワークなどについてじっくりと語ってもらった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 上山陽介

 
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プロデューサーマインドが動いた

──まず「起電力ロマンス」の成り立ちについて教えてもらえますか?

左からタカハシヒロユキ、マスヤマコム。

マスヤマコム この曲は僕らのオリジナルではなくて、作詞、作曲は違う人なんですよ。もともとは弁慶さんという方が「76477」という別名義で、すでにYouTubeなどで発表している曲で、僕が「Make: Japan」というイベントに行ったとき、この曲を「76477」さんが歌っているところをたまたま観たんですよ。そのとき、自分の中のプロデューサーマインドが動いたと言いますか、「Julieちゃんが歌ったらいけるんじゃないか?」と思いました。で、すぐに弁慶さんと連絡を取って、楽曲の権利を譲り受けたんです。

──「起電力ロマンス」のどういう部分に魅力を感じたんですか?

マスヤマ まず、美島さんはこういう「どポップ」でリフがものすごく多い曲は書かないと思うんですよ。僕も曲を書きますが、どうしてもテンションコードが入った複雑な展開になったりするので(笑)。歌詞の内容も面白いですよね。ロマンチックだし、少しエロいところもあって……。弁慶さんは最初「女性が歌っても大丈夫でしょうか?」って心配してたんですけど、Julieちゃんの声は人工的なところがあるから、そこまでエロくならないんですよね。

──すごく似合ってますよね、確かに。

マスヤマ そうなんですよ。僕としても自信を持っているし、この曲で勝負をかけようという気持ちもあって。タカハシさんにお願いしたPVに関しては、実はJulieちゃんの人脈がきっかけなんです。彼女はヘンな人をいっぱい知っていて(笑)、「いい人いますよ」って教えてくれて。で、タカハシさんの絵を見させてもらったわけですが、すごくよかったんですよね。

タカハシヒロユキ ありがとうございます。

マスヤマコム

マスヤマ 僕が一緒に仕事をしたいと思う理由って、いい作品を作るっていうだけではないんですよね。バイブレーションが合うというか、一緒に飲みに行けない人とは仕事もあまりしたくないっていう。

タカハシ わかります(笑)。

マスヤマ タカハシさんは、そこも大丈夫だったというか、2時間くらい話して「じゃあ、そのうち飲みに行こう!」みたいになって。まあ、結局行ってないですけどね(笑)。あとね、タカハシさんは絵も素晴らしいけど、「死ぬ気でやります!」みたいなことを言ってくれたんですよね。見かけのわりには体育会系なんだなって。

タカハシ そうなんです、いつも。

マスヤマ ディレクションは12月に出したアルバムの収録曲「3分シェイクスピア」のビデオクリップを作ってくれたTDKKKMさんにお願いして、僕からはほとんど何も言ってないんですよ。仕事で1カ月海外に行ってたし、「帰ってきたらできあがってるかな」くらいで。完成したものを観て、ブッ飛びましたけどね。どれだけ手間がかかってるんだろう?って。絵は結局、何枚くらい描いたんですか?

タカハシ 描き下ろしたのは10枚くらいですね。かなり時間をかけて描きました。

時間の蓄積が感じられるように

──タカハシさんが「起電力ロマンス」を聴いたときの印象は?

タカハシヒロユキ

タカハシ ポップでかわいいんだけど、歌詞にはクセがあるというか。僕の絵にも毒があると思うし、そこがうまく合えばいいなと思ってましたね。レトロフューチャーみたいな雰囲気もあったから、そこにつながるモチーフはなるべく具体的に入れようと。あとは細かいところまで気を抜かないっていうことですね。これはいつも意識してることなんですが、特にデジタルの場合、気を抜くと絶対によくないんですよ。アナログだったら“抜いた表現がいい”ということがあるんですが、デジタルでそれをやっちゃうと雑に見えちゃうので。時間の蓄積が感じられる、というか。

マスヤマ 時間をかけて描いてることが、自然と伝わるということ?

タカハシ そうですね。細かいところもしっかりキレイに描いてあれば、絵そのものに興味がない人まで圧倒できるので。

──つまり好き嫌いを超えたところで圧倒できる、と。

マスヤマ mishimash*の楽器テクニシャンはCorneliusの仕事もしているイギリス人なんだけど、彼がまさにそう言ってた。「自分の趣味ではないけど、これはすごい」って。

タカハシ 今回みたいな場合だと、絵の一部をアップで使ったりするわけじゃないですか。そういうときになるべく自由に使えるようにしておきたいんですよね。「この動きしかできない」とか、そういうことがないように。全部マウスを使って描いてるから、めちゃくちゃ時間がかかるんですけどね。線画だけで10時間とか。下描きの時点で「これは何十時間かかるな」っていうのを考えて、あとはひたすらクリックしてます(笑)。

配信シングル「起電力ロマンス」 / 2013年5月27日配信開始 / 200円 / mishmash*
配信シングル「起電力ロマンス」
収録曲
  1. 起電力ロマンス

mishmash*(みしゅましゅ)

Corneliusのサウンドプログラマーを務める美島豊明と、ゲームや出版、映像などさまざまなカルチャーコンテンツを手がけてきたマスヤマコムによる音楽ユニット。作品ごとに異なるクリエイターをフィーチャーすることをコンセプトに掲げている。2012年12月リリースの1stアルバム「mishmash*Julie Watai」では、写真家として活躍する元アイドル / モデルのJulie Wataiをフィーチャーしている。

タカハシヒロユキ

カラフルな色使いのキャラクターやデザインを得意とするアーティスト。デザイン専門学校卒業後、数年間のデザイン事務所勤務を経てフリーに。テレビや雑誌などで注目を集め、2007年にテレビ朝日ミュージックと契約し上京する。その後、パリの国際テキスタイル見本市「Premiere Vision」に参加し、これを機に海外での活動を開始。現在は国内外で活躍しているほか、ファッション系およびデザイン系の専門学校で講師も務める。