ナタリー PowerPush - MiChi
ポジティブな愛を歌う「LOVE is.」e.p.
恋愛ソングと思って書いてない
──でも今回のような愛というテーマに深く切り込んだ歌詞って、MiChiさんの中では新しいですよね。
そうですね。でも、新しそうで新しくない部分もあって。この曲は別に恋愛ソングと思って書いてないし、愛を与える相手は誰でもいいの。タクシーの運転手さんにでも誰でもいいし(笑)。人に優しくするってことも愛だし。そして、その人もまた違う誰かに優しくしてっていうことでつながっていけばいいと思う。
──作詞はいしわたり淳治さんとの共作ですが、制作はどんなふうに進めていったんですか?
まずは自分でも何回か書いてみたんだけど、今回のトラックはすごく譜割りが難しくて。それに1stアルバムのあとは、精神的に歌詞が浮かばない状態のときもあったんですよ。それで今までは拒否してたんだけど、今回は人に手伝ってもらうのもいいかなって。いしわたりさんのことは尊敬してるし、本当に素晴らしい歌詞を書く方なので。まず自分が言いたいことや書いてみたものを全部渡して、何度かやりとりしながら完成したという感じですね。
──じゃあ、いしわたりさんがMiChiさんの思いを実際の歌詞にまとめていった?
そうですね。伝えたい思いは全部託してたから、それで作ってもらったり、彼なりの言い回しを入れてもらったりして、新しい風を吹かせてみたっていう感じです。
──でも自分の歌詞に他の方のエッセンスが入るっていうのはどうでしたか?
うん、今回は彼に書いてもらって、やっぱり自分で書きたいって気持ちが強くなったのも事実だけど、でも提供してもらうのも悪くないんじゃない?って。それで自分がちゃんと納得するんだったら、人の手を借りてもいいって思ってます。メッセージ自体は自分が言いたいことだし、そこさえズレていなければ。「LOVE is.」の歌詞も、もともとMiChiが書いてたところもピックアップして入れてくれてるから、他人の歌詞って感じではなく自分のものとして歌えてます。
与えると、喜びが何倍にも大きくなる
──今回のメッセージである“与える愛”について、もう少し詳しく聞かせてください。MiChiさんの中で、まず愛を与えていくことが大事だって気付いたのはいつ頃なんですか?
明確にココっていうのはわからないけど、たぶんずっとだよね。愛っていう言葉を使うと、ちょっと重くなるんだと思うけど。
──というのは?
“愛をあげる”って聞いてパッとイメージするのは、彼氏にすごく優しくしてあげようとかっていうことになると思うんです。
──身近なことでいうとね。
それも、もちろんひとつの形なんだけど、例えば私は人の誕生日がすごく好きで。1年に1回しかないし、それを絶対に忘れないで祝ってあげるってのを昔からずっとやってるんです。何かをやってあげて誰かを笑顔にしたいっていう気持ちは小さい頃から持ってましたね。
──そういうのって、10代をイギリスで過ごしたっていう環境も影響しているんですかね?
どうだろう……。でも日本人もそうだと思いますよ。みんなよく気を遣うし、お土産とかもそうじゃない? 持っていくほうもうれしいから買うし、美味しかったから食べてって気持ちをシェアすることとか。そういう気の遣い方は日本人はすごくあると思いますね。
──ではイギリスはどうですか?
イギリスは特にそういうのは上手だよね。
──私、3年前にイギリスに行ったことがあるんですが、男性がすごく優しくて。道で目が合ったら、みんなニコッて笑いかけてくるんですよ。
あ、そうだよね! キュンとした?
──しました(笑)。
そう、しちゃうのよ、あれ。MiChiも7年ぶりにイギリスに戻ったとき、なんかいいなあって。お店の出入りとか、ドアを開けてもらって当たり前だし、お先にどうぞとか。
──そうそう! でも日本は目が合ってニコって笑うと、変な人になっちゃうんですよね(笑)。
そうなの。でも、笑ってくれるとうれしいよね。私、日本でも目が合うと結構笑いますよ。ん!?って思われるけど(笑)。
──あははは。でも、いいと思います。自分が何かを与えて得られる喜びって、与えられるだけの喜びとはまた違いますもん。
そう! もう何倍にも大きくなる。そのほうがうれしかったりするし。
──みんながそう思える世の中だったらいいのに。大きな規模の話になるけど、そういうのがつながっていけば争いとかもなくなるのかなって。
そうだよね。MiChiは歌で、きっとそういうことをしたいんだと思う。まずは自分からっていう。でもたぶん、それは自分がハッピーじゃないとできないことだと思う。
──余裕がないと人に与えられないですもんね。
そう。だから、自分を愛せなかったら人を愛せないっていうのは本当にそうだと思うな。
MiChi(みち)
1985年、イギリス生まれ。イギリス人の父と日本人の母を持つ。2歳から10歳までを神戸で過ごし、1995年、阪神・淡路大震災の後、再びイギリスに移住。10歳から18歳までの最も多感な時期をイギリス・バーミンガム近郊で暮らし、シンガーを夢見る。 18歳で再来日。プロデューサー松澤友和と出会い、東京で本格的な音楽活動をスタート。2008年10月「PROMiSE」でメジャーデビュー。2009年2月にリリースした2ndシングル「ChaNge the WoRLd」はドラマ「キイナ ~不可能犯罪捜査官~」主題歌に抜擢。ユニクロの世界キャンペーンキャラクターとしてCMに出演するなど幅広い活躍を見せる。2009年9月に待望の1stフルアルバム「UP TO YOU」をリリース。2010年にはスキャットマン・ジョンのサンプリングで話題を集めた「All about the Girls ~いいじゃんか Party People~/Together again」、the telephonesとのコラボによる「WoNdeR WomaN」といったシングルを発表している。